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少子高齢化よりAIの進展が先

サイトビジット代表取締役  弁護士  鬼頭 政人 氏

――AIによる試験問題出題予測サービス「未来問」は司法試験予備試験の60%を的中させた。AIの未来像、そして、AIが普及した社会での人間の役割は…。
 鬼頭 今回の予備試験は平成23年にスタートした試験だったため、AIに過去問を読み込ませる量が限られており、6割の正解率という結果だった。しかし、別途行った宅建の試験では平成元年から29年分の過去問を読み込ませているため精度が高く、78%という正解率だった。もちろん、一言一句同じ問題が出る訳ではなくニュアンスの違いはあるので、それを基礎にして応用出来るような知識は必要だが、「未来問」をきちんと勉強していれば確実に点数は上がると思う。これは、教師や指導者など教える側が長い間やっていたことで、その傾向をAIが合理的に予測しているものだ。今後は、AIが一人一人の受験生に対して、個人の不得意分野と出題可能性を組み合わせたうえで、模擬試験の本番から逆算した「勉強の黄金ルート」を提示することさえ出来るようになるだろう。それは確実に合格へ向けた時短になる。このように、今、人間が教育分野で行っている事の殆どをAIが代替するようになると、学校の先生の役割も変わってくるだろう。AIが出来ないことは、モチベーションを上げることだ。AIが提示した合格への黄金ルートを実践させるために、例えば、松岡修造さんや、アニマル浜口さんのような、熱量をもってコーチング的役割を果たしてくれる人は、AIが発達しても絶対的に必要だと思う。5~10年後の指導者はそういった役割になっていくのではないか。

――人間が法を犯した時にAIが瞬時に懲役何年かを判断してくれるような世の中になれば、司法試験や弁護士自体が必要なくなるのではないか…。
 鬼頭 弁護士の業務が変わるという面は大きくあると思う。それは教師の話と全く同じだ。例えば、覚醒剤取締法違反の罪は初犯で懲役1年6カ月、執行猶予3年間が相場で、よほど情状に上下がない限り変わらない。裁判官は量刑データベースをチェックして量刑を導き出しているため、そういったケースで結論を出すだけならば、今でもAIで出来る。しかし、離婚裁判のようなケースでは、養育費や慰謝料をAIに判断されて納得出来るものだろうか。たとえ数字が同じだとしても、時間をかけて誰かに共感してもらいながら導き出された結論とAIに言い放たれた結論では、受ける側の納得感は違うと思う。その部分を今のAIで代替することは難しい。弁護士業務も、単に知識の差で売っていた時代ではなくなり、そういったカウンセラーやコンサルティング的役割が残っていくのではないか。

――実際にAIが仕事を代替してくれるような時代になれば、人間の仕事は少なくなっていき、人間の生活のスタイルも変わっていく…。
 鬼頭 人間の仕事をAIが代替するようになれば、物理的に人間の労働時間が短くなるため、人手不足も無くなるのではないか。実際に一定の単純労働は、すでにAIが代替出来る仕事だと思うし、そうであれば、今受け入れを拡大している外国人労働者の必要性が変わってくる可能性もあると思う。私には、少子高齢化の進展よりも先にAIの進展が来るという感覚がある。実際に人間を必要とする労働が減ってくれば、一人当たりの労働時間が減少していき、それに伴って価値観が変わっていくはずだ。少ない労働時間に起因して全体の所得が下がり物価も下がっていくのか、或いは、全体所得を下げないように政府が国民全員にお金を配るのか、少ない労働時間でも所得は維持されるのか、それは正確にはわからないが、いずれにしても、短時間労働でも人間がきちんとした生活ができるようにしていくしかない。価値観は時代とともに変わっていくものだ。江戸時代より前は一日2回だった食事が今では一日3回が当たり前になっているように、未来の人から見れば週40時間労働や残業100時間が信じられない事だったり、極端に言えば会社のオフィスや会議室があることだったり、場合によっては株式会社という存在さえ、「そんなものがあったの?」という感じになっていたりするのではないか。そして、労働時間が短くなった時に増えるのが余暇時間だ。その部分で楽しんでもらえるビジネスは今後ますます重要になってくると思う。特にライブやプロスポーツなど、臨場感や筋書きのないドラマは、AIには絶対に創り出すことが出来ないものだ。実際にAIが作った小説や音楽もあるが、私の心には響かない。AIは何が出てくるかを予測するものであり、その対極にある、何が出てくるかわからないわくわく感を生み出す産業が今後は増えてくると予想する。例えばお笑い芸人など、人を笑わせたり、感情を震わせたりするような商売は無くならないと思う。

――御社は今後、どのような分野で拡大していくつもりなのか…。
 鬼頭 私はもともと法律が好きなので、法律に関わる分野で会社を永続させたいと考えている。法律は社会的弱者のためにある。法律がなければ物理的に力を持つものが強い世界になってしまうが、それが法律によって是正されることで一定の秩序が保たれている。日本は比較的法治国家の側面が強いが、世界を見渡せばこのような国は少ない。一見、法治国家でも実は人治国家のような国も存在している。実質的な平等が担保されるような分野に寄与出来る会社にしていきたいと考えている。具体的に言えば、GoogleやFacebookは半分法律みたいなもので、Facebookが「仮想通貨の広告を載せません」と言ってしまえば、仮想通貨は排斥されていくだろうし、Googleがある会社を「検索結果から除外します」と言えば、その会社はホームページを作っても何の意味も持たないようになる。Amazonも同様で、今の時代、多くの人に使われるサービスは、ある意味、法律化していく側面がある。

――御社が提供していくサービスに、そのような側面を持つものは…。
 鬼頭 オンラインでサインするサービスは我々が最初に手掛けるこういった側面を持つサービスになるだろう。私は「紙」というものが今後、世の中から無くなっていくと考えているのだが、特に法律分野では、未だに契約書や発注書、受領書含めたくさんの書面が存在している。そういった書面をすべてオンライン化してクラウド上にためていくというサービスを提供していくのがファーストステップになるだろう。同時に、契約締結後の管理をブロックチェーンで記載して改ざん出来ないようにしたり、AIによる自動チェックを行ったり、法律プロセスの上流から下流までを全て押さえたサービスを展開していきたい。保険業界などでは少しずつタブレットでの書類へのサインも使われ始めているが、金融や不動産業界はいまだに膨大な紙を使っている。そういった契約の多い業界でオンラインサインが普及し始めると、世の中は一気に変わってくると思う。

――最後に、日本の行政や法律において改善すべき問題点は…。
 鬼頭 5月24日に成立したデジタルファースト法の動きを加速していってほしい。また、日本全体の事で言えば、新しいものを排斥することで世界に立ち遅れているという感がある。例えば、UberやAir bnbなど、グローバルに流行っているものを日本に取り入れようとすると、日本の既存勢力が政治家に働きかけて法律の壁でブロックしてしまうという事が起きているし、仮想通貨も一回流出騒動が起きた途端に業界全てが悪いというイメージになり、法の壁でがちがちに固めてしまった。ブロックチェーンの流れも海外では着実に進んでいるのに、日本ではブロックチェーンや仮想通貨のニュースは下火だ。しかし、ここで開放路線をとらなければ、失われた平成の30年を繰り返してしまう事になる。政治家のリーダーシップがもっとあれば、まだまだ変わってくるのではないかと思うが、例えばITなどは、若くなければわからない事が沢山ある。ブロックチェーンだって、本当に理解していなければイノベーションを起こすことはおろか支援もできない。すでに社会において成功している方々こそ、過去の成功事例を引きずらず、日本の全体最適を考えて自らを変えていく気概を持っていただきたい。(了)

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