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外交は友人関係ではなく国益

参議院議員  国民民主党  大野 元裕 氏

――米中覇権争いが深まりを見せる中で、日本の立場は…。
大野 米国は中国が発展を遂げれば次第に真っ当な民主主義になると期待していたのだろうが、データ産業の取り扱いやサイバー上の問題は後を絶たず、昨年に至っては習近平自身が国家主席としての任期をなくして永遠の王朝にしてしまった。中国人でさえ自国の政府に対しておかしいと感じていると聞く。そんな中で、トランプ大統領は一定の米国製品購入等、狭義の貿易摩擦だけでの決着には満足しないであろう。もはや米国は中国に対し、国家を上げて対峙していく必要があると考えていると思う。日本がプラザ合意で大幅譲歩した際と同様に、データ産業や貿易ルールといった部分でも中国を従わせなければならないと考えているのではないか。もちろん米国もそこで返り血を浴びることになり、米国に左右されている日本経済も影響を受けざるを得ない。日本の今の与党がどこであろうが、誰が総理大臣であろうが、政府の経済政策よりも何よりも米国経済の上げ下げがはるかに大きな影響を日本に及ぼしている。これは紛れもない事実だ。

――米国経済の低迷を念頭に、日本はその対応策を考えなくてはならない…。
大野 トランプ政権の特徴である「貿易保護主義政策」や「米国ファースト」は補助金を出して国内でお金を回すというやり方で、米国は昔の双子の赤字状態に向かっている。そして、その明らかな国内問題まで中国のせいにしている。これはもともと日本が中国に対しておかしいと考えていたこととは違うのだが、今の日本は中国と米国の間におかれた位置からもはや抜け出せない状況にある。だからといって日本が何かアイデアを出して新しいルールを作るかと言えば、欧州や他のアジアの国々からもその期待はなく、それよりも今のルールをどれだけ維持するかという役割を世界は望んでいると思う。いずれにしても中国と米国の双方のやり方がおかしいのに、その2つの国を一度に相手にすることなど出来ず、2国に対しては個別に撃破するしかない。例えば、グローバルな視点で見ても理解することが難しい中国に対しては、より大きな枠組みの中で日本が旗振り役となってデータの問題などを解決していく。米国がそれについてくるかは問題だが、トランプ大統領は選挙にとってどれだけプラスになるかが全てであるため、その部分を満足させて引っ張り出すしかない。具体的には「F35機を147機も買ってくれてありがとう」と言ってもらった時のように、次は小麦を買うといった具合に(笑)。

――日本企業は、今、米国か中国かの二者択一を迫られているとも聞くが…。
大野 例えば、米国が昨年11月にJCPOA(イラン核問題に関する正式合意)を脱退してイランに制裁を課すと宣言した時、中国はその後イランと石油取引をしていない。しかし、その前月の10月までの段階で4か月分ほどの原油を購入していたと言われている。私は、このようにタイミングを見ながら上手くやっていくことは非常に大事だと思う。米国が中国に対して本気で制裁をかけるのかどうかも定かではない。米国だけでなくフランスやイギリスなども、サウジアラビアへの制裁が議論された時、表では厳しいことを言いながら裏では取引をしていた。日本も頑なに真面目さを貫くより、タイミングを見ながら個別に対応していく方法を身につけたほうが良いのではないか。特にトランプ大統領の下ではその方が良いと思う。

――政治面では日本に対する韓国の行動も目に余る状況だ…。
大野 韓国は、今、国民感情が高まっているのだと思う。そして、国内に迎合するというのが韓国政治家のやり方だ。その感情を抑えることが出来ないのは、日本が韓国と合意に至った後のチェックを怠ったからだ。慰安婦財団に渡した10億円も、実際には慰安婦像の移動はなされず、また当事者への給付ではなく一部財団の運営費に使われていたが、自分が国会で指摘しても政府は韓国政府が誠実に合意することを信じているとだけ述べて働きかけをしなかった。こういったことを再び起こさないようにするために、合意して安心するのではなく、その後もきめ細かくプレッシャーを与え続けることが必要だ。もちろん、そういったこともすべて米朝首脳会談の進捗状況を見ながら行わなければならない。何事もタイミングを図ることは重要だ。

――安倍政権の外交について…。
大野 安倍政権になって首脳の外遊の回数も増え、一生懸命やっていらっしゃることは率直に評価したい。私が筆頭理事を務める外交防衛委員会や衆議院の外務委員会でも、外務大臣や総理の外遊について一度も止めたことはない。それほど外交は重要だと認識しているからだ。ただ、やり方は稚拙だ。例えばロシアのケースでは結局2島譲渡にしか見えないし、2016年11月にロシアが国後島と択捉島に配備した超音速地対艦ミサイル「バル」と「バスチオン」についても、日本政府は未だに一度も撤収を求めていない。ロシア側は日米協定に基づいて北方領土に米軍を駐留させることは駄目だというが、撤退を求めてハードルを上げておけばそれが交渉材料となるし、求めなければ日本はロシアの実効支配を認めるという誤ったメッセージを与えることになる。ロシアのような国に対する交渉の姿勢が間違っている。安倍総理御自身はプーチン大統領をとても良い友人だとお考えなのかもしれないが、外交における友好関係とはお互いに利用価値があると思うからこそ成立するものであり、自国の国益を譲り渡して国民に非難されてまで個人的友好関係を貫く元首など、どの国にもいない。外交はすべて国益だ。そして、国益であるがゆえに、仮に政権が変わったとしても、党によって外交方針をころころ変えるような国であってはいけない。

――中国、朝鮮、韓国など近隣諸国との関係を見据えて、日本はそろそろ自国で核兵器を持つべきという意見もあるが…。
大野 トランプ大統領が日本と韓国に対して核武装を認める考えを持っているという話も聞こえてくる。自国の事は自国で守れということなのだろう。ただ、世界で唯一米国だけが持ついわゆる前方照射能力は、日本や欧州やバーレーンなどの米軍を受け入れる国の協力があって初めて成り立つ戦略であることをトランプ大統領には理解してもらいたい。日本のつがる市車力町や京都府京丹後市にXバンドレーダーを置いているのも米国のためであり、これなしでは米国はICBMから自国を守れない。また、北朝鮮は、通常兵器だけで戦えばどの隣国と戦っても負けるほど弱い。だからこそ核とミサイルに力を入れているのだが、抑止の対象とならず、下手をするとテロリストのように自爆しても仕方ないと考えて抑止が効かない可能性があるのが怖い。核抑止というものは「こちらが撃てば相手も撃つ。そして打った瞬間にお互い全滅する」というお互いの共通理解のもとに生まれるのだが、自爆する人に抑止力は効かない。だから、脅したり賺したりしてうまく付き合っていくしかない。難しいのは中国の扱いだ。つい最近までの中国は核を撃つ能力を米国の力によって無力化させられるほど弱かったのだが、最近は米中戦争が起こったとしても一部残存する状況があり、こういった過渡期が一番危険で難しい。日本がすべきことは、中国の軍艦を日本列島から太平洋側に超えさせない事だ。中国の軍艦の性能は非常に高くなっているが、燃費は悪い。日本列島を挟む海峡をしっかりと抑えることが一番重要であり、それが出来なければ中国の残存能力はどんどん増えていくだろう。せめて中国の高齢化がピークを迎える2035年まで抑えこめられれば何とかなる。安倍政権も、AAV7のように役に立たない兵器を米国から大量に購入するよりも、中国の軍艦を日本海峡から出さず、南シナ海で起こったことを東シナ海で起こさせないことに最善を尽くすべきだ。最後に、我々日本人はこれまで世界秩序の擁護者だった米国が、自国の利益のために、日本との関係のみならず世界秩序さえも壊そうとする時代に入ったという認識を持っていなくてはならない。そして一つ確実に言えるのは、一国だけでは自国を守ることなど出来ないという事だ。そこは、きちんとトランプ大統領に話をしていく必要があると思う。(了)

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