金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

野党結集の方向性は見えず

一丸の会 代表  前衆議院議員  馬淵 澄夫 氏

――選挙で落選した45人を集めてつくった『一丸の会』について…。

馬淵 2017年の総選挙に希望の党公認で出馬し落選、その時、希望の党公認者にはそもそも党籍がないことを知り、無所属であることを自覚した。ならば、その立場から、一つの党がバラバラとなった現状を変えるべく動いてみよう、と思い立った。希望の党、民進党、立憲民主党、無所属の会の4党派のトップと面談を繰り返し、再び合流する方法はないのかと模索した。年明けの通常国会までに、民進党と希望の党とで統一会派を作れないかとの動きが出てきて、私も期待していたのだが、蓋を開けてみればその話も頓挫した。ならば自衛のために情報共有の場を作ろう、と落選した有志で『落選者の会』などと称して集まりだした。振り返れば、現職議員の皆さんではお互いに恩讐を超えることが出来なかったということだろう。そして、そのうち『落選者の会』の中にも「こんなにバラバラな中でどの政党にも入りたくはないし、だったら政治家を引退する」という人たちが現れ始めた。ある程度、各人の志を成就されているのであればそれも良いかもしれないが、まだ当選1、2回の人達が辞めると言い出したので、私はそれは日本の国にとっても良くないことだと思った。17年に当選したのは立憲民主党55名、希望の党50名、元々民進党に所属していた無所属19名の合計124名で、その規模は2005年の郵政解散で我々が議席を減らした時の113名とさほど変わらない。つまり、この規模のその後の動きが政権をとれるかどうかの分かれ道になる。そこで124名を増やすための伸びしろとして希望の党や無所属の落選メンバーを結束して2018年3月28日に『一丸の会』を発足させた。

――落選した人たちにとって、受け皿があり仲間がいるという事はかなり心強い…。

馬淵 落選して個人の活動だけになってしまうと情報が入らなくなる。その点、私の場合は全国に後援会があり、長年の議員活動の人間関係からも霞が関官僚達との繋がりもあり、各党現職議員、政務三役の方々との交流もあり、新しい情報が入ってくるので、それらを一丸の会の皆さんと共有することができる。また、2月になり、いよいよ辞める人たちが出始めてきた時に「辞めない条件はただ一つ、馬淵さんが先頭に立ってやってくれることだ」と言われ、私も浪人でどうしようもなかったのだが、それなりに考え、政党ではなく政治団体をつくることにした。脱落者を生まないため、次の総選挙に向けた当選圏内にいる人たちをきちんと守るための止まり木が『一丸の会』だ。4月に設立総会を開き、毎月の例会では講師を呼んで勉強してもらったり、懇親会を開いたりしている。私も色々な関係やビジネスなどで4年間政治活動をするに困らない環境をつくってはいるものの、45人の面倒を見るのはなかなか大変だ。連合の神津会長をはじめとする皆さん方にはご理解、ご支援を頂き、何とか形になりそうだという思いでこの活動を続けている。

――次の選挙でそのうち十数人が当選したとして、それが一つの党になる可能性は…。

馬淵 我々としては無所属を標榜してはいるものの、それを目的としている訳ではなく、政党が一つにまとまればそこに入る。私はそこの公認候補として出馬するだろうし、そこから皆が出るだろう。とはいえ、一丸の会のメンバーの中には国民民主党が立ち上がった時の総支部長になった人もいるように、地域事情や資金問題がそれぞれにある。どこの政党に属しようが一丸の会のメンバーであることは変わらない。また、まとまらない場合には新たに政党を作る事もあるかもしれないが、それは最終手段であって、あくまでも我々の目的は野党を一つにまとめることにある。もしそうなる場合にも、これまで協力してくれた人たちとの関係も考えながら慎重に判断していきたい。

――安倍政権の外交や財政について思う事は…。

馬淵 野党は安倍政権の戦略をよく分析して、どういうポジションに立つのかをもっと真剣に考えなくてはならない。安倍政権の方針は明確で、最重要事項が経済、2番が外交で、3番として憲法に注力している。1番と2番を交互に優先順位に掲げながら3番を絶妙なタイミングでちらりと見せる。そういったところは非常にうまい。実は安倍総理は消費増税をしたくないと思っていると私は見ているので、2014年の3党合意のもとにやらざるを得なくなった消費増税案を見直しさせることこそ野党がやるべきことであり、野党として最も正しい戦略だ。私がかねてから唱えている消費税引き下げ論はまさにこれで、下げるという事は極端に聞こえるかもしれないが、上げなくても財源の確保は出来る。また、外交に関しては、安倍外交は色々な部分で読み間違えている。2016年の米大統領選ではヒラリー・クリントンを応援に行ったが、そのヒラリーが落選。泡を食いながらまだ就任もしていないトランプ氏のもとへ行き、それを見て激怒した現職オバマ大統領に対しては、慌ててハワイ真珠湾の式典へ赴き謝りに行った。さらにロシアは親露のトランプ氏が大統領になったことで日本との関係はどうでもよくなったのか、山口で行われた日露首脳会談は本当にひどい内容だった。対北朝鮮問題についても置き去りだ。こういう安倍外交の読みの浅さ、場当たり的な外交を野党はもっともっと攻撃しなくてはならない。こういった経済と外交において野党が結集し、ひとつの方向性を打ち出すくらいの強い意志を持ってほしいと思っている。しかし、残念ながら今はそれが見えない。

――45名の中から政策提言はないのか…。

馬淵 私もそれをやろうかと何度か思案したが、政策の議論になるとそもそも政党としての議論になってしまう。理念が一致しなければ政策は作れないからだ。私には私なりの国家観や理念があるが、それを押し付けるわけにはいかない。そういう状況では政策提言はまだ時期尚早な気がしている。もちろん選挙になった時に慌てないように、一丸の会のメンバーとは違う若手官僚や学者などと一緒になって政策パッケージを作るための勉強会は立ち上げている。実は私の事務所「リージョナルデザイン」という名前は地域をデザインしていくという意味でつけているのだが、中央集権と地域主権或いは地方分権、これは対立する概念ではなく「集中と分散」、「統合と分化」という両立するものだと考えている。自民党は結党以来、中央集権的な国家像を掲げているが、時代の流れの中で社会の要請は集中に偏ったり分散に偏ったりする。そのスタビライザー的役割を果たすのが野党だ。かつて民主党が政権を得た時、私は政権交代したばかりで国土交通省に行き、一括交付金を作るための公共事業削減に取り組んだ。地域主権という立場で考えた政策が一括交付金という仕組みだったからだ。そして当時の荒療治によって一括交付金が出来て、47の道府県に財源と権限を与えることができた。これこそが地方の自立であり、地域の新しい街づくりの姿だ。リージョナルデザインを掲げるのは野党の立ち位置だと思っている。

――グローバル化してくると、大きな国に富が集中し色々な問題が出てくる。その反動が今の保護主義だ…。

馬淵 グローバリゼーションという言葉でごまかされているが実はアメリカナイズド、強欲資本主義であり、日本がアメリカの覇権主義に影響されているということだ。米国ではそれが行き詰まりを見せ、トランプ大統領になり世界の警察役を手放した。だから今世界の秩序が崩れだしている。覇権の放棄は不可逆で一旦手放したら二度とつかめない。こういう状況の中で日本が中央集権国家主義を続けるとどうなるか。すでに富の偏在が起きており、地方の疲弊はひどい。野党の存在意義はそこにある。それが私の理念であり国家戦略だ。日本の社会というのは国盗りではなく国譲りでよりよき国を作るために権力を自ら渡す。だから調和と協調が尊ばれる。イエスかノーかを曖昧にすることにより相手を追い込むことも傷つけることもせず、寛容の名の下の相互理解が生まれる国、それが日本だと思う。

――最後に、来年の政局について…。

馬淵 来年の衆参ダブル選挙はわずかながら可能性があると思っている。それは消費税増税の凍結だ。安倍さんも麻生さんも菅さんもリーマン並みの事態が起きれば消費税増税はしないと言っている。私としては来年年初から年央にかけて米国の株価は危険な状況になると考えていて、米国の金利が上昇してくると減税効果による今の米国景気が保つのか、また対中貿易の関税が強化される中で世界経済が保つのかを非常に疑問視している。NYダウも危機感が高まっており、ポジションを外しだしている大手投資家も多いと聞く。実際に来年、米国株が一段と下落してくれば、安倍総理はそこで間髪入れずに消費税増税を凍結するだろう。また、ロシア問題については二島先行返還の検討が始まり来年6月27日に大阪サミット前の会見が行われる予定だが、それまでに首脳同士で返還の合意まで至ることが出来れば、安倍総理はこれを追い風に解散へ持ち込み、衆参ダブル選挙に流れ込む可能性がある。もちろん公明党含めて歓迎しない声はあると思うが、衆参ダブルののちに3分の2の議席を確保して、かつての中曽根総理のように総裁任期の一年延長を勝ち取るつもりだと観ている。そして、21年に憲法改正をやるというのが安倍総理の頭の中にちらちらしているのではないかと勝手ながら想像している。(了)

(c)2018 株式会社金融ファクシミリ新聞社
▲TOP