金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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信用組合の自己改革にまい進

全国信用協同組合連合会  理事長  内藤 純一 氏 

――マイナス金利政策や経済のグローバル化など、金融機関は大変な時代だ…。

内藤 まさにその通りで、人口減少や少子高齢化などの流れと、アベノミクスやマイナス金利などが複合的に作用している。特に超低金利の環境下で利ざやがとれないというのが、信用組合からメガバンクに至るまで共通した最大の問題だ。また、最近では、経済のグローバル化の影響で増加するインバウンド外国人観光客数がこれからの日本経済や、ひいては日本社会までをも変える重要なファクターになると考えている。単純に観光客が多く来るから観光産業やホテルなどが立地開発されるということだけではなく、例えば海外に基盤を置いているホテル業を含むビジネスの開始やそれにかかわる人たちが日本に定住するといったような、そういう意味での投資がますます本格化していく。最近では一般の人が休暇で海外に行くことが日常化しており、外国人が日本に来るのも違和感がない。問題なのは、外国人とのコミュニケーションやインフラの整備が不十分であることだ。ただ、これは2020年の東京オリンピックを挟んで、グローバル化の深度が一層大きくなることと相まって飛躍的に進化していくに違いない。

一方、金融面に目を転じると、いろいろな相手にお金を貸し出すのが、信用組合のみならず銀行にとっての一番重要な本業であると考えているが、今は肝心のその融資先が減り続けている。東京の人口は増えているものの、跡継ぎがいないなどを理由に、東京でさえ事業者数が減ってきている。70歳以上の社長の半分は跡継ぎが決まっていないとも言われ、このままでは5年、10年を経てそういった会社がどんどん消えていく。M&Aも1つの解決策ではあるが、買収するのが一般の企業であったり投資ファンドであったりといろいろなケースがあり、最終的に地元の金融機関や信用組合の取引先としては残らない可能性も高い。銀行と違って信用組合は営業区域に制限を受け、一定地域でしか営業できないため、企業が減って地域が壊れてしまうと信用組合もなくなってしまう。いわば運命共同体のようなものだ。信用組合として、起業とか事業承継とかそういったものをどう支援していくか、知恵を絞り抜いて考えなければいけない時が来ている。

――新たなビジネスモデルが見つかるまでは、資金運用の効率化とコスト削減の2つが重要になると思うが、いかがか…。

内藤 運用に関しては、各信組には証券会社のセールストークを鵜呑みにするのではなく、我々系統中央金融機関からセカンドオピニオンのような意見も聞いていただくようお話ししている。リスクに見合ったリターンがあるのかとか、いざ換金しようとすると流動性が非常に低いのではないかとか、価格の透明性はどうかなど、そういう注意すべきポイントや、あるいはそこまでリスクをとるならこういう商品もあるのではないかなどのアドバイスを伝えるようにしており、こうした我々の活動はここ数年で非常に定着してきたと思っている。以前は各信組にとって相談できる相手もおらず、かといって、正直、金融機関である以上あまり初歩的なことも聞きづらく、理解したふりで買ってしまう、といったようなこともないではなかった。結果的に、この取り組みはやってよかったと思うし、今後も続けていきたい。また、我々は系統預け金という形で、各信組から預金を受け入れ、それを運用している。各信組からは、こうした既存のスキームだけでなく、たとえば一元的な運用ファンドのようなものを組成してよりリスクの高いものに投資してしっかりリターンを稼いでほしいという要望もなくはないが、これに応えることは実は非常に難しいと考えている。流動性やリターンに対する見方や信組自身が持つリスクバッファー(資本余力)などが信組間で大きく異なるからだ。結局、各信組は本業である融資をしっかりやるというその使命から逃げるわけにはいかないのだ。日銀のマイナス金利政策により有価証券利回りは大きく下がっており、同時に、過去発行された高いクーポンを持つ債券は次々と償還を迎える。このため、有価証券からの金利収入は劇的に落ちていく。一方、融資であれば、信用リスクをある程度取る分だけ収益の減り方は緩和される。

信用組合は、大手の銀行や地銀に比べると預金金利が少し高い。その少し高い金利で預金を集め、少しリスクの高い先に利ざやを厚めにとって貸すというのがそのビジネスモデルであるため、一般に、その預金金利には幾分ながら下げる余地がある。融資については、1990年代後半の金融危機以後、金融機関は安全一辺倒に融資を行うことが常態化したため、信用保証を付けて貸し出すのが習わしになってしまった。ただし、このやり方だと、貸す側が受け取る金利は安い反面、保証料がある分、借りる側の実質金利はそれほど低くない。金融危機以後、特別保証や100%保証が一般化し、融資実行には信用保証協会の保証が必須条件のごとく求めるようになってしまったが、これでは金融機関が儲かるわけがない。これを少しずつ減らし、信用保証協会などを挟まないプロパー融資に切り替えていく。貸すときは自らリスクをとって貸すという、金融機関として当たり前のことがどれだけできるかどうか、そのためには審査能力と融資実行後のリスク管理能力が決め手となることは間違いない。

――いわゆる「目利き」が重要だ…。

内藤 簡単なことを徹底していくべきだという話をしている。大口は避け、とにかく小口分散。しかし労力を要するのは金額ではなく件数であるため、小口分散を徹底することは簡単でない。

年に数回は社長と会い、顔色を見、店舗・工場を見て、原材料や製品などが積み上がっていないかどうか確認する。在庫が積み上がっていれば、売れ行きが悪い可能性が高い。そこにピンと気づかなければいけない。そういうところは財務諸表では見えない部分だ。それが入り口の債権管理だ。信組によっては、金利がきちんと入ってくるからと安心して正常先に位置づけていたところ、この正常先の金利支払いが急に滞り、そして、突然、実質破たんに陥るというケースがまま起きることがある。背景を検証していくと、この借り手は正常先であるという先入観にとらわれてしまい、この1,2年、現場確認を怠ったという実態が浮かび上がってくる。時間さえあれば現場に赴き、現場を確認するというのが金融機関の鉄則であるはずだ。そうしていれば、業況の悪化にもそれに応じた対応策を適時に見出すことができるはずだ。このように、現場をおろそかにしているのではないかという反省が、ここ最近、我々のなかでも生まれてきている。

――コスト削減についてはどうか…。

内藤 信用組合が活動する営業地域において、都市再開発や大型ショッピングセンターの出店、少子高齢化や産業構造の変化などで、かつて賑やかだった駅前がぐっとさびれ、別の地域へと人がシフトするというようなことがしばしば起こる。そういう変化に応じて店舗の配置を変えていくようなことは避けられない。

信組業界でも往々にして誤解があるのは、信用組合の役職員の報酬が大手銀行などと比べて低く、店舗も小規模であるため、それらのコストが低く抑えられているといったことから、経費面で安上がりにできているという点である。現実はその逆で、信組は相対的に規模がかなり小さいがために規模の利益が図れず、この面での遅れは無視しえないということである。だからそのなかで、経費の節減をどう図っていくかというのは信組にとって大きな課題だ。とはいえ、合理化という目標のために単純に人を減らすだけでは、店周をめぐって顧客と直接コミュニケーションをとる信組の持ち味がなくなってしまう。その営業力を残しつつ、あるいはむしろ強化させつつどう効率化するか、これこそが信組業界あげての重要な命題になっている。

こうした問題認識を踏まえつつ、目下、「川下共通会社」の構想について研究している。銀行は川上の持株会社を作り、その持株会社に本部機能を集約する形の合理化が法制的に可能になっているが、信用組合ではそれができない。そこで、複数の信用組合の共同のもとに、役職員の給与・年金計算や人事手続き、調査分析、情報収集、当局への報告資料作成などかなり親和性のある本部機能を川下共通子会社に実質移管するやり方を模索中だ。その際、各信組の役職員も共通化、兼務化し、そのうちの一人が川下共通会社の社長を兼ねるといったことなどができれば、人件費コストもかなり削減できる。そうして浮いた資金を営業チーム拡充に振り向けることができれば、営業面の強化にもつながるだろう。

――フィンテックへの対応などはどうか…。

内藤 当会には「信組情報サービス」というITシステム運営の子会社があり、ほぼすべての信用組合は同社が運営開発するネットワークでつながり、さらにそれが全銀ネットにつながるという構造を持っている(これらを総括して「信組共同センター」と呼んでいる)。一方、当会自身は「くみれんネット」という別のシステムによって運営される。信用組合業界のITシステムの議論をする場合、業界の仕組みをどう運営開発するかという話と、当会自身のシステムをどう運営するかという話、つまり論点が2つあるというのが他の金融機関との大きな違いだ。特に信用組合の仕組みのほうでは、マネーロンダリング(資金洗浄)やサイバーセキュリティーなどの課題があり、利便性が高いと言われるフィンテックをどう組み込むかというところで苦労している。最近では、フィンテックについて前向きに対応してほしいという要望と、ほどほどで抑えてほしいという要望(つまり、コストがかさばることは避けてほしいという要望)の双方が出されている。こうしたなか、システムを導入することでかさばる一方のバックオフィス事務を身軽にし、その余力を営業部隊に投入して信組本来のコミュニケーション力を強化していくという戦略については大方の理解が得られるかもしれない。

システムのあり方なり、それへのニーズといったものはそれぞれの金融機関のビジネスモデルによって決まるが、我々の持ち味はダイレクトなコミュニケーションであり、その営業理念を否定するようなシステムを入れる必要はまったくない。しかし、信用組合業界には規模の格差が大きいという問題や、地域、業域、職域などビジネスモデルの違いなどの問題がある。例えば、100億円、200億円という資金規模の信組と、1兆円規模の信組とではシステムに対する要求内容がかなり違う。今まで、ATMの機能更新などでは同一に進めてきたが、この先、ネットバンキングやオープンAPIなどということになると、必要なところとそうでないところに差が出てくるだろう。それを一律に行ってしまうと、必要としないところの負担が大きくなってしまうため、それを柔軟性のある仕組みにどう再構築していくか、これこそが今後の大きな課題になっている。

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