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地方再生にふるさと融資活用を

地域総合整備財団(ふるさと財団)  理事長  稲野 和利 氏

――地域総合整備財団(ふるさと財団)とは…。

稲野 ふるさと財団は、民間能力を活用した地域の活性化支援を目的として、1988年に自治大臣と大蔵大臣の認可を受けて設置された。ふるさと財団には全ての都道府県と政令指定都市から出捐していただいているほか、市町村も全国市町村振興協会を通じて出捐していただいている。現在の事業としては、地域振興に資する民間事業を支援する「ふるさと融資」のほか、新技術や地域資源を活用した新商品・新製品の開発を支援する「ふるさとものづくり支援事業」、地域振興につながる地域再生の取組を支援する「地域再生マネージャー事業」、民間能力を活用したまちなか再生の取組を支援する「まちなか再生支援事業」等に取り組んでいる。事業の規模としては、ふるさと融資が最も大きい。

――ふるさと融資の概要は…。

稲野 ふるさと融資は民間企業等に対して都道府県または市町村が長期の無利子資金を融資する制度で、ふるさと財団は融資案件の調査、審査、実行、アフターフォローを全ての融資元の地方自治体から委託されている。過去30年間の融資実績は約9748億円で、ふるさと融資を活用した設備投資の総額は約7兆7245億円に達する。ふるさと融資を受けるためには営業開始に伴い事業地域内に新たな雇用が生まれることが条件の一つとなっており、累計では約17万人の雇用増に貢献している。現時点でのふるさと融資の残高は約1200億円で、昨年度の新規融資実行額は36件、合計104億9900万円であった。多い時には年間で約700~800億円の新規融資が行われていたが、最近の融資実行額は100~200億円台となっている。

――ふるさと融資の主な対象事業は…。

稲野 対象事業についても、時代の流れを反映して変化が見られている。平成の初めのころはリゾート関連の案件が多かった一方、最近では工場のほか、病院や介護・福祉の関係が増加してきた。リゾート関連の案件では融資が焦げ付く場合もあったが、最近ではせいぜい年間1~2件程度とかなり減少してきている。また、ふるさと融資は地域金融機関等と同時に融資をして、金融機関が保証を付けることが条件となっているため、融資が焦げ付いた場合でも関係地方自治体が損失を被ることはない。

――ふるさと融資を活用するメリットは…。

稲野 ふるさと融資には無利子という特徴があるが、歴史的な超低金利環境下で銀行の貸付利率も低下してきており、この魅力は相対的にやや低下してきている面はある。ただ、我々は融資の調査などを担う事務局機能にとどまらず、地域再生マネージャー事業やまちなか再生支援事業も行っており、コンサルテーション的な機能も持っている。ふるさと財団の役職員数は36名で、このなかには事業会社や地方自治体、金融機関からの出向者も多く、専門的な知見も有している。加えて、融資期間が5年超15年以内(うち据え置き期間5年以内)と、民間金融機関との比較ではかなり長い。

――ふるさと融資を活用した特徴的な事業は…。

稲野 近年にふるさと融資を受けた民間事業者のうち、特に地域振興や地方活性化に貢献している者を表彰する「ふるさと企業大賞(総務大臣賞)」を2002年度から導入しており、この表彰を受けた企業には特徴のあるものが多い。昨年度は西山製作所(秋田県)、金剛化学(富山県)、日進乳業(長野県)、香月堂(愛知県)、淡路島福祉会(兵庫県)、上田コールド(鳥取県)、三和製紙(高知県)、五洋食品産業(福岡県)、御菓子御殿(沖縄県)の9社を表彰した。表彰件数は毎年10社程度といったところで、地域的にも分散している。ふるさと企業大賞の表彰にとどまらず、地に足をつけて活動している中小企業に対して我々が何か貢献できることがあれば喜ばしいことだ。中堅・中小企業や、さらにその中の内需型産業でも日本を出て世界に飛躍していく可能性を秘めている。ふるさと企業大賞の受賞をきっかけとして、各地域にとどまらずさらに発展していくことを期待したい。

――ふるさと融資以外の事業の規模は…。

稲野 ふるさとものづくり支援事業や地域再生マネージャー事業、まちなか再生支援事業はふるさと融資とは異なり、ふるさと財団が各市区町村に対して資金助成を行っている。ふるさと財団の予算規模は年間6億円弱で、これらの事業の規模は合計4億円程度といったところだ。

――ふるさと財団の基金の規模については…。

稲野 基金の規模は約107億円と決して小さくない。基金の運用益で運営資金を一定程度確保することを目指しているが、歴史的な超低金利環境が続いているため、足元では十分な運用益を確保することがなかなか難しい状況だ。このほか、全国市町村振興協会を通じて市町村宝くじの売上げによる助成を受けている。基金の運用はこれまで日本国債や地方債が中心だったが、これまで市場で培った経験を活かしつつ、運用効率の改善にも努めていきたいと考えている。

――ふるさと財団としての課題は何か…。

稲野 ふるさと財団は総務省と密接な関係にあり、地方自治体に対しての知名度は一定程度ある。とはいえ、過去、積極的にコマーシャルを打っていたわけではないため、ふるさと融資を含めて制度をご存じでない方々がまだ相応にいることは事実だ。そこで、ふるさと財団の認知度向上を目的として、全国各地で地方自治体向けの説明会を開催している。理事長の私自身としても、実際にふるさと融資が実行された案件や、ふるさとものづくり支援事業、地域再生マネージャー事業の現場を実際に見ていく必要があると考えている。

――最後に、今後の抱負を…。

稲野 安倍政権が地方創生を政策課題に掲げていることもあり、一時期と比べると地方再生関連のメニューは相当充実してきているが、ふるさと財団としては他の団体にはできないことに取り組んでいく必要があると考えている。具体的には地域に密着しながら人を派遣し、コンサルティング機能を発揮していくということで総合的に底上げを果たしていく所存だ。私自身は理事長に就任してから現地を視察した回数はさほど多くないが、やはり実際の現場に赴くと改めて地方再生に取り組む必要性を感じる。現実として2040年に向けて日本中のほとんどの地域で人口減少が想定されるなかで、各地域で頑張る民間事業者には少しでも人口減少を食い止めて地域として自分たちの暮らす場所・働く場所を盛り上げ発展させていきたいという強い気持ちがある。我々としてもさらに力をつけて、頑張る民間事業者をより一層応援できるようにならなければならない。

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