金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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金など投資家需要に積極対応

東京金融取引所  代表取締役社長  太田 省三 氏

――国内では歴史的な超低金利環境が続いている…。

太田 日銀のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)政策によって短期金利の膠着化が中期ゾーンにまで及んでおり、ユーロ円3カ月金利先物の取引数量は極めて低い水準が継続している。日本の超緩和政策は、米国や欧州の金融緩和縮小の進展に関わらず、当面は現状維持が見込まれているが、米国と欧州での金利上昇が進んだ場合や、もし国内の物価上昇率が1%台半ば程度に達した場合、本年末ぐらいにあるいは日本の長期金利にも動意が出て来る可能性がある。今後の金利変動を注視していくとともに、中期ゾーンの取引活性化に向けた新たなストラテジー取引を導入して国内外の金利スワップの取引需要を取り込みたいと考えている。

――ユーロ3カ月金利先物に代わる取引の主軸は…。

太田 当取引所には、ユーロ円3カ月金利先物、為替証拠金取引、株価指数証拠金取引の3つの市場があるが、金利の取引数量の落ち込みを為替証拠金取引と株価指数証拠金取引で補っている。もっとも、昨年の為替証拠金取引は必ずしも順調ではなく、ドル円の年間変動幅が約10円と一昨年の半分程度に留まったことやFX投資家の各種経済指標に対する感応度の減退等により、取引数量は一昨年との比較で7割程度であった。こうした中、投資家に人気の高い南アフリカ・ランド円、トルコリラ円の高金利通貨ペアは堅調に推移し、昨年10月に新たに上場したメキシコペソ円も他の新興国と比較した信用力の高さを背景に取引は伸びてきている。

――株価指数証拠金の取引状況については…。

太田 私どもが上場している日経平均株価などの株価指数取引は、配当があるなど先物取引とは異なる商品性を持った証拠金取引(CFD)だが、昨年は好調な株式市況を背景に投資家の取引意欲が高まり、取引数量は大幅に増加した。特に、一昨年、新たに上場したNYダウ証拠金取引も現在、2万6000台を突破して好調に推移しており、こちらも伸長した。株価指数証拠金取引を始めてから約7年が経つが、現在は為替以上に注目を浴びるようになっている。ただ、株価指数証拠金取引の1日当たりの取引高は約3万枚程度であり、為替の取引高と比べてまだ少なく、これからもっと拡大して行くと期待している。

――為替について、店頭FX業者と比較した特徴については…。

太田 私どもの取引所取引は、売り方と買い方を付け合わせる場を提供しているが、店頭FX業者は自らが相手方となる取引であり、本質的にビジネスモデルが異なる。取引所取引は複数のマーケットメイカーが提示する価格の中から最良な価格を自動的に抽出して投資家に提供しているが、店頭FX業者は自分でポジションを取るため、裁量により価格やスワップポイントを提示している。「くりっく365」の取引所取引は、証拠金だけでなく清算預託金や違約損失積立金などのセーフティネットも完備しており、透明で信頼性の高い商品性と制度を有しており、投資家は安心して取引を行うことができる。

――金融庁は店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者会議を立ち上げた…。

太田 日本の店頭FXの年間取引規模は約5000兆円まで拡大しており、金融の世界で飛び抜けて大きい市場になっている。仮にスイスフランショックのような相場の急変で店頭FX業者が破たんするような事態になれば、日本発の金融システミックリスクにつながる可能性があるため、金融庁は、所要のセーフティネットを整備する必要性を考えているようだ。取引所取引にはついては、リーマン・ショック以降、国際規制のFMI原則(金融市場インフラのための原則)という厳格なルールの適用が要請され、既に清算参加者の清算預託金を大幅に引き上げるとともに、取引所の違約損失積立金も増額している。それでも資金が足りない場合には、清算参加者全社で損失をカバーするロスシェアルールもあり、システミックリスクに陥らないような十分な備えを構築済みである。

――今後の新たな取り組みについては…。

太田 本年中には、金と原油の値動きに連動するETFを原資産とする証拠金取引(CFD)の上場を計画している。金は最近、価格変動幅が大きくなっているほか、地政学リスクが発生した場合は、株価指数と異なる動きをするため、投資家にとって新しい種類の商品になると思う。新商品に対しては、取引参加者からもポジティブな反応が示されている。為替取引についても、利便性の高い新たな商品の開発を検討しており、多様化する投資家ニーズに応えて市場の活性化に努めていきたい。また、現在、2019年第1四半期の稼働に向けた次世代システムの開発を進めているが、次世代システムでは、金利先物等取引と証拠金取引のシステム基盤を統合することにより、5年間で約20億円程度のコスト削減効果を図ることとしている。

――般論として、取引所の統合については…。

太田 上場している商品がそれぞれ違う取引所について、統合したからといって取引数量が増加する等の効果は見込めないし、システムについてもそれぞれの取引仕様に応じた違いがあり、コスト面の統合メリットも乏しい。東南アジアなどの経済規模が小さい国では取引を1つの取引所に集約しているが、米国等では、様々な種類の取引所が互いに切磋琢磨しながら競争し、投資家の利便性向上に取り組んでいる。取引所の統合による寡占状態は、競争原理の観点からも問題なしとはしないと思う。

――今年の抱負は…。

太田 市場関係者の間では、今年は、株価もさらに上昇する好調な経済が予想されているが、市場は生き物であり、何が起こるかはわからないと思う。金融デリバティブの総合取引所としての当取引所は、IoTやビッグデータ、さらにAIをめぐる急速な社会変革(第4次産業革命)や金融市場におけるFinTechの大きな動きを適確迅速に対応し、多様な投資家ニーズに応える新商品の開発に積極的にチャレンジしていきたい。

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