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投資や消費を減税し経済を刺激

希望の党  代表  玉木 雄一郎 氏

――民進党との統一会派結成については…。

玉木 元々は民進党から統一会派の提案を頂いたことをきっかけに、党内の調整や民進党との交渉を進めてきた。ただ、民進党側が意見をまとめきれずに今国会での統一会派の結成を断念すると伝えてきたので、提案を受けた我々としても交渉を一旦打ち切ることにした。今回の交渉では我が党の分党も取り沙汰されたが、もともと希望の党に所属する参議院の3人の先生は日本維新の会との連携を希望していた。衆議院と参議院で組む相手が異なることはおかしいため、仮に衆議院で民進党と統一会派を組んだ場合には円満に分かれようということは事前に決めていた。

――国民からすると、野党は集合離散を繰り返してばかりに見えるが…。

玉木 昨年の衆議院議員選挙で民進党が分裂した影響は未だに尾を引いているが、いつまでも野党が分かれてどたばたしていても国民には何の得にもならない。そこで、会派という国会内での戦い方において協力すべき所は協力し、巨大与党との共同戦線を張るべき、ということで民進党との統一会派結成も検討した。国民にとって政権の選択肢が一つしかないということは民主主義において問題なので、緊張感を持ちながら与党と政策を切磋琢磨できる環境をぜひ作っていきたい。そのうえにおいて、現在の国会での議席数を勘案すると野党がある程度のまとまりを持つことが重要になる。今回は統一会派結成には至らなかったが、個別の法案への対応など協力できる部分については出来るだけ大きな固まりとして共同戦線を構築していきたい。

――希望の党の目指す政策とは…。

玉木 まず、安全保障については現実的な政策を取っていく。いわゆる左派といわれる政党にありがちな「何でも反対」という立場は取らないが、かといって現在の自民党のように露骨な対米追従主義も取らないのが我々の現実的平和主義だ。沖縄問題にしても、憲法9条を改正する前にまずは日米地位協定を見直すべきだ。我が国は独立国であるにもかかわらず、在日米軍による事件や事故が起こったときに当局が捜査も調査も出来ず、ただただ再発防止をお願いするような関係をいつまでも維持してよいのか。あるいは、米国に武器を購入せよと迫られれば言い値の前払いで買うようなことも脱却しなければならない。米軍と一緒に中東やアフリカ諸国にまで出掛けて武力行使をすることも反対で、北東アジアの安全保障環境が極めて緊迫しているからこそ限られた定員・予算・装備は我が国の自国防衛に特化すべきだ。

――国内政策についてはどうか…。

玉木 自民党は自己責任を重視した社会を作ろうとしている。私も自らの努力で所得を稼いで家族を養っていくという精神そのものは否定しない。ただ、社会の現実を見ると、共稼ぎのカップルが増えているにも関わらずこの20年間で家計全体の所得は2割以上低下している。今や年収300万円以下の世帯が全体の3分の1程度を占めているほか、生活保護受給世帯数は過去最高で、しかもその半分以上は65歳以上の高齢者だ。それにも関わらず、全て自己責任でやってくださいということだけでこの社会は本当に回っていくだろうか。私たちは弱肉強食ではない持続可能な福祉国家を目指しており、例えばAI化の進展による仕事の減少などを見据えたベーシックインカムの導入検討など、国内政策ではリベラルという立場を取ることでメリハリを効かせていく。

――経済成長に向けた施策については…。

玉木 経済成長の要素は労働投入と資本蓄積、イノベーションの3点であり、日本の生産年齢人口がこれだけ減っているなかで、外国人労働のことを考えずして成長戦略を組むことは不可能だ。この外国人労働の問題を取り上げようとすると、右派からは「犯罪が増える」あるいは「日本の文化が壊される」、左派からは「労働者の賃金が下がる」などと双方から批判が浴びせられるが、日本の現状を客観的に見ると、問題を先送りせずに真正面から取り組むべきだ。私は管理された外国人労働活用政策がないことが、現在の欧州で見られているような移民問題を引き起こしていると思う。日本では外国人技能実習制度など使ってごまかしながら外国人労働問題の解決を引き延ばしているが、このままでは将来に禍根の種を残すことになる。親日国かつ業種を限定するなどして、管理された外国人労働という形態に移行しなければ日本の経済成長を維持することはできない。

――中国との関係については…。

玉木 好むと好まざるに関わらず、中国は世界の政治経済の中心を担う存在となってくる。中国が様々な野心をもっていることも事実だろうが、中国とどううまく付き合っていくのかは今後の日本の外交・経済にとって非常に重要であり、特に日本経済へのインパクトは米国と比べても大きくなっている。安全保障では米国と手を組みつつも、経済では中国と戦略的な関係を深めていくべきだ。私が気になっているのは、中国が間もなくガソリン車の製造・販売を中止する可能性があることだ。巨大な中国市場がガソリン車から電気自動車に全面移行するとなると、日本がこれまで作り上げてきたガソリン車を中心とした産業構造、工場、雇用が不要となるなど甚大な影響を受けることになる。こうした観点からも、やはり中国との協力関係は戦略的に深めざるを得ない。また、私が中国の重慶を訪れた時に驚いたのは、経済発展の波が内陸部にも及び、決済が全て非現金化されていたことだ。これと比べて日本はまだまだ現金中心の社会で、それゆえにタンス預金が多く世の中にお金が出回らない。日本は電子決済やデジタル分野でも中国に遅れているので、こうした政策についても先頭に立って推し進める政党になっていきたい。

――アベノミクスに対抗できるような経済政策はあるか…。

玉木 とにかく金と人を動かすことに尽きる。日本には企業と家計の合計で約3000兆円の金融資産があるが、そのうち約4割は現預金となっている。日本は先行して豊かになったのでストックは豊富にあるが、逆にフローが細ってきている。いくら日銀が金融緩和をしても積み上がったお金は世間になかなかに出回らず、これをどう動かすかが次の課題となっている。そこで、現在の税制を大きく改め、資産を死蔵させることにはペナルティを課す一方、それを投資や消費に用いることには減税による刺激策を与えて成長分野に資金が回るようにしていきたい。じっとしていたら資産は目減りするが、それを動かしたら得をするというメッセージを伝えることで経済のダイナミズムを生み出していく。同時に、税制を徹底的にシンプルにすることも重要だ。しがらみのない改革政党として与党になることを目指すならば、このくらい大胆な政策を打ち出していく必要がある。また、日本の人口が減ってきているなかで、国境を越えた人の動きを加速させていくべきだし、ただでさえ少なくなっている働き手にやる気を持って働いてもらうことも重要となる。今後はさらに高齢者が増えるが、ITなどを活用すれば70歳代になっても働くことは十分に可能だ。年金の支給額が減少しても自分が働くことができれば安心して生活ができるし、体を動かすため健康にもなる。高齢者を対象としたベーシックインカムの導入検討を含め、人に着目して経済を動かしていく。

――今後に向けた抱負については…。

玉木 様々な経緯はあったが、希望の党はいい仲間が集まることが出来た。所属議員の平均年齢は49歳とまさに働き盛りの若い政党なので、今後は東京オリンピック・パラリンピック後に起こることが想定される問題を先取りした政策を打ち出していきたい。希望の党の議員は子育てや子どもの進学、親の介護などを一手に引き受ける世代が中心であり、だからこそ社会に今ある問題を身にしみて理解している。現在の安倍政権がいつまでも続くわけではない。希望の党は2020年代にしっかりこの国を担える政権準備政党として頑張っていく。

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