金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ当の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

外交、経済とも強い日本に

参議院議員  松川 るい 氏

――ここ数十年で、日本の外交を取り巻く環境は大きく変わっている…。

松川 英国のEU離脱に象徴されるように、既存の秩序やルールを守るという国際的なコンセンサスが崩れてきている。多くの人が予想していなかった英国のEU離脱が起き、一体的だと思われていたEUが弱体化した。一方で、米国やロシア、中国などによる、力による政治が潮流となってきた。この中でも、最も大きな変化を遂げたのは中国だ。中国は経済力を増しているだけではなく、南シナ海の南沙諸島での埋め立て工事や尖閣諸島での示威行動など、小さな行動を積み重ねて有利な立場を得るサラミ戦術で圧力を増している。また、ユーラシア大陸を連結し、周りの海にも出る経済圏構想である「一帯一路」を打ち出した。地理的に見ると、中国にとって日本は太平洋の出口を塞ぐ形で位置することになる。一帯一路構想では、北極海航路も含めて広く中国の権益拡大を目指すなか、領有権自体での争いがなくても、日本が守らなくてはならない場所として対馬にかかる圧力は尖閣諸島と同じくらい増すことになる。

――中国の勢力が増し、米国も圧倒的な超大国ではなくなっている…。

松川 中国共産党大会で行われた中央委員会報告のポイントは、中国建国100年となる2049年までに米国を抜き、世界の覇権国家を目指すという方針だ。中国はここ5年で目覚ましい成長を遂げているうえ、経済や科学技術の実力を大幅に向上させ、イノベーションを起こすということを明確にしている。経済成長だけでなく、文化や価値の面にも言及した。このように中国が台頭していく状況の下で、米国では既存体制側のヒラリー氏よりも、この状況を打破する可能性があるトランプ氏が大統領に当選したのは結果に過ぎない。国民が既存体制ではだめだと判断した結果だ。米国の変化で最も注目すべきは、トランプ大統領が17年末に発表した「国家安全保障戦略」だ。中国をロシアとともに米国の競争相手と位置づけ、経済や軍事、文化や価値の面で対抗し続けるとの方針を明確にした。

――米中が変化するなか、日本が取るべき外交戦略は…。

松川 米国と中国は覇権の面では競争関係にあるものの、かつての米ソ関係と異なり、最大の貿易国同士と経済面で密接に関係している。米中間ですぐに軍事衝突が起きるとは考えられないものの、海洋権益をめぐる争いなどは十分に考えられる。中国は経済的な権益の拡大を目指し、インド洋から太平洋にかけての自由な航行を望んでいる。この中国にとって、海上戦略で重要となるポイントは日本の周辺だ。だからこそ、対馬にせよ沖縄沖にせよ、日本は守りを固めなくてはならない場所は広がっている。日米同盟は安倍首相の外交により強固だが、日本が自国での防衛をしないにもかかわらず、米国第一のトランプ大統領が日本に代わって防衛を担うほど甘くはない。この状況下で、GDP1%未満に抑えられている日本の防衛費はやはり少なすぎる。日本にとって防衛が必要な場所の拡大に加え、北朝鮮や中国がサイバーセキュリティを含めた技術を高めている。防衛費をいたずらに拡大すべきとは考えていないが、抑止力を高める努力なしに安全保障を行うことはできない。同時に、地理的に隣国となる中国との関係では、持続可能な均衡点を探ることが大切だ。中国の軍事力と経済力は今後も高まると考えられるが、中国をただ敵視すればいいということではない。中国に対しては、日本の権益を侵せばコストが高くつき、協力した方が得だと思うような関係を作る必要がある。反日運動をコストフリーにしている状況から脱する覚悟が必要であり、中韓ともに何かされたらきちんと反撃できる体制をつくらなければならない。ただお願いするだけでは外交問題は解決しないことを日本外交は理解すべきだ。

――朝鮮半島をめぐる情勢は…。

松川 朝鮮半島では、平昌冬季五輪など様々な要素が重なり、南北首脳会談の開催案まで出ている。韓国の文在寅大統領は、核問題解決は南北だけでは不可能であり、米朝間で目指すよう現実的に考えているが、日米としては、核ミサイルの除去という課題が置き去りにされないようにしなければならない。特に日本にとっては、米韓同盟の維持が重要だ。安倍首相は文大統領に対し、米韓軍事演習を予定通り進めるよう要請したが、米国が韓国を突き放すようなことがあれば日本にとっても厳しい状況となる。米国の関与がない朝鮮半島は、結局のところ中国の影響に晒されることになるためだ。ただ、北朝鮮には制裁が効いてきており、金正恩委員長の妹の金与正氏を平昌五輪に派遣するなど韓国への接近を強めている。南北融和が進展し、朝鮮半島のボーダーラインが変わる可能性もある一方で、日本だけ蚊帳の外という状況に陥ることがないようにしなくてはならない。

――日本の外交も変わらなければならない…。

松川 日本の外交にはまだ課題があるものの、既に変わってきたところもある。TPP(環太平洋経済連携協定)を米国なしで発効させたことは大きい。TPPは単なる経済同盟の一つではなく、海洋秩序と航行の自由を信奉する環太平洋の海洋国家同盟と位置付けられる。米国にただ追随するだけでなく、米国にどう動いてもらうかを考えなければならないなかで日本が能動的に動いた例と言える。また、安倍首相が打ち出した「自由で開かれたインド・太平洋戦略」も挙げられる。これはアジアとアフリカを、インド洋と太平洋でつないだ地域全体で経済成長を目指すものだ。16年8月のアフリカ開発会議(TICAD)で発表したと言われているが、07年のインドのシン首相の議会演説での構想がもとになっている。確固たる対中戦略がなかったトランプ政権に、日本がこの外交戦略を提供したことも大きな変化と見ている。日本は今年で明治維新から150年を迎えると言われるが、同じくらい大きく変化する局面にきている。外交と防衛が重要なのはもちろんのこと、経済も強化していく必要がある。一方、日本では人口減や高齢化という変えられない条件があるため、過去の成功体験を忘れてイノベーションを起こす勢いでないといけない。経済が強くなければ、外交でもうまくいかない。外交、経済ともに強い日本を創造することに邁進したい。

(c)2018 株式会社金融ファクシミリ新聞社
▲TOP