金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「伝統的な正しいM&Aを推進」

レコフ
代表取締役
小寺智也 氏

――レコフは2016年にM&Aキャピタルパートナーズ(MACP)と経営統合したがMACPはじめグループでの連携は…。

 小寺 各社の長所を活かした連携を実施している。特に重要視しているのが、知識やナレッジの共有。現在、MACPグループ全体で年間200件以上のM&Aを支援する中、創業から40年近くレコフが蓄積してきたM&Aに関するノウハウをグループ全体で共有している。また、M&A仲介業界で唯一のシンクタンク機能を持つレコフリサーチ部は、マクロ視点から経済や様々な業界について、日々分析を行っており、その分析内容や知見もグループで共有するなど、様々なグループ全体での情報共有によって、クライアントへの支援の質を高めている。

――年間何件くらいの案件に携わるのか…。

 小寺 レコフでは約20件、MACPグループ全体では200件以上になっている。レコフでは、コンサルタントの若返りが進んでおり、これから人員数、案件数をともに増やしていく段階だ。古くから活躍しているシニアメンバーも多く在籍しており、組織の若返りを進めるとともに、経験豊富なシニアメンバーとの相乗効果の創出を進めている。

――レコフの得意分野は…。

 小寺 得意分野というより強みとなってくるが、レコフは国内M&Aの創始企業として40年にわたりM&A助言業務を行ってきており、これまでの信頼と実績で積み上げてきたブランド力を活かしている。MACPグループでは、「正しいM&A」をクライアントに提供することを掲げているが、レコフでは創業以来、実際に実践してきた自負があるため、これまで通りのレコフのM&Aをクライアントに提供し続けていくことが、逆に他社との差別化につながっていくと思う。具体的なメリットでいうと、クライアントへのアプローチの際、アポイントを取るときに「40年前からやっているのでこの業界では老舗です、安心してお話を聞いていただけます」と言えるのが大きな強みになっている。また、業歴の長さから過去の取引で当時M&Aのご担当者だった方が、要職についているケースも少なくなく、東証プライム上場の売上数千億円、数兆円規模の企業の経営陣にアクセス可能なケースが多いこともレコフの大きな強みだと考えている。

――最近一番大きかった案件は何か、また手掛けたいディールの規模感などは…。

 小寺 最近で言うとヘルスケア業界の案件で売上高は約100億円規模の企業様のご支援をさせて頂いた。これ以外にも手数料合計が1億円を超える大型案件も複数成約実績がある。将来的には経済紙の一面に掲載されるような超大型案件を取り扱いたいという思いは常々持っている。レコフはこれまで、大企業同士の経営統合やカーブアウト案件などを強みにしていたので、この部分も活かしつつ、事業承継のマーケットも大きく伸びてきているので、そこも取りながら両軸でできる会社にしたい。加えてベトナムを拠点としたクロスボーダー案件を手掛ける部署もあり、この3つのセクターで、これまでのレコフが手掛けてきた規模感のディールを全員一丸となって手掛けていきたいと思う。

――ベトナムでの事業はどういったものか…。

 小寺 日本企業がベトナム企業に出資を行う案件(in-оut)、ベトナム企業が日本企業に出資を行う案件(оut-in)の両方に関わっている。実績としては、コロナの影響や法制度、文化の違いにより多少苦戦はしていたが、今期はしっかりと出来そうな形になっている。また、ベトナムでは毎年、計画投資省がビジネス界や投資家、政府関係者などが一堂に会する「ベトナムM&Aフォーラム」というM&A市場の動向や展望、関連法規制、政策提言などについて議論するイベントを開催しており、レコフはベトナム国内外におけるM&Aアドバイザリー活動を認められ、「ベストM&Aアドバイザリーファームオブザイヤー」を22年以降3年連続で受賞している。案件としては、日本企業によるベトナム企業の買収あるいは、ベトナムに置いている子会社を現地法人に売却するといった案件の実績が多い。レコフ創業者の吉田(吉田允昭氏)は、人材育成を通じた日越発展を願い、ベトナムで人材教育・研修事業を行っているエスハイ社における高度技術者学生に対する奨学金制度を立ち上げたほか、同社の新校舎建設にも支援している。ベトナムは親日国で、勤勉な気質も備えており、ベトナムに進出したい日本企業も多く、レコフのクロスボーダーM&Aの原点でもあるため大切にしていきたい。また競合他社もクロスボーダーM&Aを強化しつつあるので、ASEAN地域を中心とした展開領域の拡大についても検討している。

――日本の税制も大きく改善され、M&A仲介会社もとても増えた…。

 小寺 支援機関に登録している業者は2800社ほどあり、半数くらいがここ数年で始めた業者だ。従業員も1~2人という会社も多数存在している。業者が増えれば、その分サービスの質の低下が起こることは必然ではあるが、悪質な買い手のトラブルが最近話題となっている。売り手側のオーナーに後継者がおらず本当に困っているときに、M&Aによる事業承継の提案があれば、渡りに船で、あまり詳しい検証をせずに乗ってしまうケースも多いと思われる。オーナー自身も会社の借入金に対する経営者保証があるケースも多く、買い手側はその経営者保証を「解除する」と言うのだが、数ヵ月、半年経っても解除されず、結局現金だけ抜かれてしまい、経営者保証は前オーナーに残ったまま、音信不通になってしまうというケースが問題となっている。同じ業界でこのようなトラブルが発生していること自体が信じられないが、引き続き業界の模範となるべく襟を正して「正しいM&A」を推進していきたい。今までであれば契約を締結し、クロージングが完了すれば、役務提供は終了していたが、今後は対価がすべて払われているかどうか、経営者保証自体もすべて解消されているかどうかまで確認する必要がある。本当に最後まで責任を持って仕事をすることが、レコフでは今、当たり前のルールになっている。これからも先駆者としてクライアントから期待と信頼をいただける仕事を続けていきたい。[B][HE]

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