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民主主義重視で野党を結集

民進党代表  参議院議員  大塚 耕平 氏

――国民からすると、民進党や希望の党、立憲民主党など野党各党の違いが不明瞭だ…。

大塚 民進党、希望の党、立憲民主党は、いずれも元民主党の政党だ。ピザに例えれば土台となる生地は一緒であり、その上に乗っているトッピングが少々違うだけに過ぎない。そのトッピングの違いを強調することが、果たして本当に日本の政治のためになるのかは疑問だ。自民党と公明党の連立政権がスパゲティだとすると、国民の中にはスパゲティではなくピザを食べたい人も大勢いるはずだ。現に、昨年の衆院選の比例票を見ると、自民党の約1855万票に対し、希望の党と立憲民主党の票数の合計は約2076万票でこれを上回っている。衆院選の経緯で民進党が分裂する状況になったこの状況を固定化することが、有権者にとっては本当に望ましいことなのだろうか。民進党の立場としては、特にこの点を問いかけている。

――民進党のカラーをどのように打ち出していくか…。

大塚 私たちは「中道的で新しい党を目指す」ということを機関決定したうえで公言している。そもそも、保守とリベラルという概念は本来対立するものではないが、戦後の日本の政治家とマスコミの誤用や理解不足により、あたかも対立的な概念であるかのように国民の間にまで浸透している。まずはここから脱却しなければならない。そのうえで、現在の安倍政権と野党との間では、時間の許す限り熟議を尽くす民主主義を重んじる勢力か、民主主義を軽んじる勢力かどうかという点で明確に構図が分かれている。確かに野党の間では原発政策や安保政策で多少の考え方の違いはあるが、民主主義を重んじるという1点において協力し合い、選挙協力等を行うことは可能なはずだ。私たちの政党が掲げる中道とは元々は仏教や哲学の用語だが、他者の意見を否定しないというところから中道の論理が始まっている。今後は中道的な新しい立場から、政策面の意見の違いをお互いに認め合いつつ、民主主義を重んじる野党勢力を結集することを目指していく。

――原発政策など個別の論点で対立軸を示すべきでは…。

大塚 原発政策への賛否は白か黒かで言える話ではない。元民主党の同じピザ生地の上に乗っているグループでは、原発を推進するという考え方はあり得ないという点では共通している。脱原発に向かうことは決まっており、あとはそのスピード感に差があるだけだ。憲法についても、議論すべき点は議論を積み重ね、きちんとした手続きを経ることを前提に、改正に向き合うという考え方は、元民進党系の議員は共有しているはずだ。民主主義という言葉だけでは国民にはわかりにくいかもしれないが、時間が許す限り熟議を尽くせばより良い結論に到達できるという民主主義にとって、事実を共有し、嘘をつかないということが大前提であり、極めて重要だ。森友学園問題や南スーダンのPKO日報問題でも、現政権が嘘をつき、事実を隠蔽していることは、民主主義の大前提に反している。元民進党の野党3党がことさらお互いの考え方の違いを強調することは、当事者のみならず、ピザ派の国民にとっても不毛だ。ピザ派の国民もそれぞれ好きなトッピングがあるだろうが、自らがスパゲティではなくピザが好きなのだということを理解して頂かないと、このままずっと嘘をつき続ける政権が居座ることになってしまう。

――アベノミクスに対抗する経済政策については…。

大塚 自民党は「経済が良くなれば生活が良くなる」と言うロジックでアベノミクスを組み立てたが、結局そうはならなかった。私たちは、旧民主党政権の頃から「生活が良くなれば経済が良くなる」と一貫して主張している。実際に、GDPの約6割は個人消費が占めている。安倍政権の過去5年間では労働生産性が上昇しているにも関わらず、実質賃金は伸び悩んでいる。また、日銀の緩和による円安の恩恵を受けて企業収益は上がっているが、労働分配率は逆に下がってしまった。私たちの経済政策では、企業や産業が発展し、輸出が増えた結果、勤労者にその果実が適確に分配されることを通じ、個人消費の前提となる所得が改善することをキーポイントとしている。我々は経済政策を非常に重視しており、軽んじているといった誤解を与えないようにしっかりと説明をしなければならない。安倍政権が実施してきた政策は大きく2つで、1つは異常とも言える大規模な金融緩和、もう1つは私に言わせれば労働をコストと考える経済政策だ。この2つの政策を続けてきた結果が現在であり、うまくいっていないと考えるならばこれを改めなければならない。

――予算の額も再び水ぶくれしてしまっている…。

大塚 1955年から2015年までの60年間でOECDの統計から各国の公的資本形成(公共事業予算)の対GDP比をはじくと、日本を除く他の先進6カ国の平均は3.9%であるのに対し、日本は7.7%と倍の水準だ。過去60年分の毎年度の予算の実額を合計すると1400兆円で、これが対GDP比の7.7%に相当する訳だが、他の先進6カ国との比較では約700兆円もの過剰投資をしていることになる。さらに、1950年代や1960年代など現在より物価が低かった時代の分を現在価値に直して足し上げると、過剰投資の額は約1000兆円にも達する。他国が技術革新や人材育成や社会保障に回していた資金を、これだけ過剰に公共事業に投資していたのだから、日本が技術や人材の面で遅れを取るのはある意味当然だ。安倍政権では、土地改良事業を典型例として予算配分のスタイルが元に戻ってきており、本当に経済を強くするような予算を組まなければ経済の地力が落ちていってしまう。

――日銀の緩和政策に対する評価は…。

大塚 アベノミクスの現状が成功だと捉えると、先行きの展開も大変間違った選択をすることになってしまう。旧民主党政権が直面したリーマン・ショックも、言ってしまえば金融緩和のなれの果てだ。歴史は繰り返すという言葉通り、日本では近い将来に異次元緩和と実質賃金低下を放置する所得再分配政策の失敗のツケが回って来るだろう。私は、黒田日銀総裁が再任されても5年の任期を全うすることは出来ないと考えている。任期を全うするには、2%物価目標を達成できないまま現在の緩和政策を続けるか、あるいは物価目標を達成して出口戦略を取るかの2つしかないが、どちらも大変に困難な道筋だ。また、一口に出口戦略といっても、これほど大規模な緩和政策を直ちに止めることは不可能だろう。黒田総裁が出口戦略を行えるとは思えないが、途中退任となっても誰がその後始末をするのかを含めて大変な状況に直面することになるだろう。

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