金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

森友学園問題の本質は?

緊急記者座談会

――世界が急速に変わっているにも関わらず、日本の国会はまだ森友学園の問題をやっている…。

 確かに安倍首相の支持者ばかりでなく、改憲推進派や国際的な視野に立っている人達から見ると、「何をやっているんだ」という呆れた感を持っている人が大勢ではないか。森友問題をとっとと終わらせて、国防強化や制度改革を進め、他国との競争にこれ以上劣後しないように早急に体制を整えるべきだ。海外出張に行って帰ってくると、この国の「ノー天気」ぶりに焦りさえ覚える。

 まったくその通りだが、その原因はやはり安倍首相にある。第一に昨年の早い段階に自分たちが森友問題に関わっていたら首相職はもちろん国会議員も辞めると言ってしまったこと。そしてこの問題の当事者である昭恵夫人を国会に出席させて説明させていないことだ。国民は、間違ったことをしていなければ国会で堂々と証言できるはずだと見ている人が多い。また、安倍首相が「昭恵夫人隠し」をし、森友学園の籠池氏を逮捕して口封じをしたと見ている向きが、佐川前理財局長の証人喚問の後でも多いのが現実だ。

 問題なのは、財務省が決裁文書を改ざんしたということだ。昨年に当時の稲田防衛大臣が辞任する原因となったPKO日報問題も、破棄したはずの日報が実はあったということになり、政府の隠ぺい体質が問題となった。また、直近では、厚生労働省が国会に提出した裁量労働制のデータもインチキであることが判明するなど、国会の審議が政府の嘘で空転しているという印象がぬぐえない。

――安倍ウソツキ内閣か…。

 加えて安倍首相は、昨年秋の衆議院選挙でも北朝鮮情勢を国難と煽って大勝を収めた感がある。しかし現在は、安倍首相のみが蚊帳の外に置かれ、米朝の首脳による対話ベースで緊張が緩和されるとの期待が高まりつつある。安倍首相の危機的な主張は、選挙に勝つための方便だったのかといった受け止め方も国民の間でされ始めてきている。

 しかし、中朝の首脳会談が行われた今でも、北朝鮮情勢の緊張はまだ決して緩和されたとは言えないし、米朝の戦争リスクはまだまだある。超タカ派のボルトン氏が米の新たな安全保障担当の大統領補佐官に指名されたことや、トランプ大統領が米軍のシリアからの早期撤退に言及したことは、米の北朝鮮への軍事行動への傾斜を示唆している。むろん、それは北朝鮮への強い圧力となり、核放棄を促す材料になるとの見方もできるものの、北朝鮮は国民にことある毎に核兵器を開発して世界の強国になるとアピールしているだけに、今更核を手放すことはできない。

――そうなると結末は、米国による核施設の攻撃か、または10年前と同様に攻撃などにより核施設が全壊したふりをして米国をだますか、あるいは金正恩委員長の亡命といった展開が想定されるが…。

 トランプ大統領はクリントン、ブッシュ、オバマの各大統領の過ちを繰り返さないと何度も言っていることから、さすがに今回は北朝鮮が米国をだますのは難しいのではないか。しかし、平昌オリンピックでのパフォーマンスや米朝首脳会談の提案、北京への電撃訪問などで判るように北朝鮮は外交が上手だ。日本は爪の垢を煎じて飲ませてもらった方がいい。それだけに、過去と同様に米国を上手にだまして、とりあえず今の局面は平和裏に収め、トランプ大統領の任期が終わるまでは核開発を停止またはごく密かに続けるというシナリオも十分に考えられる。

 しかし、確かに米大統領の任期は4年もしくは再選されても8年だが、今年の11月にはトランプ大統領は中間選挙があり何らかの成果が求められる。その成果を出すために貿易交渉も強引になっているわけで、外国を攻撃することで支持率をあげるという政治家の常套手段を使わないという保証はない。この点、今月には韓国にいる米国人を初めて米国に脱出させる訓練を行うと言うし、昨年は横須賀とグアムの米軍基地に巨大なシェルターを完成させたという話もある。この点、仮に米国が本当に北朝鮮を攻撃したとしても、今なら反撃される範囲はせいぜい韓国、日本、グアムで、ハワイや米国本土は無傷だということがポイントだ。

――安倍政権は、内政では森友学園、外交では蚊帳の外…。

 一時期、頻繁にあった電話会議がなくなっており、鉄鋼アルミ関税でも日本は対象外にならなかったり、安倍首相とトランプ大統領の関係は一時期に比べ醒めている。この原因として考えられるのは、エルサレムを巡る国連決議で、日本は米がイスラエルの首都と認定したことに対し反対票を入れてしまったことだ。決議に棄権したカナダやオーストラリアは鉄鋼アルミ関税の対象外となっている。このため、中朝韓がスクラムを組んで平和外交を推進しようとしている事に対し、トランプ大統領が再び日本との関係を強化しようとすれば別だが、そうでなければ引き続き蚊帳の外に置かれるリスクもある。

――森友問題による安倍内閣の弱体化を見透かされ、貿易交渉についてもトランプ大統領から足元を見られているのではないか…。

 PKO問題、森友、裁量労働制のうそデータの話に戻れば、そんな内閣のごまかし体質が残ったまま自衛隊を増強したら太平洋戦争の二の舞という危機感が国民の間にはある。太平洋戦争では既に大負けしているにもかかわらず日本の「勝利」を発表し続け、マスコミも手伝って国民をだました結果、300万人以上の日本人が犠牲になった。つまり、政府の隠ぺい・改ざん体質や、平気で重要書類を廃棄しても大した罪には問われない今の仕組みを改めない限り、憲法を改正して軍備を強化することは再び誤った方向に国が行きかねないリスクを持つ。

 政治主導も同じで、政治家に人事権を握られた役人がその政治家のために平気で改ざんや隠ぺい、虚偽発言が出来ぬよう仕組みを改めないと大変なことになる。日本の役人は社会意識が高くお金にも比較的清潔だったことが、政治主導で高度経済成長を実現できた要因のひとつだ。しかし、そうした役人の性善説を前提に社会が組み立てられていることが、逆に今の局面ではマイナスになっている感がある。国防を早急に立て直す必要はあるが、新たな時代に対応するのは憲法を改正するだけでは済まない、ということが良く分ったというのが森友問題などの国民への教訓ではないか。

――敵は身内にあり。長く平和が続いただけに、時代に合わせて国を変えて行くのは本当に大変だという事だな…。

▲TOP