金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

「政府調達と減税で経済を復活」

れいわ新選組代表
参議院議員
山本太郎 氏

――今回の衆議院選挙でれいわ新選組の議席は3倍に増えた。勝因は…。

 山本 「れいわ新選組」を旗揚げして5年。我々の政策が一定の方々に浸透してきているという事だとみている。マスコミでは景気が良くなっているという報道もしているようだが、足元では全くそういった事はなく、景気は悪すぎる。帝国データバンクの調査でも、中小企業の倒産の8割が不況型倒産であり、貧困も拡大している。一方で資本を保有している人達は右肩上がりだ。この超絶格差の拡大は、決して自己責任とされるものではなく、構造上の問題だ。つまり、政治の失敗によって国民の首が絞められている。そういう我々の話に国民の皆さまが共鳴して下さったことが、議席増に繋がったのだと思う。ただ、本当はもっと議席を伸ばしたかった。一番の理想は今回の国民民主党の様な躍進だ。彼らは今、キャスティングボートを握る位置にいる。そのような位置にいれば、消費税5%減税に乗れるのは与野党どちらかというスタンスで大きな議論が出来るようになるだろう。しかし、そうはいっても候補者1人当たりのエントリー費用が約600万円だとして、今回38名の候補者を立てるだけで2億円超が必要になった。さらに選挙活動にかかる費用を考えると、それ以上の候補者は出せない。例えば、選挙時の供託金の金額を下げるような議論もあって良いと思うのだが、そういった根本的な話はすべて無視され、「新規参入お断り」といった状態を維持しているのが今の日本の政治の実態だ。

――マスメディアの「れいわ新選組」に対する取り上げ方にも違和感がある…。

 山本 実際にお会いした人からは「テレビで見た印象と違う」と言われることが多い。我々は政党主体で減税デモを行っており、そういった一場面を切り取られてテレビで使われたりすると、真意が伝わらず「何をやっているのかわからない政党」という感想を抱かれる方もいらっしゃるのだろう。大体のテレビや新聞はスポンサー企業の意向に左右されるため、彼らにとって利益にならないことはあまり歓迎されないのだろうが、基本的に我々が唱える減税は、国民皆にとって景気が良くなるような政策であり、国民に余裕が出てくれば、企業も安定的に利益を得る事が出来る。スポンサー企業に不利益と思われる理由もない筈だ。また、我々が行っているデモは、政治に対するハードルを出来るだけ下げて、自由に発言できる空気を醸成するために行っているものだが、そこを変に報道されてしまっている。

――経済政策については…。

 山本 現在の物価高の中身は完全に輸入品の高騰によるもので、それを吸収するのが国民や企業になると日本は潰れてしまう。そういう悪い物価高が収まるまでの間は、例えば季節毎に10万円程度の給付金を出して国民生活を支え、需要を喚起していくべきというのが我々の主張だ。また、この30年続く経済不況の中で国外へ移ってしまった生産基盤を再び国内に戻し、モノづくり大国日本のサイクルを再興させるために、政府調達をもっと利用するという政策も掲げている。モノやサービスを国が買うという政府調達の利用額は、現在日本では10兆円程度で、その約2割は外国品に費やされている。一方で米国では、製造業を復活させた際にこの政府調達が利用され、その利用額は年間約80兆円。ヘリコプターブレードからオフィス家具に至るまで、あらゆるものを政府調達で購入した結果、製造業が息を吹き返し、雇用も安定して賃金も上がっていった。これこそ、まさに30年の経済を失った今の日本に必要な政策だ。

――肌感覚で経済政策を打ち出していくことが、今の日本政治には欠けている…。

 山本 例えば、消費税増税でどれだけの個人消費が失われたかの調査では、100年に一度と言われたリーマンショック時に個人消費マイナス4.1兆円だったのに対し、1997年の消費税5%増税時にはマイナス7.5兆円、消費税8%に増税した時がマイナス10.6兆円、そして消費税10%導入時がマイナス18.4兆円と、全ての段階においてリーマンショック時を上回って個人消費が落ち込んでいる。個人消費はGDPの5割を超えているため、この部分をどうにかしなければ国の景気は良くならず、世界的に見ても不況時には消費税は上げないというのが鉄則だ。それなのに日本では消費税を5%に上げて以降、ずっと不況であるにもかかわらず、8%そして10%と消費税を上げ続けている。これは、はっきり言って自殺行為だ。

――れいわ新選組では消費税減税を強く主張している…。

 山本 先日の選挙前のテレビ討論会で、私が海外の例を説明しながら「すぐに減税すべきだ」と唱えると、立憲民主党の野田佳彦さんが「日本は税に関するルールが他国とは違う為、税制改正が必要となり、短期間に減税は出来ない」という発言をされた。しかし、ドイツでは2週間で税制改正を行い、その2週間後に減税が始まったという例もある。選挙前の国会で私が「消費税減税をするために、どの程度の時間が必要なのか試算したのか」と問うても、試算さえしていないと政府答弁する。全くやる気が無いという事だ。さらに言えば、消費税が上がるたびに法人税は下げてきた。これはある意味、組織票と企業献金とのバーター取引だ。国を元気にするためには屋台骨を、中小企業を元気にする必要がある。消費税をゼロにすれば、かなり景気は良くなる。

――タレントから政治家に転身したきっかけは…。

 山本 私が芸能界に入ってから20年目に原発事故が起こった。当時は民主党政権だったが、当時の政治家の発言やマスコミの報道に歯切れの悪さを感じて色々と調べたところ、決して表には出ない裏の事情が分かってきた。一方で、タレントの一番の収入源はテレビコマーシャルだ。年間契約で数千万円の報酬になるケースもあるため、タレントは政治情勢には関わらないというのが通常なのだが、原発事故の実態を知って我慢できなくなった私は、原発反対と発言してしまった。すると、決定していたドラマの役を降板させられるなど、次々と仕事がなくなっていった。表現の自由を象徴するような仕事をしているのに、しかも、きちんと税金も納めているのに、自分の意見が自由に言えなくなる事に相当の怒りを感じた。ただ一方で、仕事が外されていく毎に、自分の意志が固くなっていくのを感じ、当時所属していた事務所も辞めて、原発反対を声高に唱えていった。すると、全国の原発を考える会や、労働環境を考える支援者や当事者の方々から、「芸能界の仕事がなくなったのだったら、その話をしに来てほしい」というお声をかけていただいた。私は16歳で芸能界に入ったため、それまでの20年間、凄く狭い世界で物事を見てきていた。社会がどうなっているのかも知らず、貧困がこの国にもあるということすら知らない状況だったのだが、そうやって1年半くらい全国各地を回ってお話を聞いていくと、その実態に「この世界は地獄だ」と驚いてしまった。同時に、それまで政府や東電に対して向けていた怒りが、「この地獄を広めたのは自分自身でもあったのだ」「誰か困っている人や、何か助けを求める声が聞こえきても、自分は指一本動かさなかった」と思うようになり、そこで、それまで聞いた話を直接国会に伝えに行こうと考えたのが始まりだ。

――政治の道を選び、自分の党を立ち上げようと考えたのは…。

 山本 最初、政治に対する不信感や怒りを目覚めさせてくれたのは当時の民主党だったが、当時の国会における与野党のやり取りを見ながら、大きな党に所属するのではなく、無所属で議員立候補しようと思った。最初は衆院選で杉並区から立候補して落選したが、翌年2013年の参院選で初当選を果たし、その数年後、小沢一郎氏が代表を務める生活の党と合流して「生活の党と山本太郎と仲間たち」を発足するに至った。そこで共同代表として沢山の事を学んだのだが、議員として6年目を迎える頃、「この世の中、与党も野党もなく、茶番でしかない。やはり自分の旗を立ち上げよう」と決心した。そういった背景もあって、どの党からも一番嫌われているようだ(笑)。今回の選挙で我が党は9名に議席を増やしたのだが、野党で行われる国会対策委員会にも誰も呼ばれなかった。我が党から立候補してくれた38名は純粋に理念に共感して力を貸してくれる人もいれば、「ここだったらワンチャンスあるかもしれない」と思って来ている人もいるかもしれない。その心中は図れるものではないが、しかし、大手でも中小でもない、町の小さな工場である我々の党に手を上げてくれる人は、それだけで勇気のある人だと思う。

――今後の抱負は…。

 山本 これまで多くの人に話を聞いて分かったことは、この国の将来のみならず、自分の将来さえ不安しか感じないという人が圧倒的に多いという事だ。不安しか感じない国民を大勢抱える国は、軍備を万全にしたところで守ることはできない。重要な事は人間の尊厳を守れるような国にすることであり、そのためには経済の安定が必要だ。一人一人の購買力を上げて、久々の外食で一番安いメニューを選ぶのではなく、高くても自分が働いたお金で食べたいものを選ぶことの出来る、昔のような日本を取り戻したい。経済力の弱い人たちに対して支援することが温情的に捉えられたり、欲を否定するような風潮は大間違いだ。お金を溜めずに右から左に流すような人たちは、社会にお金が波及していくという意味で、一番この国の経済に寄与していると言えよう。もちろん色々なフェーズの人たちへの支援は必要だが、世代横断的に貧困が広がっている今の日本においては、大胆にお金を出していく事が必要だ。我々の政策を見て、大企業や資本家を敵視していると捉える方もいらっしゃるが、それは全く逆だ。我々の徹底した需要喚起策を進めていけば、国が豊かになり、企業も潤う。製造業の国内回帰も実現し、国内でのイノベーションも期待できるだろう。政治家にとって一番重要な事は「経済政策を誤らない」事だ。我々は完全な存在ではないが、ここまでゼロからつくられた党は日本には無い。是非、この国に生きる皆様に「れいわ新選組」を育てていただき、国民の皆様の手足として使ってもらいたいと思う。[B]

▲TOP