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国境の最前線の島にようこそ

石垣市長  中山 義隆 氏

――石垣市長3期目の当選勝因は…。

中山 これまで1期と2期でやってきた実績と、3期目に打ち出した政策を市民の皆様がしっかり支持してくださった結果だと思う。保守系から私と現職県議が出馬したことで革新系の候補者が漁夫の利を得るのではという見方もあったが、石垣島への陸上自衛隊の配備反対を政策のメインに掲げた革新系には市民があまり反応せず、もともとの革新支持層の票に留まり予想以上に伸びなかった。結局、次点の革新系候補に4300票差で当選することが出来た。

――これまでの実績で評価された点、そして今期の政策で期待されている点は…。

中山 2013年に新石垣空港が開港したこともあり、観光は右肩上がりに伸びて経済が順調に成長している。併せて、政策に掲げていた待機児童の解消がほぼ実現出来ている。今年度の新しい保育所が開所すれば待機児童はゼロだ。この辺りは大変評価されていると思う。引き続きこの経済成長を継続していくために、今期の政策では、現在2000メートルの滑走路を国際空港基準の2500メートルに延長することを掲げている。現在、海外からの新石垣空港の就航は香港が週5便、台湾が週2便というペースだが、これをデイリーにしていきたい。那覇より400キロメートル南西にある石垣の地理的優位性を生かして、「那覇ではなくて石垣」というようなルートを作りたいと考えている。

――観光が伸びている一方で、中国からの観光客が経済的脅威を高めるという心配は…。

中山 基本的に石垣への海外観光客は中国本土ではなく台湾からが中心だ。昨年、石垣を訪れた観光客は137万人で、その内約100万人が国内の航空会社から、つまり日本人であり、クルーズ船で来る観光客約30万人のほとんどが台湾からだ。残り7万人のうち、6万人は香港の航空直行便で、1万人は台湾の航空直行便からとなっている。今年に入ってから中国のクルーズ船が何度か来るようになったが、それでもやはり台湾がメインだ。最近は、沖縄本島などクルーズ船のメインが中国になっている地域が多いように思う。私の考えとしては、客層が中国に偏ってしまい、国内や台湾などからの旅行者が少なくなった時に、経済制裁や何かしらの交渉カードとして観光客を使われるようなことにはなりたくない。その辺りも考えて、プロモーション先もしっかりと選んでいる。

――プロモーション先として、これから力を入れていく候補地域は…。

中山 距離的には先ず韓国がある。また、ヨーロッパにもプロモーションを行っている。今は国際線利用時の国内移動区間が1万円というキャンペーンもあり、ヨーロッパから羽田や成田経由で石垣までいらっしゃる方もいる。そういった口コミも広がっているようで、先日も街の居酒屋で見かけたヨーロッパ系の老夫婦に私が「どこからいらしたのですか?」と声をかけたところ、「フィンランドから」と言い、別の若者カップルからは「オランダ」といった返事が返ってきた。

――観光業として力を入れている施策は…。

中山 石垣港は国の重要港湾に指定されており、現在直轄事業で旅客船ターミナルの整備事業が進んでいる。すでに7万トン級のクルーズ船が着岸可能となっており、2年後にはそれをさらに広げて15万トン級の船が入港できるようになる予定だ。さらに、その隣には20万トン級のクルーズ船も着岸可能となる整備計画もあり、早ければ約5年後には3隻同時に大型クルーズ船が寄港する光景も見られるだろう。このように港の整備は引き続き国主導で進めていく予定だが、一方で、海外のお客様、特に目の肥えたヨーロッパの観光客を受け入れるには、それなりの需要や要望を満たせる観光地にする必要がある。観光地やインフラを整備して、観光客が来て楽しめるようなコンテンツ作りを検討すると同時に、EV車やEV船、電動バイクなどを導入して、観光地の環境を守るようにも努めている。宿泊施設に関しては、五つ星などハイクラスのホテルの数が少ないことが指摘されているが、新規の開発案件はいくつか来ているので、家族で何日間もゆったりと滞在していただけるようなグレードの高いものなどを認可していきたいと考えている。

――中国の脅威はさらに大きくなっていると思うが…。

中山 国の防衛大綱にもあるように南西諸島へ陸上自衛隊が配備されることになっており、すでに与那国島には沿岸監視部隊が配備され、宮古島や奄美大島では駐屯地の工事が始まっている。計画の中で未着手なのは石垣だけだ。この点、私は国防や安全保障は国の専権事項であり石垣への配備については理解を示す一方で、地域住民や市民の声を聞いて総合的に判断するとしており、今はまさに地域の皆様の声を聴かせていただいている最中で、6月11日には全市民向けの意見交換会が開催する予定となっている。沖縄本島にある米軍とは違って私たちの国の組織である自衛隊に対して、住民の不安や不満はそれほど大きくないと思っているが、もともと反戦平和を訴える人や九条の会など、最初から自衛隊の存在を否定している団体の人たちのそういった運動は続いている。石垣に配備予定の部隊は与那国の後方支援部隊という位置づけだ。また、石垣に配備される予定の重要な装備として、地対空誘導弾や地対艦誘導弾があるが、それは尖閣諸島や石垣島に侵入攻撃しようとする艦船や飛行機を防ぐための抑止力だ。

――尖閣諸島に関しては…。

中山 海上保安庁の巡視船が増強されて警備体制は整っているが、領海侵入の頻度は上がってきている。最初は調査船のようなものだった中国の船もだんだんとレベルが上がり、今は中国海軍の指揮下にある船まで入ってきている。さらに船の数も増えているため、石垣の漁師の皆さんは尖閣諸島周辺にはほとんど漁に行けない状態となっている。尖閣諸島周辺は確かに良い漁場ではあるが、漁師の皆さんとしても、自分たちがその周辺に漁に行くことで、中国の船と接触し、海上保安庁の手を煩わせたりすることにならないよう自重しているという部分もある。

――沖縄の雇用環境については…。

中山 沖縄に限らず全国的に人手不足で、主に建設業が中心だが、それ以外の業種においても人手が足りず、石垣の有効求人倍率は1.5を超える勢いだ。観光客が沢山来ることで産業自体のレベルもあがり、お土産品も本島や本土で作られたものではなく、石垣で生産した農作物を加工した地元産のものが求められている。それを作るための製造業、また、それを世の中に発信するためのIT業など、今までとは違った職種が増えてきており、一昔前のように若い人の働くところがないといった状況は一変している。

――最後に、今後の抱負を…。

中山 石垣を含めた八重山諸島は沖縄の中でも独特の地域だと思う。国境の最前線でもあり、アジアに非常に近く、日本の南の玄関口として十分に機能できる。これまでの沖縄の一地域としての石垣としての売り出し方だけでなく、日本の中の南の島として、その特異性を生かしていきたい。また、石垣市は合計特殊出生率が他地域に比べ高く、2012年時点では2.06だった。当時、適齢期の住民女性に行ったアンケートでは希望する子供の数は平均2.47であり、それを実現するために必要な条件も聞いた。例えば待機児童解消や子育て支援、安定した収入など、そこで出てきた条件を今、一つずつクリアしているところだ。そして、最近の調査速報値では出生率が2.16まで上がってきている。今の日本で人口減少に悩んでいる自治体は多いが、石垣は島であるため、政策が良いからといって引っ越してくるような人もあまりいない。純粋に出生率が増えたことで人口が増えていくという石垣モデルを確立し、全国の地方都市で実施してもらえれば、10数年後には、また日本の人口も増えていくのではないか。このような魅力のある石垣に、是非皆さんにも来てもらいたい。(了)

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