金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「資金調達先の多様化を再構築」

NTTファイナンス
代表取締役社長
伊藤正三 氏

――NTTグループ全体のファイナンスを統括されている…。

 伊藤 NTTファイナンスはNTT(9432)グループ各社のファイナンス事業、アカウンティング事業、料金請求などを行うビリング事業を担っている。NTTファイナンスの祖業はリース事業であり、大型の通信機器の一般企業への普及にあわせてリース需要が増したことへの対応が始まりで、航空機リースなどを含めたリース全般を行っていたが、NTT、NTTファイナンス、東京センチュリー(8439)の3社が合弁で立ち上げたNTT・TCリースに分社化した。ファイナンスについては、当社の高い調達力を背景に、NTTグループ各社が個別に資金調達するよりも有利な条件で調達できるようにしており、これによりスケールメリットも実現でき、人材も効率よく回せるようにしている。NTTグループの財務系統の効率化は続けているが、もともと担っていた人材の高齢化などで人材不足が顕在化していたなかで何とか収めていると言う方が正しく、人材リソース自体はまだ足りず、組織改善の余地は大いにあると思っている。

――組織としての課題は…。

 伊藤 さまざまなリソースを最適化していくことが必要だ。23年には財務系のシステムをリニューアルしたが、まだグループ全社に導入できていないので、そのカバー率を上げていく。アカウンティングの集約はもっとできる余地があると思う。また、人材リソースの充実も必要で、財務人材を自前で育てていくほか、経験者採用を進めることも行い、さまざまなキャリアを持つ社員を充実させていきたい。その点、NTTグループの将来の財務系を担う人材をNTTファイナンスでまとめて新卒採用し、各社の財務の主要なポジションに配置して教育し財務のプロフェッショナルを育成する取り組みを始めたところだ。

――御社は社債やCP市場での存在感が大きいが、調達における考え方は…。

 伊藤 NTTファイナンスでの調達を拡大してから8年ほどが経過し、調達業務はかなりこなれてきたと思う。今年の5月にNTTグループとして中期経営計画を発表したが、グリーンエネルギーやIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想といった革新的技術を用いたサービス提供を本格的に進めていくなど、グループ全体としては成長分野への投資拡大をしたいと考えており、資金需要は旺盛だ。中期経営計画では23年から27年の5年間で成長分野に8兆円を投資すると掲げており、それに向けていかに効率的に調達するかが当社の使命だ。このほか、調達資金は事業への投資をメインに据えているものの、事業とのシナジーを考えて余剰資金の一部をコーポレートベンチャーキャピタルとして投資運用に取り組んでいる。社債での調達年限は3~10年が多く、超長期は選択肢にないわけではないが、現状では発行していない。考え方としては、CPで当面の資金繰りを行いながら長期資金の調達のタイミングを図っているイメージだ。2020年にドコモに対するTOBを行った際に約4.3兆円を要したため、元々4~5兆円で推移していた有利子負債が跳ね上がった。当面はブリッジローンでつないだが、20年に国内債で1兆円、国外債で1兆円強を調達し、有利子負債の水準はかなり増えている。ドコモのTOBを行ったことで当社の直間比率は、7~8割が間接金融だった状況から直接金融が増え、直接金融と間接金融が半々程度になっている。

――わが国の社債市場の課題は…。

 伊藤 NTTグループはグローバルでM&Aを行っているが、キャッシュフローは円貨が主流なので、国内市場で調達できるに越したことはないが、現状の国内社債市場にはグループの資金需要を満たす規模感がまだまだないと感じる。ドコモのTOBの際も相当部分は海外市場で調達し円転して充当しており、一概に規模が適切かどうかは言いかねるが、一般的にGDPの規模から言えば国内社債市場は小さい。少なくとも1度に1~2兆円を調達できるような市場のポテンシャルがあってもおかしくはない。

――今年は日銀の利上げが予想される…。

 伊藤 これまでの日本の大規模緩和などの金融環境は普通の環境ではなかったと思うが、だからこそドコモのTOB資金を集めることができた面もある。大規模緩和が終了し、マーケットが不安定となった場合に対応するため、特定の金融機関に依存しない体制を整えることも重要だ。日銀の政策次第でCP市場も不安定となる可能性もあるため、複数の金融機関との関係を構築しているほか、海外の金融機関との関係構築も含めて短期の調達のあり方を考えていきたい。ここ最近はUSCPの発行も行った。人数は少ないが海外にも拠点を持っていて、国内外の情報や現地でリレーションがなかった外銀との関係を構築していきたい。今後の市場については、欧米の金利低下と、日銀の政策修正を見比べながら調達していく方針だ。

――エクイティファイナンスやMBOによる非上場化といった選択肢は…。

 伊藤 どちらもNTTグループとしては現時点では現実的ではない。現在は、持ち株会社のNTTが上場会社、NTTファイナンスやドコモはNTTの100%子会社になっている。今議論されているNTT法の改正がどうなるか分からないが、仮にNTTグループが完全に自由になっても、MBOで非上場化するのは自分たちの意思だけでは難しい面がある。また、株の発行はNTT法上、かなり煩雑なプロセスが求められる。2000年12月に1度増資を行った実績はあるものの、現行法では国の認可事項であるため、勝手に増資することができない。NTT法の改正でそういった制約から離れればエクイティファイナンスも選択肢に上がるだろう。

――今後の展望は…。

 伊藤 現在はNTTグループ全体として成長にかじを切っている段階で、それをファイナンス面から支えるのが当社の使命だ。目下の有利子負債の円滑なリファイナンスに向けて、資金調達手段の多様化や複数の金融機関との関係構築に臨みたい。今後の成長投資については、かなり先行投資が重なるのでグループの財務面を懸念される方はいるかもしれないが、将来のリターンを得るためには必要な投資だと考えており、ご理解いただきたい。[B][N]

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