金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

「クルド人問題は政府に起因」

川口市長
奥ノ木 信夫 氏

――川口市ではクルド人による問題行為が指摘されている。実際にどのような問題が起きているのか…。

 奥ノ木 犯罪に至るものは多くはないが、車の運転が荒いなどの暴走行為、夜間の騒音、ごみの不法投棄や分別マナー違反、コンビニの周りで屯(たむろ)してしまうなど、日本人のマナーから外れている部分が問題になっている。また、クルド系の外国人は集団で行動する傾向が強く、多数のクルド人同士の争いに発展したことがあり、地元の人は不安に思っている面もある。コロナ禍ではクルド人のクラスター発生を危惧して、川口市ではワクチン接種に加え、無料でPCR検査を受けられる体制を整えていたが、クルド人の利用率は想像よりも低かったという問題もあった。外国人は風俗や生活習慣が違うので慣れるまでは仕方ない部分があるが、同じ外国人でも中国や韓国など東洋系の人は日本人と風俗や生活習慣が似ているためか、クルド系の人ほど問題行為が目立っていない。川口市には約4万人の外国人が住んでおり、外国人居住者数で東京都の新宿区と1、2を争う自治体のため、自然と外国人に対する問題意識は強くなる。川口市に外国人が集まる正確な理由はわからないが、東京都に隣接し都心へのアクセスも良好で、都内に比べ土地や家賃に割安感があるためではないか。また、既に川口市に住んでいる知人を頼って新たに居住する外国人が多いことも背景に挙げられると思う。

――仮放免の外国人をめぐって国に要望書を提出された…。

 奥ノ木 クルド人による迷惑行為の根本には、国の仮放免という制度の問題がある。これは、在留資格を失い出入国在留管理庁に収容された外国人が、移動や就労は制限されるものの、収容場から一時的に放免される措置のことだ。しかし、仮放免の状態では就労できないため、税金を納めたり健康保険に加入したりすることができず、結局、不法就労に手を染めることになってしまう。川口市ではこれを問題視し、2020年12月と今年9月の2度、法務大臣へ要望書を提出した。20年12月には、①仮放免者が最低限の生活維持ができるように、身元保証の仕組みの導入など就労を可能にする制度の構築②生活維持が困難な仮放免者の健康保険をはじめ行政サービスの適否の判断──の2点を求めた。さらに、今年9月には前述の2点に加え、不法行為を行う外国人について法に基づき強制送還などの厳格な対処を行うように要望している。つまり、仮放免の外国人による不法行為問題は国の制度が原因であって、本来ならば市が対応する問題ではない。たとえ、仮放免の外国人の子どもであっても学校は受け入れなければならないなど、人道上の義務的な部分が地方に押し付けられているのが現状だ。仮放免者は税金を払っていないとの声もあるが、国が就労を認めない以上、税金を払えないのは当然である。出入国在留管理庁が不法滞在している外国人を捕まえることしか考えていないとすれば、この問題が解決することはない。仮放免として日本に滞在する許可を出すのであれば、彼らが生活する術を考える必要があり、それができないのであれば強制送還などの対応を国は取るべきではないか。

――川口市では外国人に対してどのような対応を行っているのか…。

 奥ノ木 川口市では協働推進課が多文化共生の推進を担当しており、外国人窓口を開設し、市内の外国人への情報提供などを行っている。また防犯対策室では、地域の防犯のために自主的にパトロールする青色パトロール車両の増車や、警察との連携により治安維持に努めている。川口市は外国人が多いため、近い将来は国際課のような部署を作っても良いと考えているところだ。さらに日中協会やクルド人協会といった市民団体が、日本語を教えたり交流事業を開催したりしているが、日中協会と比較してクルド人協会は川口市にまだ馴染めていない印象がある。クルド人協会が他の市民との交流を深めるなど成熟してくれば積極的に応援したいと考えている。また川口市では、教員が土曜日に外国人の子どもに日本語を教える活動を自主的に行っているが、これについても国からの支援は一切ない。

――国際問題に発展する懸念もあると…。

 奥ノ木 クルド人はトルコ政府に迫害されていると主張しているが、トルコは親日国で、日本とトルコは友好関係にあるため、市の立ち位置は非常に難しい。クルド人が集まってお祭りを開催するときなどは、トルコからの独立運動などにつながらないように注意している。

――外国人と共生のあり方についてのお考えは…。

 奥ノ木 まずは、「郷に入っては郷に従え」の通り、日本の生活、風俗、習慣、文化などを、外国人の方には身に着けていただきたい。共生しようと努力する外国人に対しては、市は一生懸命応援したいと思っている。また、いわゆる3Kの仕事など、日本人がやりたがらない仕事を外国人がやってくれている一面もある。そういったことからも、仮放免となっている外国人については、日本人の雇い主やクルド人協会、公的な身分を持った人などの保証により、就労でき、税金を払うことができ、健康保険にも加入できるような監理措置制度を国に整えていただきたい。日本は島国で外国人が陸伝いに訪れる場所ではなかったため、外国人と共生する文化が根付いていないが、仮放免者が生活を維持できない状況をそのままにするのではなく、共生に向けた道筋を考えなければならない。そのため、さまざまな外国人を「新たな人的資源」として掘り起こし、互いに理解・尊重しあえる多文化共生のまちづくりを目指していきたい。[B][N]

▲TOP