金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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仮想通貨の本当の取引所を

IIJ代表取締役社長  勝 栄二郎 氏

――御社について…。

 当社IIJは日本で初めてのインターネットプロバイダーとして設立した。1999年に米国ナスダック市場に上場、その後2005年に東京証券取引所マザーズに上場、2006年に東証一部に指定替えをした。基本的には、インターネット接続サービスの他、クラウド、セキュリティ、データセンターといったインターネット関連サービスを行っている。データセンターは、移動や増設が容易な「コンテナ型データセンター」を島根県松江市に置いている。最近の取り組みとしては、今後テレビのネット放送がすすむことを見据えて、昨年に民放各社との合弁会社を始め、国内向け動画配信事業を行っている。そして今年は、デジタル通貨の取引・決済を行う新会社「ディーカレット」を作った。いわゆる仮想通貨に関しては、世界的にその是非が議論されている。実際に日本やシンガポールでは投機としての取引は盛んだが、仮想通貨を使った決済はまだ進歩していない。

――現在、仮想通貨を使って本格的な決済を行っている会社はない…。

 今の仮想通貨は、主に投機の対象として扱われている。しかし、例えば、三菱東京UFJ銀行はMUFGコインというものを行内で既に使用しており、そういうものが普及していけば世の中はまた変わってくるのではないか。

――通貨のボラティリティが減ることで安定性が高くなれば、決済性も増えてくると…。

 銀行にとって最大のメリットは、現金を扱う量が減り、それに伴い色々なリスクも減る。その代わり、クレジット会社をはじめ、類似のサービスとの競合が起こる。また、銀行自体の手数料にも影響を与える可能性もあるだろう。一方で、消費者にとっては、手数料が減ったり、24時間365日決済がすぐ出来たり、さらに決済したい通貨を自由に選ぶことが出来るというメリットがある。

――しかし、その分、コインチェックで話題になったようなサイバーリスクも高くなるのではないか…。

 コインチェックのことに関しては、新聞等で読む限りいくつかの問題点があったと思う。先ずは、外からの攻撃に対するセキュリティが徹底していなかったことでウィルスに感染してしまったという事。もう一つは、口座をオンラインで直接つなげてしまっていた事。そして、内部事情を詳しく知っている訳ではないが、ガバナンス問題として、恐らくチェック体制がきちんとしていなかったであろう事。これらは金融機関や大手企業では当たり前にやっていることだ。IIJが今回、仮想通貨の取引と決済への取り組みを始めたのは、一つには我々がインターネットの専門である事と、もう一つはRaptorというFXのサービスを提供しており、FX業者のシステムを裏で支えているといった背景があるからだ。仮想通貨の取引はFXのシステムを応用できるし、我々がインターネットのセキュリティの専門であるという事も大きな強みになる。

――金融機関と御社が共同で取引所や決済システムを構築すれば、仮想通貨の信頼度も上がる…。

 G20で仮想通貨に使われた「暗号資産」という言葉は、「通貨ではない」という事を意味している。それを前提に、コミュニケでは日本基準をさらに進化させるとして、業者登録と、FATF(Financial Action Task Force)の国際基準をもとに、疑わしきものがあった時は報告する事、そして本人確認の3つを率先して行っている。そういう意味では、日本は仮想通貨の先進国になっている。また、仮想通貨そのものについては各国それぞれで立場が違うと思うが、仮想通貨を支えるブロックチェーンに関しては各国肯定的だ。すべての記録を残すブロックチェーンは証券や不動産など種々の取引でも使える。

――仮想通貨の取引・決済を担う新会社「ディーカレット」は、本当の取引所になるのか…。

 そうだ。今回設立した合弁会社ディーカレットの出資者には証券会社も一般企業も入っている。例えば配送業者は荷物を配達した時に、場合によっては現金支払いの時もあるだろう。そういった時のリスクを減らすためにも、現金を扱わないウォレット決済は便利だと思う。サービスの開始は2018年の下期を予定している。ポジションに関してはあまり大きくすることなく、他の取引所とも交流を保ちながらつなげていく取引所を目指す。そして、将来的には決済のほうに力を入れていきたいと考えている。

――仮想通貨の次となるテーマは…。

 仮想通貨でもまだやるべきことがたくさんあるが、日本で普及が始まったばかりのIoTには、今後、色々な展開が考えられる。IIJはフルMVNO、すなわち独自のSIM発行とSIMライフサイクル管理、他のネットワークとの接続を行うことによって、用途別に柔軟に使えるSIMを提供する。まさに多目的化するIoTの仕様にふさわしく、これを組み込んだIoTの実際のモデルを作っていきたい。

――社長としての目標は…。

 この会社はインターネットの老舗であり、常に新しいことにチャレンジするというのが社是だ。それに則って、走り続けていきたい。この5年ほどで社員数は2000人から3000人に増え、売り上げも毎年2桁で伸びている。もちろん先行投資が多いので営業利益がそれに伴わない場合もあるが、ネット社会の今の世の中で、着実に成長はしている。特に、日本社会全体はネットにおけるセキュリティが甘いと言われており、だからこそ我々のような会社の強みが必要だ。クラウドにしてもセキュリティは欠かせないものであり、デジタルコインも同様だ。もう一つ、格安モバイルサービスは、ネット業者としての特徴を活用して個人向けにも展開し、トップクラスのシェアを安定的に確保している。これからも新しいサービスを展開しながら、この会社を大きく伸ばし、社会に貢献していきたい。(了)

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