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「グローバリズム全体主義に対抗」

参政党代表
松田 学 氏

――「参政党」が結成されたのは2020年4月。その注目はネットから始まった…。

 松田 昨年12月、「参政党」は今夏の参議院選挙のため初の記者会見を行った。しかし、政党要件を満たさない政党はマスコミが報道しないため、情報源がテレビや新聞だけという人達の間ではあまり知られていなかった。参院選後に政党要件を満たしたことでようやく新聞やテレビが取り上げるようになり、「突然出てきた党」というイメージをお持ちの方も多いようだが、既に2年4カ月以上も前から活動している。参院選に向けて「参政党現象」が起こったが、これだけの熱量で人々が集う現象は日本社会で何かが起こっている証しでもある。それについての報道を封じていたマスメディアは、国民の知る権利を邪魔していたとすら言えるのではないか。ネット世代の若手記者たちの間では関心が高かったようだが、新聞もテレビも既得権益を守ろうとする圧力のもとに置かれているのかもしれない。当初、参政党の認知度向上で力を発揮してくれたのは、街頭演説で実際に我々の演説を聞いて、その熱量に注目し、街頭演説の様子を拡散してくれたユーチューバーたちだった。SNSで共鳴と感動が広がる過程を通じて、参政党は知る人ぞ知る存在となっていった。今年5月の政治資金パーティでは5000人以上の人が集まり、今夏の参議院選挙最終日には芝公園に1万人を超える人たちが街頭演説に集まった。選挙後も8月のパーティは7000人規模で盛り上がった。もはや選挙活動を超えて、歴史を変える瞬間に起こる一種の国民運動のようなものを感じている。

――結党の目的は…。

 松田 結党時に我々が掲げたキャッチコピーは「投票したい政党がないから自分たちで作ってみた」だ。今の日本で国民の政治離れが進み、投票率が低下しているのは、既存の政党に魅力がないからだ。そこで、ごく普通の一般国民が当たり前のように政治に参加できる、手作りの政党を作ろうと考えた。政治とは決して特殊な世界でもいかがわしいものでもない。成熟した民主主義社会では、日常の中に政治がある。新しい参加型の民主主義を日本に生み出すために、我々は結党した。もともと私は大学卒業後に大蔵省に入省した財務官僚だったが、グローバリズム勢力のもとで衰退の道を辿る日本国家の危機を痛感し、石原慎太郎氏や平沼武夫氏たちが立ち上げた「たちあがれ日本」の結党に加わって政界へ足を踏み入れた。この党は「太陽の党」への改名を経て日本維新の会と合流し、私も衆議院議員に当選したが、2014年の分党で「次世代の党」に移ることになる。結局、同党が結党してすぐに行われた同年12月の衆議院選挙で、党名の知名度の低さからほぼ全員が落選し、私も議席を失うことになったが、当時から感じていたのは、日本の国に立脚した国民国家を軸とする政治勢力と、党員たちが主体となって運営され、選挙も党員が担う、そして政治家は国政に専念するという形で営まれる「近代型政党」の必要性だった。

――維新の会との違いは…。

 松田 私が「維新の会」にいた頃からそうだったが、自治体の事業に外資を呼び込んででも効率を優先する姿勢は「国民国家」を軸とする考え方とは相容れないものを感じた。小泉構造改革もそうだが、多くの政治家たちが唱えた「改革」という言葉は何をもたらしたか。日本国民の賃金が上がらず、主要国の中で最も経済成長できなかったのが平成の30年ではなかったか。あたかもグローバリズムの手先のような政治を未だに指向しているのが維新ではないか。日本維新の会は保守だと誤解している人は多いが、次世代の党へと分党が起こったのも、憲法に対する考え方を始めとする国家観の欠如だった。そこは我々「参政党」とは根本的に異なる点だ。また、橋下氏は「近畿や名古屋は独立した方が良い」といった趣旨の発言をしたとも聞くが、「サイレント・インベージョン」という言葉が知られるようになっている現在の国際情勢のもとでは、安易な地方の自立が中国への身売りに繋がっていくという様な発想が維新の会にはない。実際にオーストラリアでは一つの州が勝手に中国と外交を行い、一帯一路に組み込まれそうになったという例もある。結局、オーストラリア国家はそれによって目覚めて、反中国になっていった。

――「自国に立脚した国民国家」とは…。

 松田 これからの政治の対立軸は、もはや「右か左か」ではない。世界を席巻している「グローバリズム全体主義」に対抗して、「自由社会を守る国民国家」という軸を打ち立てなければならない。これは世界的な潮流でもあり、健全なナショナリズムの台頭が各国でも起こっている。欧州ではEUグローバリズムに対抗して英国のEU離脱が起こり、米国ではトランプ現象が見られた。コロナパンデミックやウクライナ戦争も、各国の国民を苦しめているのはグローバルな利権であるという認識を広げている。日本でいち早く、こうした気付きを有権者に促したのが参政党だ。米国では、バイデン・グローバリスト勢力に対抗するかのように、次期中間選挙では共和党の勝利が予想されている。欧州ではイタリアで「五つ星運動」が政界の主流となっており、フランスでは今年の大統領選挙では「国民連合」のル・ペン党首が40%以上の得票率を獲得、ドイツに至っては「ドイツのための選択肢」が多数の議席を獲得している。いずれも、グローバリストが支配するマスメディアからは極右とのレッテル貼りがなされてきたが、各国の国民はそうではないことに気付き始めている。日本においてこの位置にあるのが我々の「参政党」だ。新しい国づくりの立脚点を、世界一の歴史を誇る日本国に置き、日本の建国理念である八紘一宇の「一つの家族世界の実現」の考え方に基づきながら、排外主義とは全く異なる「世界に大調和を生む国」を党の理念に掲げている。

――中国に対しては…。

 松田 今、日本では北海道ニセコや山形県蔵王などにもみられるように、あちこちで国土が中国系資本によって買い荒されている。選挙に向けて全国を回ってみて、このことへの危機感が国民の間に広がっていることを実感した。普通の主婦の方やお母さんたちが、このままでは子どもたちに日本を残せないという思いから、主体的に参政党に参画してくれている。自民党は、中国寄りとされる公明党と連立を組んでいるためか、中国利権におかされているからか、こうした国民の危機感に十分に応えられていない。もちろん自民党の中には我々と同じような国益重視の立場に立つ保守派の方々もいるが、党内では少数派であるため自民党全体の意思決定には反映されにくい。このままでは中国の属国になってしまうという危機感を持つ自民・公明の党員や支持者の中には、今回の選挙では参政党を支持したという人も多かった。

――経済政策についての考え方は…。

 松田 中国がデジタル人民元を開始し、世界共通のブロックチェーンの共通基盤を運営し始めた。これは、あまり注目されていないようだが、中国の世界覇権の切り札となるだろう。デジタル通貨は、スマートフォンは持っているが預金口座を持たないという、新興国や発展途上国の人たちにとって非常に便利なものになる。中国の影響力の強い国々から始まって、デジタル人民元を使用する人口が世界的に増えていく可能性がある。インターネット革命の次はブロックチェーン革命だと言われるように、近く、世界中のあらゆるサービスがブロックチェーンを使って展開される時代が来るだろう。そのとき、私たちは中国が運営する基盤の上で様々なサービスの提供を受け、お金の支払いまで行うことになっていいのか。当然、そこで懸念されることになるのが、デジタル通貨の発行元となる共通基盤を持つ中国に多くの個人情報が集中してしまうことだ。これはグローバリズム全体主義による究極のサイレント・インベージョンだともいえる。この点において参政党では、日本独自の国産ブロックチェーン基盤を創るべきだと主張しており、新たな財政や通貨の基盤として考えている「松田プラン」も、このことを前提にしている。米国でも、2020年の大統領選挙の不正を指摘する共和党系が、GAFAと言われる現在のグローバリストプラットフォーマーが支配するIT基盤とは異なる、信頼度の高いブロックチェーン基盤の開発に強い関心を示しているようだ。その辺りとの連携も考えられる。

――「松田プラン」とは、具体的に…。

 松田 今の日本では、供給面からインフレが起きたとしても需要面はデフレのままであるため、他国の様には利上げが出来ず、結局、デフレ体質からの脱却まで日銀が国債を買い続けなければならないだろう。金融政策に限界があることが見えた以上、市中マネーを増やすためには財政出動しか選択肢がないが、財務省が積極財政に踏み切り、日銀が国債購入を継続していくためには、別途、国債残高が減っていく道筋を作り、出口を示す必要がある。そこで、日銀が保有する五百数十兆円の国債が、政府が発行する「デジタル円」に転換されていく仕組みを創るのが「松田プラン」だ。このデジタル円は銀行が預金通貨や現金と両替して国民のスマホに入金する形で市中に流通していく。銀行は、このデジタル円を日銀から購入する。日銀は、これに応じて、自らが保有する国債を、政府から政府発行のデジタル円をもって償還してもらう形で取得する。こうして、日銀の資産として計上されていた国債はデジタル円に転換し、これを日銀が銀行に売却すれば、日銀のバランスシートは資産と負債(日銀当座預金)の両建てで縮小する。これは日銀にとっては、これまでの金融緩和策の円滑な出口にもなる。政府から見れば、これによって国債が税金で返済すべき借金ではなく、通貨に転換されるのであるから、その分、国債を増発して積極財政を行う道が開かれることになる。デジタル円を政府が発行すれば、政府はマイナンバーで個人情報のビッグデータを管理しているのであるから、このデジタル円は様々なプッシュ型行政サービスと結びつけられることになる。民間のサービスとも結びつければ、さらに便利なお金ということで、国民からのニーズも高まるだろう。急速に発展する情報技術を活用することで、これまでの通貨の概念自体が大きく変わっていくことになる。これを日本が先導することで、財政を立て直し、マネーの循環で経済を活性化するとともに、日本の国のまもりにも資するというのが「松田プラン」だ。

――今後、参政党をどのように発展させていくのか…。

 松田 参政党はすでに、全国の全ての都道府県に支部を置き、党員党友が10万人にのぼる組織を備えた政党になっている。今年7月の参院選挙では全選挙区に候補者を立てることができた。それも一般国民からの寄付金によってだった。今後は各支部が自発的に色々な活動を展開し、来年の統一地方選挙で多くの地方議員を生み出し、次の国政選挙に向けて党勢をさらに拡大させていきたい。現在のほとんどの政治家たちは、選挙に勝つことが仕事の「職業政治家」だ。そうではなく、前述の近代型政党としての参政党を発展させることによって、国政に専念する真の政治家を生み出すとともに、国民が投票だけでなく、国の政策形成にも参加できる新しい民主主義を日本に創っていきたい。(了)

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