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「CO2温暖化説はねつ造」

東京工業大学
地球生命研究所 主任研究者
丸山 茂徳 氏

――IPCCの試算は全くのデタラメだという…。

 丸山 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は大気中の温室効果ガスの増加が温暖化と異常気象を引き起こす原因であると断定しているが、それは誤りだ。IPCCは全球気候モデル(GCM)を使って気候変動を定量的に予測したと言っているが、これはでっちあげである。気候変動に関与する変数は極めて多く、全ての変数を定量化してモデルに組み込むことは不可能だ。そのためIPCCは、過去1300年間の樹木(中緯度だけ)の年輪幅(気温との相関関係)のデータだけを扱った。それらのデータは年代依存の規則性がないことから、彼らは、地球の平均気温は過去1300年間一定だったと見なした。一方、年輪幅以外の各種同位体や花粉学を駆使して、IPCCよりも遥かに精度良く再現してみせた古気候学の常識は、彼らからは明らかに無視されている。IPCCは、自分たちが導き出した、過去の気温は一定であるという話に一致するように、各種の変数を調整した。例えば、過去1300年間のCO₂、CH₄、N₂、H₂Oなどの温暖化ガス、あるいは雲量など寒冷化の要素を気温が一定になるように操作した。その上で、過去約130年間の要素のうち変化しているのはCO₂濃度だけだから、気温が0.8℃上昇したのはCO₂濃度が原因であると説明した。見かけは、たくさんの要素を入れた複雑な気候モデルに見えるが、中身はでたらめだ。これがGCMの実体だ。

――つまり、IPCCの予測はねつ造だと…。

 丸山 そもそも、過去約130年間の気温測定の結果、0.8℃上昇しているとしたことにも大きな問題がある。なぜなら大気気温の測定場所は、陸上の6000か所で測定したものだ。しかも測定場所は、ヒートアイランド効果の影響が強い大陸内部の都市内部にほぼ限られ、地球の3分の2を占める海上の気温は、わずかしか測定されていない。つまり、IPCCが示す地球平均気温自体に根本的な問題がある。しかも、IPCCは、過去約130年間で地球平均気温が0.8℃上昇したと主張する。もしそうであれば、海水準はいくらか上昇するはずだ。人工衛星による測定では、海水準が20cm上昇したとIPCCは主張しているが、1日2回の海面のメートル規模の潮汐変化を考えると、20cmというのは推定誤差の範囲だ。過去40万年間の海水準変化を解説すると、過去40万年間は、氷期・間氷期が4回繰り返した時代だ。氷期から間氷期になると、全球的に海水準は200mも上昇したことが分かっている。この時の気温は、大気上層(5~10km上空付近)で雲の凝結核ができた時の温度として、全球平均温度が北極と南極の氷床の酸素同位体から求められる。これは原理的には、赤道上空でも中緯度でも極域でも同じ温度だ。氷期(1万2千年前)から間氷期(1万年前)に移行した時期の気温は、約8℃上昇したことがわかっている。この気温変化によって、海水準は、海面下200mから現在の海水準レベル、つまり0mまで上昇した。このデータから、1℃当たりの気温上昇は25mの海水準上昇に対応することがわかる。IPCCは、過去130年間の0.8℃の気温上昇で海水準が20cm上昇したと説明したが、これは地球に残された記録とは全く異なっている。更に化石燃料消費を続けると、海抜ゼロメートル地帯にある世界の大都市、例えば、ニューヨークやロンドン、水の都ベネチアや東京などが水没すると言うが、そうした異常事態は見られない。大気中のCO2濃度に関して言えば、現在の400ppmに対し、白亜紀(8000万年前)は4000ppm(1ppm=0.0001%)、古生代石炭紀(3~4億年前)には2万ppm、更に6億年前には20万ppmだった時代がある。しかし、どの時代においても地球が金星のように高温化して全生物が消滅したという事実はない。にもかかわらず、気象学会が主張する異様な仮説を、何故、日本学術会議や世界科学者会議が異を唱えないのか。国民の税金で守られている科学者は、科学者としての社会的責任に何故答えられないのか、大きな問題だ。

――地球の気温を決めるのはCO₂ではないと…。

 丸山 デンマークの物理学者であるスベンスマルク(M.Svensmark)は、人工衛星による雲量のデータ(1980年~1995年)と地球平均気温、宇宙線照射量の3者の関係から低層雲と宇宙線量の間に明瞭な相関関係が見られることから、気温が雲の量で決まり、雲は宇宙線と太陽活動の比で決まるとする作業仮説を提案した。彼の人工衛星観測期間は、たった15年間だったので、我々は名古屋大学の研究グループ(北川氏)と、縄文杉の年輪毎の炭素同位体比を再測定して、過去2000年間の気温変化(¹³C)と宇宙線照射量(¹⁴C)、ガリレオの時代以降の太陽の黒点数観測からスベンスマルクの気候変動原理を検証し、それが正しいことを実証した。さらに、地球規模での深海掘削計画のコア(2000か所以上)に残された海洋表層の有孔虫の酸素同位体記録から全地球の海洋表層の気温変化を過去260万年に渡って追跡した。その結果、過去60万年間に渡って本格的な長い氷期と短い間氷期(1~2万年間)が繰り返していることが明白になった。かつて、氷期と間氷期の繰り返しは、ミランコビッチサイクルと呼ばれた天文学的なサイクルが原因であると説明されたことがあるが、ミランコビッチサイクルが存在しないことは近年の地質学の常識となっている。これは、後1万年間は寒冷化しないという考えが迷信だということを意味している。現在は間氷期にあるが、本格的寒冷化が目前に迫っている。異常気象はその前兆現象だ。そして、氷期と間氷期の繰り返しが宇宙線量の増減にあるとすれば、銀河の内部に散在する暗黒星雲に260万年前に太陽系が突入したとする作業仮説(天文学者によって提案されている)と調和する。暗黒星雲の中に存在する、宇宙線を吸収するダストと呼ばれる物質にムラがあることが原因で、地球に飛来する宇宙線量が増減し、地球温暖化と寒冷化が繰り返すと説明できるからだ。この仮説を検証することによって、気候変動予測が可能になるはずだ。科学の最前線は着実に進みつつあるが、その手法の鍵となっているのは、天文学から地球表層、さらにバイオスフェア(生物圏)までを包含する超学際科学だ。

――異常気象は本格的な寒冷化の前兆現象だ…。

 丸山 人類の過去の歴史においては、化石燃料を全く消費しなかった時代がある。つまり、人為起源の温室効果ガスの排出がほぼゼロだった時代だ。日本においては江戸時代に、干ばつなどの異常気象や寒冷化を背景に、寛永、元禄、亨保の時代に饑饉が頻発した。さらに時代を遡ると、中国では4~5世紀の五胡十六国の時代に、飢饉が頻発して政権が目まぐるしく交代した。そして、地球規模で民族大移動が起きた。ヨーロッパのゲルマン民族の大移動と西ローマ帝国の崩壊なども、その出発原因は異常気象だ。今日、異常気象は偏西風の蛇行や降雨量の増加によっても起きることが明らかになった。その原因は、温暖化ではなく寒冷化だ。寒冷化の予兆は異常気象であることも判明して久しい。

――異常気象の原因は温暖化ではないと…。

 丸山 寒冷化が本格化すると、最終的には、1万年前の気候に戻る。ただし、これは、たった1年で起きる変化ではない。過去1万2千年間の記録の精密な解読によると、段階的だが、急激な気温低下が間もなく起きるだろう。おそらく、地球平均気温が1~2℃低下するということが、約5回に渡って起きる。すると、平均して約40mの海水準低下が段階的に進行する筈だ。そして最終的にニューヨーク、サンフランシスコ、北海道、東京、北京、ヒマラヤ、イスタンブール、パリ、ロンドン以北は巨大な氷床に覆われる。カナダやロシアは厚い氷床に覆われるだろう。そしてこれらの地域の近代文明は崩壊する。このため、これを避けるには、どのような対策が必要になるだろうか。近代文明の驚異的な発展は化石燃料の指数関数的消費に依存している。化石燃料とは、全て生物の遺骸が半熟成したもので、地中に埋没している。それを掘り出したものが石油・石炭・天然ガスだ。これを使って、電気を造り、岩石から鉄とセメントを取り出して、鉄道、船、飛行機などの輸送システムを張り巡らせて、莫大な人口を収容する建造物を人類は大急ぎでつくった。

――近代文明は化石燃料を消費して発展した…。

 丸山 その起源となった化石燃料の起源はシンプルだ。独立栄養生物である植物が太陽エネルギーを利用して、水とCO₂、N₂から炭水化物をつくる。そして、遊離酸素を大気に出す。動物は大気の酸素を使って、食べた炭水化物を分解して無機的なCO₂やN₂、H₂Oに戻し、その時にでてくるエネルギーを運動エネルギーとして利用し活動しているが、もとを返せば、それは「太陽エネルギー」だ。ヒトの脳はそのエネルギーの3分の1を消費している。こうして、太陽エネルギーの関与だけで、炭素が無機CO₂と有機物の間で循環する。このような炭素循環は、極めて早く進行している。例えば、現在の大気中の400ppmの炭素は7年半で植物が全部を消費するほどの速度である。従って、大気中のCO₂濃度がコンスタントに400ppmあるということは、炭素を消費するとともに、新しく供給されているということになる。産業革命が始まった頃には、大気中のCO₂濃度は280ppmであり、植物が消費し炭水化物としたものを動物が消費する炭素循環であった。現在では、産業革命当時よりは大量に化石燃料を消費し、大気CO₂の濃度が少しずつ上昇してはいるが、炭素循環そのものは整然と機能し、地球システムの維持においては何ら問題がない。

――持続可能な社会の実現方法は…。

 丸山 近代文明の発明の原点は生物に学ぶことであった。生物は有機物の組み合わせで光、電気、鉱物を生み出し、Ca₂⁺イオンで情報伝達をする。生物は生態系を創り、宇宙からの強制力である宇宙線に応答して、バイオマスのサイズを膨縮させて地球環境を維持してきた。ヒトは、化石燃料消費によって新たな文明を構築して、グローバルなIoT社会を構築した。そして、全世界が地表のヒト1人の動きまで観察できるシステムを手にいれ、今ではロシアのウソのプロパガンダが丸見えの時代になった。ところが、頼みの化石燃料は無尽蔵にあるわけではない。やがて減少し始める。さらに、気候は寒冷化に向かう。寒冷化した世界では、地球全体のバイオマスが大きく縮小する「大量絶滅」が訪れる。このため、将来に向けて、化石燃料に替わるエネルギーを利用した、持続可能文明の構築が急がれる。政府は、2050年までに人工光合成によって全人類のエネルギー消費の3分の1を賄える水素社会を提案している。ところが政府は天然ガスや石炭から水素を分離して、残る莫大な炭素を地下貯留するという危険な技術を開発しようとしている。しかも、このやり方には莫大なエネルギーロスがある。日本ではIoT社会の完成に向けて、2030年までに発電量を現在の10倍にする必要がある。エネルギーロスを最小にとどめ、理想的な脱炭素社会を構築するには、新たな発想が必要だ。私は、生命の起源研究を通して、自然エネルギーだけを利用して水素を大量生産する方法を発見した。この水素と東工大の細野氏が発明した触媒を利用すればNH₃の現地合成工場ができる。これは人工光合成による高エネルギー有機物の第一次原料の生産に他ならない。このことは、ここから、第二次産業革命が新たな局面を迎えることを示している。(了)

丸山氏は、米スタンフォード大学などを経て1989年に東京大学助教授、1993年より東京工業大学教授などを務め現職。2000年に米国科学振興協会フェロー選出、2006年紫綬褒章受章、2014年には米国地質学会名誉フェローに選出された。

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