金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「データ活用に意識の醸成必要」

横浜市長
山中 竹春 氏

――市長を目指した背景は…。

 山中 これまでは研究者として、コロナに関する抗体や治療薬の研究をはじめ、横浜市における医療ビッグデータの分析やがんの治療薬の効果に関する研究など、データを用いてさまざまな医療福祉課題の解決に取り組んできた。そのなかで、横浜市政の状況を見ると、政策決定のプロセスがわかりにくいところがあると感じられる場面があったように受け止めていた。政策の検討から評価といったPDCAサイクルにデータを活かす試みはこれまでもあったが、さらに積極的に行うことで、透明性が高まるのではないか、新しい取り組みができるのではないか、それを行う余地があるのでないかと考えるようになっていった。そういった問題意識から、これまで私が培ってきた経験や専門性を横浜市が直面するさまざまな課題の解決に活かせられるのではないかと考え、一横浜市民として、横浜市の役に立ちたいと思いを抱き、立候補を決意した。

――データを活用して市政を透明化し、市民の声を吸い上げると。何か具体的なお考えは…。

 山中 データをどう活用するのかも重要だが、一方でデータをどうやって作り出すかという視点も重要だ。データを作り出すこと、つまりどういうデータをとれば良いかの判断には、課題に対する知識など現場力が必要だと考えている。課題を発見するためには、まずはどういうデータが必要かを考え、次にデータを集め、そして初めてデータ解析が可能になる。足りていないデータの収集や、あるいはデータの蓄積があっても十分に活用できていない部分があるほか、領域ごとに状況も違うため、これらをきちんと整理したうえで取り組んでいくことが重要だ。これにはまず、各部署の意識の醸成が必要だ。医療は比較的データ活用に取り組んできた分野ではあるが、データ化が進んでいない分野も多くある。課題を抽出して事業を進め、その成果をデータで評価し、次の事業につなげる。その一連の取り組みをシームレスに広げていきたい。

――コロナ対策の取り組みについては…。

 山中 8月に市長就任後、最優先課題として取り組んできた。9月に「横浜市新型コロナウイルス感染症対策 加速化プラン」を発表し、ワクチン接種の加速化と医療提供体制の拡充を進めてきた。ワクチン接種は進ちょくしてきたが、年代別の接種率を見ると、10代から30代までの若者世代の接種率が他の年代よりも低い状況にある。そこで若い世代を中心に、さらに多くの方にワクチン接種を検討していただくため、横浜商工会議所や横浜市商店街総連合会と連携し、まちぐるみで「ワクチンplusキャンペーン」を展開している。キャンペーンを通じて接種に対するインセンティブを提供することで、接種率のさらなる向上を図り、さまざまな理由でワクチンを打つことができない方への感染防止、そして経済との両立につなげていく。また、「第6波」に向けた対策として、12月1日に、軽症、中等症Ⅰの方の早期治療を専門的に行うコロナ専門病院を開設した。陽性患者の病床は、685床(9月1日時点)から、コロナ専門病院も含め826床(12月1日時点)に拡充した。また、医師の診察が必要と判断された自宅療養者の方に、オンライン診療や往診等を行う仕組みを創設するなど、更なる医療提供体制の拡充を進めている。3回目のワクチン接種に向けては、スムーズに予約できるよう改善を図る。いつでも簡単に接種場所と空き情報を市のウェブサイトで検索できるようにし、市で受付する予約枠を増やすとともに、各区役所の相談員を36人から90人に増員し、代行予約にも対応していく。

――国内も徐々に経済が再開してきている…。

 山中 飲食店の人数・利用時間制限や、イベント人数上限が緩和され、感染状況も落ち着いていることから、まちには賑わいも戻りつつある。企業や商店街の方々からは、「緊急事態宣言が解除され、徐々に客足が戻ってきている」といった声や「一見のお客さんは戻りつつあるが、固定客が戻らない」といった声など、さまざまな声が聞かれている。市内経済や観光は回復の兆しが見えつつあるが、長期間のコロナ禍で多くの事業者が厳しい状況にあるというのが現状だ。10月には、昨年12月より一時停止していた、「宿泊旅行商品へのクーポン付与」および「助成付き日帰り旅行商品の企画・販売」により横浜への旅行需要喚起を図る観光キャンペーンを再開した。また、「安全・安心な横浜MICE開催支援助成金」を引き続き実施し、「新しい生活様式」に対応したMICEを開催する主催者を支援することで、市内経済活性化を図る。12月1日からは、レシート記載の利用金額に応じてポイント還元を受けられる「レシ活チャレンジ」(レシートを活用した市内飲食店利用促進事業)を実施し、厳しい経営状況にある飲食店の支援も進めている。今後も、長引くコロナ禍で厳しい状況にある事業者の方々にしっかりと寄り添い、必要な対策をスピーディに進めていく。

――少子高齢化のなか、今後どのように財政運営を行っていくお考えか…。

 山中 少子高齢化による生産年齢人口の減少による税収減や社会保障費の増大は、ほかの自治体と同じく、横浜市においても、財政運営上の大きな課題となっている。横浜市は財政責任条例を策定し、これまでも中期4カ年計画に基づいて、計画的な市債の活用を図りながら一般会計が対応する借入金残高を適切に管理するという目標を設定し、その進ちょく状況を明らかにするなどして、将来世代に過度な負担を残さない持続可能な財政運営に向けて取り組んできた。しかし、昨年度公表した長期財政推計では、財政が危機的な状況にあることが明らかになった。横浜市においても、このまま進めば65年度には収支差がマイナス2166億円になる可能性があり、こういう状況に対応していく必要がある。持続可能な財政運営を進めるため、優先度を見極め、より効果の高い事業に重点化していく。また、今後の市政運営の土台になる中長期の財政ビジョンや、歳出改革や新たな組織改革などを進めるための行政運営ビジョンの策定に着手している。市債活用の方向性を含めた債務管理、それから構造的な収支不足の解消策、適正な公共施設のあり方、こういったことをきちんとビジョンのなかで明らかにし、今後こういう方針で財政運営していくという中長期的な指針にする。容易ではないが、横浜市としても少子高齢化のなかで、新たな課題に対応する財源を確保するため、財政運営にしっかり取り組んでいく。

――市長としての今後の抱負などは…。

 山中 コロナ対策、そして横浜経済の回復の両立が最優先の課題だ。まずはコロナ対策として、ワクチンの3回目接種を円滑かつ着実に実施するとともに、医療提供体制も更に充実させていきたい。同時に、市民・事業者の方々への支援、観光MICEの振興や脱炭素化を軸とする新たなビジネスの創出などで、横浜の活力を生み出す市内経済の力強い回復を後押ししていくことが重要だと考えている。併せて、誰もが自分らしさを発揮し、いきいきと安心して暮らすことができるまちの実現に向け、子育て、教育、医療、介護や福祉分野の政策をさらに充実させていく。デジタル化を推進し、市民サービスの向上や働きやすい環境づくりにつなげていきたい。また、激甚化する自然災害への備えも重要で、引き続き、防災・減災対策、都市基盤の整備も着実に推進する。都心臨海部は横浜港の国際競争力強化、横浜駅周辺やみなとみらい21地区、関内・関外地区などの機能強化を加速させるとともに、郊外部の活性化に向けて、27年の国際園芸博覧会開催の準備などを進めていく。こういったことを通じて、市民の皆様に「住み続けたい」と思っていただける横浜、事業者の皆様から選ばれる横浜を創っていくために、誠心誠意、市政運営に力を尽くしていきたい。(H)

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