金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「中国の情報工作が日本に浸透」

ジャーナリスト
櫻井 よしこ 氏

――日本の現状をどう考えるか…。

 櫻井 昨今の日本国内の政治の状況を見ると、日本の国益第一で行われているわけではないことを感じる。とりわけ公明党を中心に、中国への配慮が強く、その公明党に引っ張られる形で自民党も対中政策において本来のあるべき姿よりずっと融和的になっている。それは日本だけではなく、どこの国も同じで、経済界が目先の利益に引っ張られるあまり、国益が置き去られている。歴史を見ても世界の現況を見てもそのような傾向は強い。一方で経済安全保障という言葉が使われているように、経済も安全保障の観点から見てきちんと戦略を考えないといけない時代になっている。日本の経済界が十分に対応できているか、疑問に思う。世界の現実に対応できていないという意味で、日本の特異性を象徴するのが、例えば日本学術会議だ。日本学術会議に象徴される学術・研究の世界はどう考えても左翼系の人々に中心を握られている。中国問題の専門家は中国政府や共産党に気兼ねをしつつ研究しているというのが色濃く表れている。政界、経済界、学会、言論界においても非常に中国の浸透工作を受けている現状がある。もちろんそうでない部分もあり、政治家も全員が中国に融和的であるとは思わないし、学会や言論界でも全員が親中で言うべきことを言っていないということではないが、全体的な傾向として多くの国民が思っているより遙かに深く中国の勢力に浸透されている状況は否めない。

――5月に『赤い日本』(産経新聞出版)を出版された…。

 櫻井 『赤い日本』は、言論テレビという私が毎週行っているネットで配信するテレビ番組での議論をまとめたもので、書いてあることより実態はさらに厳しいと思う。米国が、中国は新疆ウイグル自治区でジェノサイド(大量虐殺)を行っていると認定したなかで、日本国は国会も政府も非難の声さえ発していない。なぜわが国は中国非難の声を上げられないのか。日本全体が私たちの考える以上に中国共産党の情報工作に浸透されているということ、日本が敗戦後ずっと日本は悪かったんだという自己否定の思想につかっていることなどが要因として考えられる。憲法改正が全くできていないことも含めて、未だに自分の国は自力で守るというコンセンサスが形成されていない危機感を持っている。

――ロシアがハイブリッド戦争でクリミアのウクライナを併合し、日本も中国にハイブリッド戦争で侵略される恐れがある…。

 櫻井 既にそのような兆候は出ている。例えば沖縄と尖閣諸島に対して一番効果的なのは、ハイブリッド戦争を仕掛けて軍隊を動かすことなく沖縄を混乱させ、中国のものにしてしまうことだ。これは中国が色々描いているシナリオのうちの1つで、中国はそのような能力を十分に持っている。それに対応するわが国の能力は極めて低い。こうした状況が目の前にあるということを国民は知らなければならない。

――なぜ政府は中国船の尖閣居座りに抗議しないのかという疑問が国民には強い…。

 櫻井 日本国内は今コロナウイルス対策に関心が集中しているし、そのようななかでオリンピックに次いでパラリンピックを開くことがどうなのかという議論も盛んに行われている。もちろんそういった議論も大切だが、もう1つ大切なことは日本国が安全保障上どのような危機的状況に置かれているか認識することだ。国民に広報して情報を提供して、国民と危機感を共有することが大切だ。危機感を共有して初めて、ではどのような対策を取ったらいいのかという議論が生まれてくる。危機感の共有という大きな枠組みが作られていない。

――大新聞など日本のマスコミも中国のハイブリッド戦争の片棒を担いでいる…。

 櫻井 韓国の例でいうと、今の文政権は、マスコミに対する締め付けをやっている。文政権はむしろ、基本的に北朝鮮や中国に融和的で、自分の政権で行ってきたことが韓国の国益にならず、反対に中国と北朝鮮のためになるような政策を行ってきた。そもそも文政権は左翼路線で、その文政権がマスコミを取り締まっているから日本も取り締まるべきだというとそれは違う。日本の問題は、朝日や毎日、東京中日、沖縄タイムズや琉球新報などが、非常に偏った、事実でない報道をしていることだ。これに対して、読者としての国民がきっちり見て判断する必要があるし、メディアウオッチのような組織が国内で育っていくことが求められる。アメリカでは他のメディアがどのような報道をしたか調査し、それが正しかったかどうか判断するNPO法人がある。その人達が果敢に発表していくし、他社からのチェックもあり気が抜けない。日本でも紙媒体は部数が落ちていて、数年以内には影響力はもっと落ちていくと言われている。これに代わりネット媒体における情報提供が進んでいるが、ネット媒体においても左翼的な情報があふれている。日本に強い保守のメディアが育っていないことが心配だ。

――日本経済新聞でも中国リスクを警戒した記事が増えてきた…。

 櫻井 日本経済新聞が親中から反中になったと決めつけるのは間違っている。どの記事がどうなのかという視点で見ることが大切だ。中国に対して友好的かという点以外でも、再生可能エネルギー重視が日本にどういう影響を及ぼすかということも考えるべきだ。再生可能エネルギー重視で全ての問題が片付くわけではない。再生可能エネルギーだけを重視して原子力発電や火力発電を排除していけば、日本の産業は弱体化する。日経新聞は経済を専門とする新聞でありながら、再生可能エネルギーを推進するばかりで、その論調は偏っていると感じる。

――太陽光パネルは原材料の多くが中国産であることなど、SDGsや経済安保の観点から見ると相当疑問が生じる…。

 櫻井 国土面積にどれだけ太陽光パネルが敷き詰められているかを考えると、日本は面積当たりの比率でいうとアメリカや中国より高く、世界一の太陽光パネル設置国だ。日本は国土の7割が森林で、平地がアメリカや中国に比べて非常に少ない。それにもかかわらず国土の割合から見た太陽光パネル設置の度合いが世界一ということは、相当無理をして太陽光パネルを既に敷いている。しかし、小泉進次郎氏などは原発ゼロを目指し、そのうえ、原発20基分に匹敵する太陽光パネルを敷くことを目指し、菅首相は事実上それを応援している。そのことが日本の国土の活用として本当に正しいことなのか、産業政策として、電力政策として正しいのか強い疑問を抱いている。

――中国が覇権国家としての側面を出してきている現状では、長期的な目線で経済戦略を立てる必要がある…。

 櫻井 経済安全保障がどのような意味を持つのかを、経済界も政府ももっと真剣に考えないといけない。また、欧米では経済活動においての人権問題が非常に強く言われているが、これに対し日本は人権に対する配慮が十分になされていないと思う。このような姿勢が通用しないことはユニクロ問題を見れば明らかだ。世界の流れを良く見ながら、その流れを取り込んで日本の国益につなげるには、普遍的な価値観である人権に十分に配慮しなければならない。日本が中国に遠慮してものを言えないという日本独特の時代にそぐわない考え方や姿勢があるが、これを貫くことは、国益に反しているし、時代錯誤も甚だしい。(了)

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