日本維新の会
幹事長 衆議院議員
馬場 伸幸 氏
――日本維新の会では、この度「日本大改革プラン」を発表された。その狙いは…。
馬場 日本は課題が山積しており、根本的な解決策がなければ立ち行かないという事はもはや政治家以外の一般国民でさえ気付いている。自民党は戦後、長らく政権を担当し、これまで何か不都合なことが起これば前例慣例で取り繕うというような事を繰り返してきた。しかし、今回のコロナ禍が決定打となり、このままではいけないという意識が永田町や霞が関以外の国民間に芽生えてきた。政策的な部分でも、抜本的な大改革が行われずにつぎはぎを続けていては、日本は沈んでしまう。また、これまで色々な議論が行われてきたが、スポット的に法律を改正してきたため整合性も取れなくなっている。その辺りをすべてひとつにまとめようと考え抜いた案が、今回、日本維新の会が掲げる「日本大改革プラン」だ。このプランは経済成長と格差社会の解消をコンセプトにしている。税制改革、社会保障改革、成長戦略を三本柱に、パッケージでの抜本改革を行っていくというものだ。
――タイトルはアベノミクスと同じようだが、その中身は…。
馬場 アベノミクス時の「税と社会保障の一体改革」は、今振り返ると消費税を上げるためだけに作られた理屈であり、何ひとつ一体改革にはなっていなかった。「安心安全の100年プラン」といっても、100年安心なのは制度だけで、国民の生活ではない。実際に100年後の社会制度の目途は全く立っていないままだ。一方、我々の「日本大改革プラン」では一体的な改革を抜本的に行うために、税制のありとあらゆる部分を見直していく。「フローからストックへ」をスローガンに、消費税に関しては、今のコロナ禍が続くようであれば5%に引き下げ、パンデミックが収束したら8%にする。所得税については年収700万円未満を10%、700万円以上を20%の課税率にする。現在の日本は累進課税となっているが、実際には大金持ちになれば課税率は事実上、下がっていく。各種控除などもすべて排除して年収700万円を境に2つのシンプルな形の課税制度を取り入れることで、いわゆる超富裕層からもっと徴収していくという政策だ。同時に法人税や相続税、贈与税に関しても減税していく。
――所得税率も法人税率も下げていくとなると、財源はどこで確保するのか…。
馬場 税制の改革によって27兆円が生み出される試算となっている。このプランでは相続税や贈与税も廃止していく計画だが、実際に相続税がかかるほどの土地や資産を保有する方々は、例えば相続税対策として故意に借金をしてマンションやテナントビル等を建てている。そうであれば相続税を廃止し、代わりに収益性のある固定資産で、現在の特例措置を廃止して本来の標準税率に近づけていく。それによって10兆円程度の財源は確保される。また、基礎年金や生活保護、児童手当などの社会保障もすべて廃止する。生活保護が必要な方で実際に給付が受けられているのは2~3割程度というのが現状だ。中には偽装離婚などで詐欺申請が行われているようなケースもある。何より今の生活保護制度はチャレンジするための支援になっておらず、生活保護を支給することで勤労意欲を失うというようなことも懸念されている。そうであれば廃止した方が良い。児童手当については微々たる金額だが、対象者が多いため年間2兆円で生活保護費とほぼ同じ金額になっている。こういった制度をすべて廃止して、代わりに国民一人当たり月6万円の最低所得補償(ベーシックインカム)を導入するというのが「日本大改革プラン」の肝だ。複雑極まりない税制措置を国民の皆様に分かりやすいシンプルな税制にすることで、脱法的な節税スキームが排除されるとともに、税務署など非効率な行政コストの削減も期待できる。
――6万円では家賃を払ったら生活できない…。
馬場 日本の人口は減少方向にあり、公営住宅にも空きが多くなっている。そこで、憲法との兼ね合いもあるが、ベーシックインカム6万円以外の補償として、そういった公営住宅を無料で利用できるようなシステムを作っていく。ベーシックインカムと住居があり、しかもその他で働いて得た収入はそのまま自分のものになる。生活保護費と異なり、収入によってベーシックインカムが減額されることもない。そうなれば、もっと働こうというチャレンジ精神も出てくるだろう。
――ベーシックインカムの財源年間約100兆円を、所得減税や法人減税、社会保障の撤廃だけで本当に捻出できるのか…。
馬場 今の所得税制度には色々な控除がある。そういった控除をすべてなくして代わりにベーシックインカムの6万円を給付すると考えれば、所得税減税の分は差し引きゼロになる計算だ。さらに言うと、ベーシックインカムの分は課税されないため、例えば年収500万円の人は課税率10%で50万円の所得税が徴収されるが、ベーシックインカムが年間72万円あれば差し引き22万円分手取りが増えることになる。配偶者控除などもなくせば、103万円の壁で無理に仕事量を調整しようというような動きもなくなるだろう。女性の社会進出という意味でもプラスに働くこの「日本大改革プラン」は、日本維新の会が政権政党になれば必ず実現させる公約だ。
――抵抗勢力の想定は…。
馬場 最大の抵抗勢力は大改革を良しとしない行政組織だろう。この大改革によって、今、行政が手掛けている仕事は大幅に減っていくことになる。例えば、税務署の職員や生活保護の手続きを行っているような部署は大幅に簡素化されるだろう。そういった部分から生み出される財源は約20兆円を見込んでいる。単純な数字に表せば、税制関係で約30兆円、社会保障関係で約30兆円、行財政改革などで約20兆円を見込んでいる。さらに、ベーシックインカムによる可処分所得の増加によってGDPの6割を占める個人消費が刺激され、経済が活性化し、税収増へとつながっていく。それを毎年積み重ねていくことで、右肩上がりの経済成長が期待される。もちろん最初の5年程度は赤字国債の発行が必要かもしれないが、その後はプラスの数字となっていくだろう。
――日本国民の可処分所得は低下している。この現状をきちんと国民に伝えて現状を打破していかなければならない…。
馬場 例えば大阪府では、維新の会が過半数の議席を預かった時の選挙で「議員数2割カット、議員報酬3割カット」を公約に掲げ、実際に実現させた。それが大阪府民に信頼感を与え、役所で働く公務員にもその本気度が伝わった。その流れで行財政改革が一気に進んだという成功体験がある。国会においては、衆議院議員465人、参議院議員245人、計710人の議員のうち実際に仕事をしているのは50人程度だ。3割程度のカットは可能だろう。日本維新の会が掲げる「税金は国民皆さんからお預かりしているものであり、それを一円も無駄にせずに納税者の皆様にリターンしていく」という政策信念のもと、「日本大改革プラン」を何としても実現させていきたい。この計画を実現させるため、日本維新の会が政権政党になるためには、国民の皆様の一票が欠かせない。歴史を変えるのは民の力だ。(了)