金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

「未公開株式の投資に注力」

大和企業投資 取締役会長
大和PIパートナーズ 代表取締役会長兼社長
赤井 雄一 氏

――大和グループの投資部門を統括されている。投資部門の投資額は…。

 赤井 大まかに言って3400億円だ。私が直接統括をしている未公開株、金銭債権、不動産に投資をする大和PIパートナーズで1400億円ほど、ベンチャー投資をする大和企業投資で運用中のファンドの合計額が800億円ほどある。それに加えて子会社として管理をしている大和エナジー・インフラは太陽光等の再生可能エネルギーや内外のインフラ関連投資を行っており、1200億円ほどの投資額がある。

――一口に投資部門と言っても色々な投資をされている…。

 赤井 もともとはベンチャー投資を行っていて、以前は上場もしてNIFと呼ばれていた大和企業投資と金銭債権投資を行っていた大和PIがそれぞれ独自に業務拡大を行ってきたと理解している。その後、それぞれの会社が国内や海外の未公開株投資に活動領域を広げていったが、所謂PE(Private Equity)投資と言われる未公開株式投資部門は統合した。また、もともと太陽光発電に投資していた大和PIの部門を大和エナジー・インフラとして独立させて、インフラ投資専門の会社を設立している。ブラックストーンやKKR等の海外のトップファンドは、PE投資、ベンチャー投資、不良債権投資、インフラ投資、不動産投資をそれぞれ専門のファンドを立ち上げて網羅しているが、我々も規模こそ違うが多彩な投資ポートフォリオを組んでいる。これは他の国内ファンドにはない特徴だと考えていて、ノウハウの共有に限って言っても、エクイティと債権を両方理解出来る人材はスペシャルシチュエーションでは貴重だし、そもそも色々な投資スタイルを経験すること自体が能力を高めていくので部門間の人事交流は結構活発に行っている。

――ベンチャーファンドに対する考え方は…。

 赤井 ベンチャーファンドは先ずしっかりLP(Limited Partner)から出資を募ることが必要だ。また、通常ファンドの運用期間は10年なので長期的な視点が必要となる。LPからファンドの出資を募るにはファンドのトラックレコードと投資を実行するキャピタリストの能力をいかに投資家に訴求していくかがポイントだ。昔はファンドの出資金を集める人とファンドで投資をする人が分かれていたが、今は投資家がキャピタリストと直接対話をしてファンドへの出資を判断するようになっている。ベンチャーファンドに関しては過去銀行と別れたあとに一度仕切り直しをした状態から初めており、基幹となるファンドがやっと2号ファンドとして投資を始めている。基幹ファンドの中でユニークなのは日台バイオファンドで、現在2号ファンドの募集中だが、すでに140億円程度集まっている。これは日本と台湾の創薬ベンチャーのみに出資をするファンドで、我が国でこの手のものでは最大規模だと自負している。

――PE投資について…。

 赤井 未公開企業に投資をするPE投資は事業承継や大企業のカーブアウト案件に投資をしている。また、アジアの未公開企業にも出資をしている。国内で12社程度出資しているが、今はポートフォリオを構築している過程だ。来年ぐらいからいくつかエグジットをしていく。エグジットはIPOを想定しているものが多い。これは公開ノウハウの蓄積があるグループのメリットが生きていると思う。コロナの影響を受けているポートフォリオ企業もあるが、逆に企業体質強化をする良い機会だと捉えている。また、バリューアップの為、ロールアップ(同業会社の買収)も行っている投資先もあり、ポートフォリオ企業同士でシナジーを生かすスキームも考えている。PE投資はアップサイドを狙えるビジネスだと思っている。

――バルク投資はかなり業歴が長いと聞くが…。

 赤井 金銭債権投資は、金融機関の不良債権に投資するバルク投資とスペシャルシチュエーションの債権や不動産に投資をしている。バルク投資は業界の草分け的存在であり、リーダー的存在だとも自負している。メガバンクと地銀を中心に、全国の金融機関のほとんどと取引がある。また、子会社に債権の回収実務をするサービサーを持っており効率的な債権回収が出来ている。ここは安定的な収益が上がる。

――今後特に力を入れたい分野は…。

 赤井 今後特に未公開株式投資に力を入れていきたい。前任の投資銀行本部長の時に未公開企業に投資をするプライベートエクイティマーケットが伸びていることは認識をしていたが、実際にこちらで投資委員会にどんどん持ちこまれる案件を見てその成長を肌で感じている。特に事業承継等で対象企業がカタカナや英語に苦手意識を持たれる方も多く、「大和」というブランドはお客様に信頼感と安心感を与えるものだと感じている。全国に跨るグループのネットワークも生かしてマーケットの成長を捉えて魅力的な案件を発掘していきたい。

――今後の課題と抱負は…。

 赤井 投資部門であるから投資収益を追求するのが使命だ。ここには徹底的に拘りたい。また、投資した金額に対するリターンの意識ももっと高めていく。その為により投資のサイクルを循環させていくことは必要だ。そして、投資規模をより拡大して国内で活躍しているトップティアのファンドと肩を並べたい。より規模を拡大してリターンを追求していくにはベンチャーファンド以外でもファンド化をしていく必要がある。PE投資は成長分野だと位置づけて積極的に取り組みたい。事業承継や企業のカーブアウト等社会問題の解決や企業の成長に資する投資を行っていく。また、ポストコロナで金融機関の不良債権処理に関しても役割を果たしていきたい。さらに、ベンチャー投資先には将来の楽しみな投資先が多数あり、社会にインパクトのある有力公開企業を育てていきたい。この点、海外投資に関しては現地での知見とネットワークを持つパートナーと組むことも考えている。すでに、中国とベトナムでは現地の有力パートナーと組んで実際にファンド運営を行っている。グループのアジア戦略に資するパートナーを探していきたい。(了)

▲TOP