金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「FX、貯蓄から投資の流れの中で重要に」

セントラル短資FX
代表取締役社長
松田 邦夫 氏

――社長に就任して約1カ月になるが、現在のFX市場の環境をどう見ているか…。

 松田 店頭FX会社の取引高は6月は月間で532兆円となり、10数年前にFX市場が設立されて以降で最高となった。昨年6月は153兆円だったから、1年で約3.5倍にも拡大している。アベノミクスや日銀の異次元緩和、さらに米FRBや各国の金融政策を巡る色々な思惑によって相場が動くようになった今の状況は、投資家に大きな収益機会をもたらしている。ただ、FX業者の多くは収益的には総じて取引量の伸びほどは潤っていないものと思われる。

――それだけ取引高が膨らみながら収益が上がらない理由は何か…。

 松田 業者間の激しい値下げ競争の影響が尾を引いているからだ。当社はドル円のスプレッド(売値と買値の差)を1銭でご提供しているが、業界では昨年来、安値攻勢による取引獲得を目指して、我々の3分の1以下までスプレッドを縮小する先が増えてきた。このため、各社とも取引量は増えても利鞘の縮小でかなりの程度帳消しになっている面がある。しかも、最近では為替相場の変動が激しくなったことでFX業者のカバー先である金融機関の対応・条件が総じて保守的となっているため、利鞘面ではさらに厳しくなっている面もある。

――そうした値下げ競争の流れは今後も変わらないのか…。

 松田 最近では、昨年来の流れに逆行するかたちで、スプレッドを拡大する業者も出てきており、潮の流れは変わりつつあるのではないかと感じている。何をもって「正常化」というかは難しいが、これまでの動きに「行き過ぎ感」ないし「経済不合理性」が少なからずあったと再認識されているのではないか。当社は行き過ぎたスプレッド縮小競争からはなるべく距離を置いて、市場での実勢や流動性に照らして適正と考えられるスプレッドを提供しつつ、サービスの質全体を向上させることを目指してきた。おかげさまで、ここにきて当社の取引量も、個人、法人いずれについても大きく増加しており、当社の地道でオーソドックスな経営スタイルがお客様に改めて受け入れられたのではないかと思っている。すなわち、当社はセントラル短資という、インターバンク市場で100年余の歴史を持つグループの一員として、豊富な知識、経験、ノウハウ、ネットワークを持つ数多くのプロフェショナルと信頼を有することから、「クオリティFX」の名のもと、質の高いFX取引を提供することを社是としている。

――FXにおける「クオリティ」とは具体的に何を意味するか…。

 松田 ひとつは、取引システムが安定的に稼働しているか、処理速度が十分速いか、パソコンだけでなく携帯、スマートフォン、タブレット等様々な取引ツールで取引できるかといった快適性の問題だ。今はパソコン画面で取引している人のウェイトは2割台に落ちてきており、携帯やスマートフォン等の比率が4~5割まで上がってきている。それに合わせた対応も欠かせない。次にFXのバラエティの豊富さだが、例えば当社は昨年7月に本邦で初めて人民元/円のFXの取り扱いを始めた。当然その後他社も追随してきているので、「次はどんな魅力的な通貨をご提供しようか」と常に考えている。さらに、お客様にご提供するスワップポイント(通貨の金利差等に応じて顧客との間で受取・支払が行われる調整額)についても、どれだけ有利なポイントを還元できるかはFX会社のスキルによって変わってくる。人民元や南アフリカランドといった高金利が魅力の通貨はもとより、多くの通貨について魅力的な条件を提供したい。このように、比較的中長期の外貨投資を目指すお客様にもご満足頂けるサービスの提供にも注力している。この点も他社と比べて際立っている点ではないかと思う。

――格付も取得している…。

 松田 日本格付研究所(JCR)から厳格な審査を受けて、投資適格であるBBBの格付を取得している。同業者の中で格付を取得しているのは3社程度かと思うが、おかげさまでそうした信頼感・安心感からか、各方面から業界の動向、あり方等についてコメントや意見を求められることも多い。信頼をさらに高めるため、ウェブ画面も見やすく使いやすく、かつ内容豊富で正確でタイムリーなものにするよう務めている。こうした点を総合的に見ていただくと、他社とはちょっと違うな、と思っていただけるのではないか。金融以外の業種からFXに入った会社も多い中で、専業のFX業者として今年で創業12年目に入った。動きの激しい当業界では、十分に「老舗」とご認識いただいているのではないかと思う。

――現在、何種類の通貨取引を提供しているのか…。

 松田 当社では現在、24種類の豊富な通貨ペアを取り扱っている。主力の米ドルと円のほか、オーストラリアドルと円、南アフリカランドと円の組み合わせの人気が高い。元々為替レートに関心が高い国民性だが、自身の会社や海外旅行等での経験、知識を総動員して様々なパターンの取引が出来るFXは、若い人にもリタイアされた中高年の方々にも魅力的な知的投資商品だと思う。何より外国為替市場はインサイダー性や相場操縦などからは縁遠い世界であるため、透明性が非常に高い。因みに、同じ外貨商品である外貨預金と比べてみると、扱う通貨の種類はFXの方がはるかに多い。また、仮にFX取引でレバレッジを1倍にすると外貨預金とほぼ同じ商品性となるが、手数料はFXの方が大幅に有利だ。しかもFXでは期間も自由に決められるし、いつでも終了できる。こうした魅力も是非アピールしていきたい。

――日本では、「貯蓄から投資へ」と言われて久しいが、FXとの関係は…。

 松田 金融資産の蓄積・多様化が進み、金融リテラシーが高まる中では、今後も貯蓄から投資への流れが続くことは間違いないだろう。さらに今後、物価が本格的に上昇し始めれば、預金金利の引き上げはどうしても遅れがちになることが予想される。そうした中で、これまでの低金利での預金運用中心でいいのか、という問題意識は個人投資家の間で出てくるだろう。また、株式市場が息を吹き返したのを見て、「貯蓄(貯金)しておくよりも株など(投資)を買う方が魅力」と考える人が多くなってくるのも自然なことだ。実際、株とFXの両方を扱っておられる業者では、相乗的な効果も出ている。

――顧客年齢層は…。

 松田 一番多いのは30~40歳代だが、50歳代以上もかなりおられる。当社では現在、一定の売買プログラム(ストラテジ)に従って機械が自動的に売買してくれる「システムトレード」の拡充に力を入れているが、その使い方をご説明するためのセミナーに、かなりシニアなお客様にもご参加いただいた。幅広い年齢層の方が最新の取引手法に関心を持っていいただいていることを改めて認識した。システムトレードに関しては、1~2年前までは、自分で本を読み、自分でストラテジ(売買プログラム)を組んで、どのようなシグナルを出させるか自分で指示するというように、すべて自分で作るのが一般的な姿だった。今は、優れたストラテジをFX業者に提供する会社がある。当社もイスラエルのトレーデンシーという会社から、世界中のストラテジ・プロバイダー(提供者)が作った様々なストラテジを厳選して提供してもらっている。我々はその中から高いパフォーマンスを上げているものをランキングしてお客様にお示ししている。お客様はさらにそれを自分なりに組み合わせて、独自の「ポートフォリオ」を作ることもできる。

――システムトレードのメリットは…。

 松田 第1に、世界で実績のある多数の優秀なストラテジの中から自分に合ったものを自由に選べること。第2に、パソコンが自動的に24時間トレードしてくれるので、パソコン画面にずっと張り付いている必要がないこと。第3に、例えば買った後、想定外に相場が下がり続けた時など、自分で取引している場合は損切りに踏み切れずに損失が増えてしまうことがあるが、システムトレードではストラテジに沿って売買されるため、こうした事態も防げること。新しいタイプのシステムトレードは、今日本で人気が高まっている。

――世界経済に与える影響も徐々に高まってきている…。

 松田 FX取引の規模は世界でも日本が最大であり、東京市場の外国為替取引の大半がFX取引に絡む取引だと言われている。足元は短期売買が膨らんでいることで押し上げられている面はあるが、FX取引の動向は外為市場関係者全員にとっても極めて大きな関心事だ。市場の整備も不断に求められる。例えば最近では、バイナリーオプション取引の扱いのように商品としての適切性が議論となった案件についても、業界で投機性を弱めるためのルール作りが行われた。新興かつ最新技術を用いる革新的な業界であるがゆえに、今後も色々なアイデア・商品が出てくると思うが、当局、協会、業界関係者が利用者の立場に立ってきちんと適切に議論・判断して、市場の健全性・透明性を維持していくことが、「貯蓄から投資への流れ」をしっかり受けとめていくための前提条件となろう。

――最後に、新社長としての抱負を…。

 松田 FX取引が持つ投資・ヘッジ手段としての有利性や取引の利便性といった魅力をもっとたくさんの方々に知って欲しいと思っている。当社としては、ウェブサイト上の興味深いブログ、コラム等のコンテンツと各種ツールを一層充実させながら、わかりやすい形で市場や取引の魅力を伝えていきたい。それとともに、関係者とも密接に協力しながら世界一の規模の市場の名に恥じないインフラ・ルールを整備していくことで、投資家に新たな地平をご提供していくためのお役に立ちたいと考えている。(了)

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