金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「戦略から実行まで企業支援」

プライスウォーターハウスクーパース
代表取締役社長
椎名 茂 氏

――御社が目指すものは…。

 椎名 企業を支えていくビジネスアドバイザーとしての役割を目指している。企業活動への処方箋は時流により変わることから、新しいサービスを常に考えて打ち出していく方針だ。現在のところ約1500名の従業員がおり、ディールアドバイザリー部門とコンサルティング部門に加え、産業別に顧客に対応するチームもあり、企業活動の変化に対応している。

――ビジネスアドバイザリー業全体での景況感は…。

 椎名 日本国内の景気が少しずつ改善していることに伴い、企業が徐々に積極的な投資を考え始めている。これに伴い、当社のビジネスチャンスも増えている。最近では、サイバーセキュリティーやビッグデータ分析、クラウドなどのデジタル分野に加え、不正調査分野へのニーズも高い。もちろん、グローバルでもこのエリアには注力している。

――このほど提携を発表した…。

 椎名 まず、昨年4月に戦略系コンサルティングファームの旧ブーズ・アンド・カンパニー社(現プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー社)とグローバルで統合手続きを完了した。同社とのシナジー効果により、戦略系の案件も増えている。従来のコンサルティングでは業務プロセスの変革を目指しているが、戦略系の案件では企業の戦略そのものを考えるところから開始する。顧客企業の事業ポートフォリオ上で可能な新規事業を考えたり、競合分析から進出すべき市場を分析したりなど、個々の業務プロセスより一段高いところから考えるイメージだ。新規事業の立案では、新しい商品開発をする、海外を含めた新しい市場に進出する、競合を買収するなど様々な選択肢が出てくる。その選択肢に応じて当社は「戦略から実行まで一気通貫で支援する」ことができるようになった。また、今年2月にM&A戦略の立案などに強みを持つ旧マーバルパートナーズ社(現プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ社)の株式を取得。これによってM&A分野でもより一層の体制強化を見込んでいる。最近の案件の特徴として、M&Aや会計、人事、ITといった課題を単独で解決するというのは少なく、様々な分野が絡み合った案件が多い。そのため様々な専門領域を持つチームが協力して対応しなくてはならない。

――御社の特徴的なサービスは…。

 椎名 当社は、経営戦略の策定から業務改革、ITによる実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供しているが、ディールアドバイザリーの一環として、M&Aや事業再生を支援するチームがあり、この分野では国内で最大規模だ。特に企業再生の場合、資金繰りが苦しくなる企業が多いが、これを様々な手法により再生し、資金面でリスクを取り除く。そしてその後で、次の再成長に向けた事業戦略を練り直す。この点、戦略提案にはプライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー社との統合が活きてくる。これまで大企業も含めた様々な企業の再生に取り組み、多くの実績も積み重ねている。また、PPP(官民パートナーシップ)・インフラチームで最近行っている都市輸出も特徴的だ。鉄道や発電所を単発で作るのではなく、先進的な日本の街そのもののコンセプトを輸出する。街そのもののコンセプトから考え、その中で何が必要かを考える都市設計となる。これについては、既にインドの都市などで実績がある。

――御社で得意とする業界は…。

 椎名 業界的な得手不得手はないが、金融業については特に強いと自負している。世界157カ国のネットワークを使い世界的な金融規制の動向をいち早くとらえ、日本国内の顧客にも提供していく。海外展開をしている金融機関では、各国の規制に対応しなくてはならないことから、今後の規制動向を予測しながら対策を打っていくことが重要で、それにはPwCの世界的ネットワークが重宝する。

――金融業界へのアドバイスは…。

 椎名 金融業に携わるあらゆる企業がグローバル化の視点を持ち、テクノロジーを取り入れる工夫をすることが必要だ。グローバル化の視点がなければ、海外に支店がある大手金融機関との差がますます開いてしまう。また、最新テクノロジーを取り入れることで、ニッチ市場で生き残るという戦略も有効だ。最新のテクノロジーと金融サービスは親和性が高いことから、新たなビジネスを生み出せる可能性は十分にある。

――顧客企業が同社のようなアドバイザーに依頼する際のポイントは…。

 椎名 まず、お客様がこうありたいと思う明確なビジョンが描けているかどうかが重要だ。明確に描けていれば、解決策を提示して支援することができる。また、改革の旗振り役の方が当事者意識を強く持っていないと上手くいかない。実際には当社だけでは達成できないため、二人三脚で改革していくという考えを持っていただきたい。当然、アドバイザーへの予算もかかることから、コストをかけてでも変えるという強い意志があるかどうかも重要だ。

――御社の財産と言えるものは…。

 椎名 当社では人材が唯一の財産だ。機械や製品といった資産があるわけではない。そのため、プロフェッショナルの人材が活き活きと仕事ができることが重要だ。1つの案件に対し、時には国境を越えて議論をしながらお客様に解決策を提示する。これによりお客様からの感謝、私たちの成長、実績が得られると考えると、全ての仕事は双方にとって価値のあるものであり未来を築き上げていくものになる。この様なことを考えながら、質の高い人材が楽しんで顧客企業と仕事をする、またその環境があることが当社の強みであり特徴だと感じている。

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