金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「まずは総合エネルギー市場の創設 」

東京商品取引所
代表執行役社長
濵田 隆道 氏

――マーケットが不安定化するなか、コモディティに対して改めて注目が集まっている…。

 濵田 2016年は中国経済の減速懸念や英国のEU離脱(Brexit)騒動などのイベントで相場のボラティリティが高まったこともあり、年初から取引は活発となっている。東京商品取引所(TOCOM)の上場商品のうち特に原油が好調となっており、2014年の1日平均出来高が約3000枚程度であったのに対し、現在は1日平均で約3万枚に迫る勢いで大きく取引が膨らんでいる。また、原油は2001年に上場して以来、取組高が10万枚を超えることはなかったが、8月には取組高が一気に17万枚超まで膨らんだ。原油が増えた要因としては、当社のドバイ原油価格に連動する「日経・TOCOM原油ダブルブル」という上場投資証券(ETN)が活況で、このETNの販売会社によるヘッジ取引が増加したことなどが挙げられる。さらに、金の限日取引「東京ゴールドスポット100」の取組高も11万枚を超えており、原油に次いで2番目の多さとなっている。個人投資家が商品先物取引を手掛ける際、決済期限を迎えると損失が出ていてもポジションを手仕舞わなければならない点が最大のネックとなっていたが、決済期限のないゴールドスポットは相場の反転を待って長期保有することも可能であり、個人投資家にはこの点が非常に気に入られている。

――海外の取引参加者の動向は…。

 濵田 TOCOMはシンガポールやシドニー、シカゴ等のプロップハウスを中心に投資家の開拓を進めており、海外投資家は着実に増加してきている。初めてNASDAQのシステムを導入し国際化に舵を切った2009年度の海外売買高は617万枚、全取引に占める海外玉の比率は11%であったが、2015年度には海外売買高は2520万枚、海外玉比率は約半分(48%)まで上昇してきている。実際に海外のトレーダーと話していても、「ゴールドはTOCOMを抜きにして取引することが出来ない」という声を聞いているほどだ。例えば米CMEのGLOBEXでは金の取引が24時間行われているが、米国時間の夜には商いが薄くなるため、TOCOMの値段をベースとした裁定取引が実際に行われている。このほか、TOCOMでは、ゴムや白金も国際的に影響力のあるベンチマーク商品として育ってきた。海外戦略としては、現在、特に中国の商品取引業者や香港の関連会社との協力関係の強化に注力しており、TOCOMへ参加してもらうための準備を着々と進めているところだ。

――経営面での課題については…。

 濵田 今9月に予定している次期システムへの移行が当面の最大の課題だ。現在使っているNASDAQのシステムも速度は世界トップクラスだったが、新システムではマッチングスピードを含めさらに性能が向上することになる。また、新システムは大阪取引所との共同利用となるため、海外投資家などが大阪取引所の日経225と裁定取引を行う際にも利便性が上がるというメリットもある。先んじて7月に新システムへ移行した大阪取引所ではトラブルも発生せず安定的に稼働しており、この点については我々としても信頼できるものとして安心している。

――新商品の開発に関しては…。

 濵田 金のオプション取引について商品設計を変更し、9月20日から新しい金オプション取引を開始する。新たな金オプション取引は、ヨーロピアンタイプで権利行使日に全て現金決済とするなど日経225のオプション取引と同様の仕組みを採用したことで、すでに日経225でオプション取引に馴染みのある投資家が参加しやすいようにした。また、金のオプション取引は日経225と比較してプレミアムが小さいこともあり、個人投資家にとっても宝くじ感覚で手掛け易い商品になるのではないか。オプション取引が活発となれば、必ずや先物の出来高の増加にも貢献すると期待している。さらに将来的な課題としては、電力先物の上場について制度設計の検討を行っている。4月から小売全面自由化となったわけだが、特に産業用・業務用の大口の電力については自由化が進んでおり、かつ火力発電への依存度が高まっているなかでは燃料の天然ガスや石炭の価格変動リスクは無視できない。電気代金をなるべく固定化したいと考える向きにとっては、電力先物へのニーズは着実に高まっていると考えている。

――政府の掲げている総合取引所構想については…。

 濵田 政府が閣議決定した日本再興戦略では、総合取引所の実現と同時に「LNG先物及び電力先物を含め、各種エネルギー取引ができるだけワンストップで行われる環境を整備する」と明記されている。このため、我々に与えられたミッションとしては、まずはLNG先物や電力先物を含めた「総合エネルギー市場」の創設を目指すことが重要であり、取引所を一体化した方か良いのかどうかの議論はさらにその次のステップになろう。また、取引所の再編というと日本では合併・統合と勘違いされがちだが、世界では金融やコモディティなど上場商品の特性を踏まえつつ、いかにしてグローバルなネットワークを構築するかという動きが進んでいる。ロンドンやニューヨークには複数の取引所が存在しており、東京にも複数の取引所があること自体は何ら不思議ではない。もちろん日本取引所グループなどと相互補完的な協力関係を結ぶことは重要ではあるが、合併ありきではなく、各々の取引所がグローバルにどのようなポジションを取っていくかを考えるべきだ。

――株式の新規上場(IPO)に関する方針はどうか…。

 濵田 TOCOMの株式の新規上場については積極的に検討している。ただ、足元ではシステム更新に伴う償却負担が大きく、経営努力だけではこのコストを吸収しきれていない。今年度はシステム関連で約25億円、これに人件費等を加えて約40億円の費用の発生を見込んでおり、まずは黒字基調を維持するところから取り組んでいく。このため、IPOの時期については東京オリンピックのある2020年ごろを目指していきたい。

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