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「自民党都連はブラックボックス」

自由民主党
衆議院議員
若狭 勝 氏

――東京都知事選挙では小池百合子氏が大差で勝利を収めた…。

 若狭 今回の東京都知事選挙を通じて多くの刺激と感動を得た。増田候補、鳥越候補とも強固な組織をバックとしており、我々とはいわば艦船と手こぎボートほど組織力の差があった。その大きな相手に真正面から挑むという点においてまず非常に刺激的な経験だった。また、実際に選挙戦が始まると小池氏の街頭演説に来る人数は日に日に増加し、選挙戦最終日に行った池袋駅前での街頭演説には約5000人もの聴衆が集まった。感動の嵐の中で選挙戦を終えたが、こうした選挙はなかなかあるものではない。

――自民党の方針に反して、小池氏支持を鮮明に打ち出された理由は…。

 若狭 私自身としては、東京都のみならず日本の将来を見据えたうえで女性都知事の実現が必要不可欠だとの信念を以前から持っていた。日本は国連から女性差別の解消が進んでいないという勧告を受けており、これは大変不名誉なことだ。そこで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを女性都知事が開催している姿をアピールすることこそが、国際的な日本のイメージを一気に変えるきっかけになろう。さらに「女性が輝くと男性が輝く」というのも私の持論で、従来の男性社会から女性が活躍する社会へと改めていくことで、男性を含め社会全体の活力が上昇することになると考えている。もとより女性であれば誰でもいいという訳ではないが、小池氏には環境相としてクールビズを導入し、日本の夏の風景を一気に変えてしまったほどの実行力と推進力がある。アイデアも豊か、かつ国際感覚も抜群で、日本の首都東京の顔として最適な人物だ。自民党の東京都連から小池氏を応援した場合は除名処分にするという通達を出されても、政治家の信念として小池氏こそが都知事として相応しい人物だと都民に訴えることが私の役割だと考えた。

――既得権益と真っ向から戦う姿勢を示したことが、都民の支持を集めたのではないか…。

 若狭 私は以前、東京地検特捜部の副部長として利権の追及を仕事としていたが、今回のような形で明確な根拠もなく予算が拡大する時には、少なからず利権が介在しているということは肌感覚として分かる。これは人間の心理の問題だが、事業の規模が大きいと実際より水増しした予算を求めるきらいがあり、これをみんながやり出すと全体の予算が一気に膨れてしまう。予算の財源は都民の税金を含めた公的資金であるため、できる限り抑制しなければならず、そのためには透明性の確保が重要となる。この点を訴えたことが都民にとって極めて分かりやすかったのではないだろうか。

――小池氏は自民党東京都連の不透明な組織運営も批判した…。

 若狭 オリンピック・パラリンピック予算の膨張に自民党東京都連の一部の人が関与しているのであれば、これはきちんと解明する必要がある。小池氏は選挙戦において自民党東京都連が「ブラックボックス」になっていると訴えたが、私自身もそう思っている。東京都連側としてはブラックボックスでは無いと主張しているが、いい実例は私自身だ。自民党から正式に処分が出されていないにも関わらず、なぜか東京都連のホームページから私の名前と写真が削除されている。何らかの不利益処分をする際、本人に聴聞や弁解の機会を与えることは世間的に当たり前であり、かつ今回の場合ではいったい誰がどのような権限で削除をしたのかも全く分からない。これではまさしくブラックボックスではないか。また、私は東京都連の候補者選定会議でも小池氏が最適任だと最後まで主張していたが、挙手で増田候補支援を決定した後、東京都の全ての自民党員に送付した手紙では増田候補支持を「全会一致で決まった」と伝えており、少数意見をもののみごとに抹殺した。一体誰が、どのような権限で全会一致だったと決めたのか不明であり、これもブラックボックスの典型例だ。

――今後の小池氏と自民党東京都連との関係はどうなる…。

 若狭 知事に就任した後は選挙戦で訴えたことをいかに実現していくかが重要となるが、選挙終了後の自民党東京都連の反応を含めてその道のりは険しい。ひとたび選挙で勝敗が決まった後はそれまでの対立姿勢を互いにクールダウンすることが通例だが、自民党東京都連は私の名前と写真をホームページから削除するくらい感情的になっており、彼らがこのまま対立姿勢を維持するのか見極めていく必要がある。小池新都知事が初登庁した際の自民党の非礼な対応が批判を呼んでいるが、私自身としてもあまりにも社会的な常識を意識していない行動だと思い寂しい気持ちになった。小池氏に対する個人的な感情ではなく、都知事というポストに対して敬意を払うべきだ。

――小池氏は選挙戦で東京都議会を解散する可能性にも言及した…。

 若狭 東京都議会を解散するという小池氏の発言については、実態が分かっていないなどいろいろな批判もあったが、あくまで「正すべき所は正していく」という対決姿勢をワンフレーズで表現しただけにすぎない。小池新都知事の政策に対して都議会が反対姿勢を鮮明にし、不信任決議案が議決された場合は対抗措置として都議会を解散する可能性もあるが、都議会は今回の選挙で示された民意を十分に踏まえ、何が都民のために大事なのかという原点に立ち返ってほしい。17年7月に予定されている都議会議員選挙が戦いの第2章であり、それまでの間に小池氏が自らの政策をいかに示すことができるかがポイントとなる。都政には様々な問題が山積しており、小池新都知事も都庁の職員達から連日のようにヒアリングを行っている。多くの都民から寄せられた期待に応えるためには、やはり今回の選挙戦で訴えてきた政策について、完璧ではなくてもスピーディーに具体化していかねばならない。また、外部の有識者を加えた第三者委員会の設置などによりオリンピック・パラリンピック予算を含め都政の透明性を高める改革を行っていくことが重要だ。東京都で改革の実績を示し、こうした改革の流れを日本全体にも広めていくことができれば素晴らしいと考えている。

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