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「TOPインタビュー・ハイライト」2020年下半期(下)

「TOPインタビュー・ハイライト」
2020年下半期(下)

12/14掲載「国の管理で中小河川敷が荒廃」
愛媛県農業法人協会 会長 ジェイ・ウィングファーム 代表取締役 牧 秀宣 氏
――水害等への対策費用は国の予算から十分割り当てられているのではないのか…。
  河川の改修費用で国の予算がつくのは目に見えた大きいところだけで、中小河川敷の管理は殆ど出来ていない。昔は中小河川敷の管理はその河川に面した農地を持つ人が管理していたため、しっかり目が行き届いていたのだが、今は河川敷の管理が国のものになったため自治体任せになってしまい、毎日その場所を目にする人がいても、手を出すわけにはいかない。結局、管理の行き届かない河川敷の土手には木が茂り、草が伸び放題で、手を付けられない状態になる。自然のサイクルが壊れたことによる全国の被害は莫大だ。農地においても河川においても、集落という規模で地方自治がしっかりと管理できれば、自然のサイクルが働き、国から莫大な水害対策費用等をもらう必要もなくなると思うのだが、集落を合併させて一つの自治体を大きくしたことで地方の行政管理機能がパンク状態になってしまった。そして、荒れてしまった土地にいくらお金をつぎ込んでも解決できないという悪循環の状況になっている。

12/7掲載 「DXには独自のシステム必要」
慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 教授 土屋 大洋 氏
――デジタル化を支える今のサイバーセキュリティ基本法に足りないものは…。
 土屋 サイバーセキュリティ基本法が制定されてからすでに2回ほど改正しており、今後何か課題があっても、それは軽微な修正で対応できる。また、基本法を細かく変えたところであまり意味はなく、むしろその体制が重要だと思うが、通信の秘密に関する憲法改正が出来ていない以上、サイバーセキュリティのためのインテリジェンス体制はあまり変わることはない。いずれにしても今回設置された日本のデジタル庁はインテリジェンス活動のためではなく、国民皆がパソコンを使うように推進するためだけのものだと思う。例えば閣議をオンラインで行うといった場合には物凄いセキュリティが必要だが、そういうことをやるような雰囲気でもなく、そもそも現在日本で使われているオンラインのプラットフォームはほとんど外国のものであり、日本のソフトウェア会社はこういったツールを提供していない。こういった状況でオンライン閣議など行えるはずがない。インテリジェンス活動を前提としたセキュリティを考えるのであれば、NTT、KDDI、ソフトバンクなどのデジタルシステムを作る会社は、早急にオンラインワークのためのツールを作るべきだ。

――通信会社同士の値下げ競争を促すのではなく、むしろ外国に頼らずに使えるオンラインツールを作り上げるための予算が必要だ…。
 土屋 パナソニックは完全国産のパソコンを製造しているが、それは非常に限定的で値段も高い。安く済ませようと思うとどうしても外国製になってしまう。また、日本メーカーだから安心かといえば、部品が外国で製造されていたらそれもまた不安材料となる。国内で今更パソコンやソフトウェアを作れるかといえばそれも厳しい。しかし、安全を追求するという面も考えて日本独自のシステムをつくらなければ、いつまでたっても外国依存のままだ。同盟国の米国でさえ日本のことを当然傍受しているという前提に立ってやらなければならない。

11/30掲載 「日本自立を、蘇る三島の思想」
一水会 代表 木村 三浩 氏
――米中対立が激化するなかで日本の立ち位置をどう考えるか…。
 木村 日本は米中の利害を調整する緩衝材としての役割が求められる。それには外交において主体性を持つことが必要だ。現在米国は、オーストラリアをはじめとしたインド太平洋諸国で中国を包囲しようとしているが、単に日本がそれに加担するというのはよくない。いわゆる西側諸国やインド太平洋諸国が自由や人権を重んじ、新自由主義的考えを持つことを否定するわけではないが、中国には中国式というものがある。米中の緊張状態は高いものの、日本の外交としては中国の言い分をアメリカに伝え、アメリカの言い分を中国に伝えるようなことをすべきだ。ただアメリカの肩を持つのではなく、日本は主体的に行動することが大切だ。今までそういうことをしてこなかったから、北方領土や拉致問題が一向に解決しなかった。また、今はイスラエルとイランの関係が懸念される。新型コロナで景気が世界中で悪くなっているが、一番簡単に景気をよくする方法として為政者が考えることは戦争をすることだ。イスラエルはスーダン、バーレーンなどと国交を樹立したが、イランはそれに反発している。その結果、第5次中東戦争が始まったら、ホルムズ海峡が封鎖されることになる可能性が高い。そうなった場合困るのは大量の石油を輸入している日本であり、中国だ。また、尖閣諸島をめぐり日中間が戦争状態に突入した時、いつの間にか自国第一主義でアメリカ軍がいなくなってしまっていたということでは困る。つまり、これからはアメリカに頼りきりでなく、主体的に行動できる国家を築いていくことが重要だ。三島烈士が命を賭してまで伝えたかったことは、日本が対外的に国家主権を保持した自立した国になるべきだということだ。

11/24掲載 「中国事業のメリットに疑問」
IPAC 経済安全保障専門家アドバイザー 井形 彬 氏
――日本は米国と中国、両国からの規制の板挟みとなる…。
 井形 例えば、日本で研究開発したものを東南アジアで製造し、欧米に輸出するというやり方と、中国圏だけをターゲットに中国国内で研究開発、製造、販売すべてを行うというやり方を同時並行的にオペレートすることは出来ないことではない。しかし、中国で得た利益を日本に還元できないという規制を中国がとっている限り、日本企業が中国で経済活動をするメリットはどれほどあるだろうか。加えて、中国自身がこれまでの輸出主導から内需主導のデュアルサーキュレーションに国家戦略を変更し、中国製造2025の中で主要産業を国営企業でナンバーワンにする試みが着々と進んでいる。最終的に中国での産業が中国企業で占められてしまうのであれば、今のうちに日本は中国から去ってインドやアセアンに移ることも考えるべきだろう。こうしたことを背景に、最近、私は各大使館から話が聞きたいと言われ意見交換をしているのだが、特に東南アジアの大使館からは日本企業を誘致するための売り込みを受けることも多い。

11/2掲載 「DCは金融立国の一丁目一番地」
野村アセットマネジメント 取締役会長< 尾﨑哲 氏
――日本の国家戦略である金融立国を実現させるためにはDC市場の発展が欠かせない…。
 尾﨑 申し上げたように、日本の国家戦略である金融立国と、個人の資産形成と、世界貢献、全てを実現させるための一丁目一番地はDCを欧米並みに本格展開することだ。戦後、投資信託が再開されて60年で個人保有残高はわずか70兆円。DCの本格化による少額積立に国民全員が注力すればこの額は次の10年で倍に出来る。その資金は世界の分散投資に向けられ、世界貢献と同時にそれなりのリターンも得られるはずだ。単純な計算だが、超高齢の一人世帯を除く日本の約5200万世帯が月2万円ずつをDCを含めて積立てていけば5年で70兆円になる(年率3%程度のGPIFの実績リターンも適用)。一家計当たりの平均給与が月収で36万円なので、月2万円は決して安い金額ではないが、それを1万円にしても10年で今の投資信託のサイズになる。来年のDC20周年を機に、2020年から2030年までの10年間、ESG投資によるSDGsの達成に向かって、日本のDCを本格的に発展させることで、健全な資産形成とそれを通じた世界貢献をすべく、関係者と尽力していきたい。

10/19掲載 「銀行融資と社債の同順位を」
日本証券業協会 副会長 森本 学 氏
――日本の社債市場は米国などに比べてまだまだ小規模だ。やるべきことは沢山ある…。
 森本 社債市場の活性化は日証協が長い間取り組んでいる課題だ。足元では多少発行が増えてきたが、まだ我々が目指しているような状況ではなく、ボリューム的にあまりにも小さい。これは証券界だけでなく、当局や関係者を巻き込んで構造的問題に取り組まなければ実現しない問題だ。例えば発行体について言えば、米国ではBBB格以下の銘柄が半分以上を占めておりリスクマネーを供給するという市場の役割が果たされているが、日本ではBBB格は1割にも満たない。さらに米国には、日本にはほとんど存在しないハイイールド市場もある。そういったことから、日本ではせっかく低金利になってもリスクマネーが流れないという残念な状況になっている。発行銘柄の多様化は引き続き大きな課題であり、そのため先ずやるべきことは、銀行ローンと社債の実質的な同順位(パリパス)を確保することだ。そこで重要になるのはネガティブプレッジ(担保制限条項)であり、日本は社債間での担保制限条項はついているが、米国では標準である銀行ローンとの間の担保制限条項がついていない。その結果として、日本ではデフォルトすると社債権者の回収率が非常に低くなることから、投資家は低格付社債に投資しにくい状況が続いている。

10/12掲載 「21世紀の日英同盟締結を」
衆議院議員 国民民主党 党首 玉木 雄一郎 氏
――中国包囲網ともいえる「アジア版NATO」についての考えは…。
 玉木 中国は引っ越し出来ない隣人だ。彼らが国際秩序のなかで責任ある大国として振る舞うことを期待する。それが日本対中国の一対一の関係では難しいのであれば、多国間で中国に対して然るべき提言を行うような外交が必要だが、私はアジアで軍事同盟的なものを結ぶよりも、「21世紀の日英同盟」を結ぶべきだと考えている。ここで指す「英」は旧英連邦を意味し、インド、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド等すべての旧英連邦の国々を含む。これらの国々と同盟を結ぶことが出来れば、経済を含む安全保障上の問題において、日本が相当大きなポテンシャルを持つことになるだろう。

――南シナ海などで中国が覇権主義を拡大させている中で、日本のシーレーンは守ることが出来るのか…。
 玉木 日本の海上交通路について言えば、日米同盟は地域全体の公共財という役割を果たしているため、それを強固に保つことは必要だ。同時にアセアン周辺諸国の協力も欠かせない。ただ、米国がアジアへのコミットメントを弱めていこうと考えているのであれば、力の空白が出来てしまうため、そうならないように米国をアジアに関与させ続けるという努力を日本はし続けなくてはならない。シーレーン防衛は我が国にとって生命線とも言える。何かがあった時の後方支援の在り方を事前に定めておくことは重要だ。

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