金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

「日本自立を、蘇る三島の思想」

一水会
代表
木村 三浩 氏

――三島由紀夫の没後50年になる…。
 木村 三島由紀夫、森田必勝両烈士ほか3名が、自衛隊東部方面総監室を占拠し演説したことは、憂国的な行動であった。日本を憂いて、自分たちの国は自分たちで立ち上がっていかなければならない、憲法上で自衛隊が軍として成立しない限り、日本の独立は果たせないことを身を持って伝えたということだ。三島烈士は、最後の声明文として「檄文」を散布し、自衛隊をはじめ戦後の日本には「生命尊重以上の価値の所在」があるのか、と問う。生命尊重以上の価値とは、日本であり、親兄弟、愛する人の存在だ。自衛隊は軍隊としてこの生命尊重以上の価値のために自分の命を賭けられるかどうか。三島は、このままでは日本が諸外国と比較して、「無機質な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない」空虚な経済的国家に成り下がってしまいかねないという危機感を抱いていた。このため、三島は自分の命を賭け、自衛隊が日本を守ることができる組織として立ち上がるよう、日本が独立した国家となるよう檄を飛ばした。

――当時の日本では三島の思想が曲解され伝えられていた…。
 木村 当時首相だった佐藤栄作は、気が狂っていると評し、防衛庁長官だった中曾根康弘も迷惑なものだとしていた。多くの日本人は報道を通じて、事件の本質とは異なる受け止め方をしていた。三島は、「王陽明」という陽明学者を引用し、陽明学を行動の哲学であり革命の哲学であると位置付け、真理を知るということに至れば、すなわち行動しなければならないと述べた。明治維新は陽明学を核の哲学にして行動したため成功した。三島は、世の中のために、日本という国家を守るために、問題意識を持ち、それを提起し行動することの大切さを説いた。

――50年前に三島が唱えたことが、現在改めて再評価されている…。
 木村 現代の日本人は、戦後から続く平和を重んじ平和憲法を守ると言う思想が主流となっているが、当然、戦うべき時が来たら戦わなければならない。諸外国は三島が言ったように自国防衛を行っており、日本だけがいまだ取り残されている。そういうなかで日本人は今こそ三島由紀夫の考え方を学ぶべきだ。没後50年を記念して映画などが公開されている。一水会は三島、森田両烈士が割腹自殺をした2年後、彼らの「憂国の精神」を継承するため結成された。結成以来、民族自主独立を掲げ、対米自立、対米対等な独立国家を目指している。

――菅総理については…。
 木村 世の中には先駆者がいて、その後それを理論付けて皆に理解させる理解者がいて、次に革命家として実務者が現れる。今は、三島のような先駆者の後に、憲法改正の理論付けのための憲法学者が全面に出てきて、そろそろ世の中が変わってくる時期だ。最後に実務者として、安倍前総理が憲法改正法案などに取り組んでいたが病気で倒れてしまった。しかし菅総理がいる。彼は実務者として規制改革、縦割り打破を唱えており、憲法改正も期待している。しかし、菅総理が日本の歴史、伝統、対外関係を理解しているのかと疑問に思うことがある。それは、10月17日、神嘗祭と同時に中曽根元総理の合同葬が行われたためだ。神嘗祭は皇室にとって重要な祭事であり、国民にとっても祈りと感謝を象徴する重要な日であるはずだが、政府は、国立大学や自治体に対して「弔旗の掲揚」と「黙とう」を求め、祭事とは逆のことを同日に行ってしまった。菅総理や今の役人は日本という国や国民感情が本当は分かっていないと思われても仕方ない。

――一方で、国会では菅首相が学術会議を見直すことを野党が問題視しているが…。
 木村 学術会議の見直しは大いに結構なことだ。しかし、やり方を間違えた。菅総理は、日本学術会議の今までの慣例ではこうなっているが、新しいやり方があるのではないか、と正面から議論をすべきだった。学術会議の人数を減らすのもいい。しかし、6人だけ任命を拒否し、さらにその理由が説明できないのは意味のない議論だ。そもそも日本学術会議の方針で国防の研究をしてはいけないなんて学問の自由とは真逆だ。

――それに国会で学術会議の議論をしている場合だろうか…。
 木村 近隣国では、中国と台湾の関係が悪化しているうえ、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を持っているかもしれない状況になってきている。既にアゼルバイジャンとアルメニアでは軍事衝突が実際に起こっている。また、米国が民主党政権となったことで、尖閣を中国が支配しようとする姿勢が強まろう。世界中の国々が自国第一主義を採用し、その結果様々な紛争に発展している現状のなかで学術会議の任命などといったつまらない議論をしている場合ではない。

――中国に関してはどうか…。
 木村 中国は共産党の一党独裁ではなく、連邦的な国家を作るのがよいのではないか。あれだけ大きな国であるため、一党の独裁だけでは国がもたない。経済が発展するにつれて、その国民は自由や平等、参政権などの人間としての権利を欲しはじめる。独裁体制ではなく、共産党や国民党など様々な政党が活動し、選挙のなかで戦っていく国家を目指すことで安定を図っていくべきだ。現在の独裁体制では、国内に矛盾が発生し、それに対する国民の目をそらすために、香港や台湾など外部に向けることになる。このため、周りの国々は中国の国内矛盾が外に暴発しないようにコントロールしていく必要がある。中国が暴発した時に備えて日本の防衛力を高めることも大切だが、権力で縛り付けるのではなく中国内部のシステムを改善するよう日本が働きかけていく努力も必要だ。

――米中対立が激化するなかで日本の立ち位置をどう考えるか…。
 木村 日本は米中の利害を調整する緩衝材としての役割が求められる。それには外交において主体性を持つことが必要だ。現在米国は、オーストラリアをはじめとしたインド太平洋諸国で中国を包囲しようとしているが、単に日本がそれに加担するというのはよくない。いわゆる西側諸国やインド太平洋諸国が自由や人権を重んじ、新自由主義的考えを持つことを否定するわけではないが、中国には中国式というものがある。米中の緊張状態は高いものの、日本の外交としては中国の言い分をアメリカに伝え、アメリカの言い分を中国に伝えるようなことをすべきだ。ただアメリカの肩を持つのではなく、日本は主体的に行動することが大切だ。今までそういうことをしてこなかったから、北方領土や拉致問題が一向に解決しなかった。また、今はイスラエルとイランの関係が懸念される。新型コロナで景気が世界中で悪くなっているが、一番簡単に景気をよくする方法として為政者が考えることは戦争をすることだ。イスラエルはスーダン、バーレーンなどと国交を樹立したが、イランはそれに反発している。その結果、第5次中東戦争が始まったら、ホルムズ海峡が封鎖されることになる可能性が高い。そうなった場合困るのは大量の石油を輸入している日本であり、中国だ。また、尖閣諸島をめぐり日中間が戦争状態に突入した時、いつの間にか自国第一主義でアメリカ軍がいなくなってしまっていたということでは困る。つまり、これからはアメリカに頼りきりでなく、主体的に行動できる国家を築いていくことが重要だ。三島烈士が命を賭してまで伝えたかったことは、日本が対外的に国家主権を保持した自立した国になるべきだということだ。

▲TOP