金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

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「TOPインタビュー・ハイライト」

TOPインタビュー・ハイライト
2020年上半期

1/6掲載「改憲には大多数の国民の合意」
参議院議員 中川 雅治 氏
――与党が3分の2の勢力を占めているからといって、すぐに憲法改正へと踏み切れる訳ではない…。
 中川 今、衆議院は憲法改正に意欲的な自民・公明・維新で3分の2以上の議席数を占めているが、参議院は違う。昨年7月の参議院選挙でわずかに3分の2を割ってしまった。自民党が憲法改正のたたき台素案としている4テーマはまだ憲法審査会に提出していない。公明党にも日本維新の会にもそれぞれの意見があり、改憲に向けて同じく志を持ってくれている方々との十分な議論を行うことなく3分の2という数字だけを使って強行採決のような形で押し切れば、国民投票に至っては当然のごとく大きな反対運動が起こってくるだろう。そうなれば政局がらみの大混乱となろう。私は、そういう形で進めるべきではないと思っている。政局を離れて真摯な議論をし、国民の理解を得ること。3分の2や過半という数字ではなく、大多数の国民の皆さんの合意をいただくような進め方をしなくてはならない。だからこそ自民党も慎重になっていて、周りからはなかなか進まないように見えるのだろう。

1/20掲載 「金融・財政政策の反動に警鐘」
短資協会 会長 三谷 隆博 氏 
――世界的には、金融緩和から財政出動へと舵を切ろうとしている…。
 三谷 金融政策にこれ以上の効果が期待し難いとなれば、次に出てくるのは財政政策だというのはわかりやすい。ただ、財政を一旦出動させれば、そう簡単に逆方向に走ることは出来なくなる。超低金利下では財政で多少無理をしても痛くも痒くもなく、国債のマイナス金利で逆にお金を貰えてしまうともなれば、財政の歯止めは無くなってしまう。それが何かを契機に逆転し始めれば、大変な金利負担が生まれてしまう。今は、雇用環境は良く、景気も低空飛行ながら比較的安定しており、どこまで財政に負荷をかけて追加的な刺激策を講じるべきなのか。これまでも「こんなことを続けていればいずれとんでもないことになる」と警告する人たちがいたのだが、この10年間何も起きていないということで、その説得力は乏しくなっている。しかし、その反動を想像すると怖い。

2/25掲載 「米中戦争で一帯一路を強化」
日本経済大学 教授 生田 章一
――米中経済戦争が「一帯一路」の沿線国に与える影響は…。
 生田 中国共産党の幹部や経済人の多くが、米中貿易摩擦によって、米国の経済にコミットしすぎる事へのリスクを学び、一帯一路沿線国への関心をさらに強固にしている。外貨準備も米国国債にばかり偏るのではなく、もっと有用な活用方法があることに気が付いたようだ。実際に、経済戦争が始まって以降、習近平主席・李克強総理の「一帯一路沿線国」にむけたトップ外交は急激に増加しており、中国のメディアは毎週のようにそのニュースを大きく報道している。一帯一路はユーラシア大陸の勢力関係を大きく変えるだろう。ソビエト連邦の崩壊によって生じた覇権の空白地帯にも、中国がいわゆる実効支配という形で強い影響力を及ぼし始め、そこに中国を中核とした安全保障体制(上海条約機構)を敷いている。それらの地域には世界有数の資源国が含まれており、その資源やインフラ権益は次々と中国の手中に収まりつつある。そして、「一帯一路ITシルクロード」という名の下に、沿線国のITインフラは中国標準で塗りつぶされつつある。例えば、貨物列車の運行に付随する運行管理システム・通関システム・荷物の積み下ろし管理システム・人民元による決済システムが中国のIT技術を浸透させるために一体化して導入されている。

3/2掲載 「トランプ『和平案』は『戦争案』」
パレスチナ国 駐日パレスチナ常駐総代表部 大使 ワリード・アリ・シアム 氏
――米トランプ大統領が示した新中東和平案について、率直に思う事は…。
 シアム あの提案は「和平案」ではなく「戦争案」だ。トランプ大統領の娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は今回の案に深く関わっており、この件で何度もテレビに出ているが、その中で繰り返し「イスラエルはこれまで一度もパレスチナが国を持つ事を認めてこなかった」と言っている。これは1993年のオスロ和平合意で締結した際の「2国間共存」という和平案ベースを全く無視した発言だ。「2024年にパレスチナは国家として認められる可能性がある」との文言もあるが、あくまでも「possibility(可能性)」に過ぎない。1993年のオスロ合意に従えば、1999年にはパレスチナ国家が出来るはずだったが全く実現していないし、冒頭で述べたクシュナー氏の発言の意味を考えても実現性は甚だ疑わしい。そもそも、1967年の第3次中東戦争の取り決めで、国連加盟の142カ国がパレスチナを国家として東エルサレムを首都にすることを認めている。パレスチナ自身、国連のオブザーバーとしてのメンバーでもある。今回の案がこういった一連の国連決議に則ったものであれば和平の道も開かれるかもしれないが、それらをまったく無視して新たにイスラエルのためだけに作られたような案を信じられる訳がない。

3/9掲載 「大麻解禁で交通事故多発」
国立精神・神経医療研究センター 依存症薬物研究室 室長 舩田 正彦 氏
――大麻については…。
 舩田 大麻はもともと日本では身近にあった植物で、麻繊維の原料として長い歴史の中で栽培されてきた。大麻の中にはTHCという幻覚症状や高揚感を引き起こす化学物質が入っているため、特定の部位だけを麻繊維の原料として利用してきた。また、日本固有の大麻は、THC含有量が比較的少ない種類に属するとされており、繊維原料として非常に有用と考えられている。大麻栽培のためには、大麻を規制する「大麻取締法」に従った栽培免許の取得が必要だ。一方、大麻が健康上に与える影響としては、依存性の問題に加え、運動機能や判断能力が低下する点が問題だ。具体的な例は、自動車運転での交通事故で、実際に米国のハイウェイにおける自動車事故の原因の多くは、大麻使用が関わっている。また、大麻使用によって幻覚や妄想を伴う大麻精神病を引き起こす危険性も懸念されている。大麻精神病の発症に対する医学的な評価は必ずしも一致していないが、疑いがある以上、安全ではないと認識する必要があろう。大麻使用は、個人的な健康被害のみならず、他者に被害を与えてしまう危険性がある点で、その取り扱いは注意しなくてはならない。

3/30掲載 「金融緩和効果は白川時代が上」
立命館大学 国際関係学部・研究科 教授 大田 英明 氏
――総じて言えば、今よりも白川総裁時代の金融政策の方が良かったということか…。
 大田 2008年頃まで銀行貸出量は増加していたが、当時のMBは増えておらず両者の関係性は低い事がわかる。実際にグレンジャー因果性検定を使って調べてみると、白川総裁時代には、日銀当座預金と鉱工業生産や実質生産の間には有意に因果性があるという結果が出ているが、QQE時代には日銀当座預金以外への因果性はほとんど無いという結果が出ている。インパルス応答関数でも同様の結果だ。そして、2008年から2013年までの累積残高をみると、やはりMBが鉱工業生産に与える影響はそれなりにあり、銀行貸出は有意に影響を与えているが、QQE時代に入ると、MBも日銀当座預金もM2ベースも、鉱工業生産に対してほぼ影響がないという事を示している。QQE第2弾の2014年11月以降もほぼ同じだ。私は以前からこうした分析結果を学会で発表しているのだが、他の方々はこのことについて何も触れようとしない。QQEに伴う大量マネーは米国をはじめ海外市場に流れており、米国経済・市場もその恩恵を受けているが、日本国内ではほとんど効果がないことを私の分析で明らかにしている。金融分野の専門家は、どうも国際的観点からの分析が欠けている人が多いようだ。

4/13掲載 「対コロナは場当たりでお粗末」
東アジア共同体研究所 理事長 鳩山 友紀夫 氏
――「アベノマスク」問題では、それが嘲笑の的になると、止める側近がいなかったのか。きちんと状況を判断する材料を持っているのか疑問だ…。
 鳩山 そもそもマスク配布は2カ月前にやるべきことであった。繰り返し使えるのかもしれないが、サージカルマスクなどと異なり、ウイルスを防ぐことに対してあまり効果がないとも言われているなかで、布マスクで良いのかどうかも疑問だ。さらに世帯に何人住んでいるかも把握せず、一律に2枚で良いのか。200億円以上かかるといわれているが、その200億円はもっと有効な使い方があるのではないかとも思う。(その後、配布費用は400億円以上になることが判明した。)本当に迅速にやってもらいたいのは、経済活動がほとんどゼロに等しいくらいになってしまうような観光業などに迅速に手当をすることだ。30万円の給付も住民税を納めていない人などに限定されるから、対象者はさほど多くない。生活保護をもらっている人も収入が減るわけではないため対象外ということだ。さらに、審査に時間が掛かり、実際に支給されるのは早くても5月となると、それまで持たない人も出てくるだろう。どの程度オンライン化できるのかを含め、申請方法や受給方法もはっきりしない。マスクにせよ、30万円の給付にせよ、大きな対コロナ戦略に基づくものと言うよりは、政権の失敗を糊塗するための場当たり的なパフォーマンスにしか見えない。しかも、その内容が信じられないほどにお粗末だ。この緊急事態を乗り切るためには、政府が国民に信用されているか否かが鍵を握っている。政府が何か手を打つたびに国民からため息が漏れる現状はとてもまずい。

5/18掲載 「コロナ検査は甲状腺がんと極似」
3・11甲状腺がん子ども基金 代表理事 崎山 比早子 氏
――国がきちんとした検査をしないという点は、現在の新型コロナウィルスにおける対応とよく似ている…。
 崎山 原発事故直後、環境放射線が非常に高くなった時期に文科省は線量測定を止めさせた。そして福島県は子どもの甲状腺被ばく線量を測定していた研究者に中止を要請した。その理由は県民を不安に陥れるからだということだったが、それは逆だ。実態を把握して、きちんと知らせる方が不安は解消される。これは今の新型コロナウィルスへの対応とよく似ていると思う。国はその気になればやれるはずの大規模PCR検査を行わなかったために感染者が掴めていない。感染者を同定して隔離することが感染拡大を防ぐ最も近道であるという事はだれもが理解できる。実際に中国、台湾、韓国はそれでウィルス感染の収束に成功した。

6/8掲載 「尖閣は日本領との強い意志を」
沖縄県石垣市長 中山 義隆 氏
――最後に、国民の皆さんに対して一言…。
 中山 コロナウィルス騒動で国民の関心はそちらに向かってしまい、尖閣諸島はニュースになりにくいが、日々、中国公船からの領海侵入を受けている。そういった事実を理解していただき、国民世論として、自国の領土は自分たちで守るということを発信してもらいたいと願っている。最近の香港状勢を見てもわかる通り、中国は国民の関心を国外に向けるため、強引な賭けに出てきており、いつ尖閣諸島で同じ様な強引さを出してくるかわからない。そうなる前に、国民が強い意志を示すことが中国に有事を起こさせない牽制になるのではないか。

6/15掲載 「経済安保が喫緊の国家課題に」
外務大臣政務官 衆議院議員 中山 展宏 氏
――国家安全保障局(NSS)に経済安保のための経済班が4月1日にようやく発足した…。
 中山 昨年3月、自民党のルール形成戦略議員連盟(甘利明会長・中山展宏事務局長)は、約70名の所属国会議員と半年間の議論を経て「国家経済会議(日本版NEC)創設」の提言を取りまとめた。そして5月、甘利会長と私で安倍総理を訪ね、膝を詰めて提言した。その際、米国と同様、国家経済会議(NEC)を創設し国家安全保障会議(NSC)とともに経済外交と安全保障政策の司令塔として車の両輪のように機能することを求めたが、同時に次善策として、14年に発足した日本版NSCの中に、我が国の安全保障に資する戦略的外交・経済政策を担う組織をまずは作るべきと申し上げた。準備の上、本年4月からNSCを補佐する国家安全保障局(NSS)で経済班がいよいよスタートした。我が国は戦後、経済発展を優先し、科学技術やものづくりを原動力に世界経済の中で魅力を放った。他方、例えば北朝鮮製の初期のスカッドミサイルには、秋葉原で誰もが購入可能な電子部品が使われていた。原始的なデュアルユース(軍民両用)だ。世界は異なる政治体制のもと、パワーバランスの変化や国家資本主義と自由主義経済の非対称な競争も繰り広げられ、軍民融合が進められる。先端技術が学術界や軍需からだけではなく、産業界からも生まれる潮流において、安全保障の視座も踏まえた経済外交に取り組む経済班の役割は重要だ。

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