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日本の悪い金利上昇を懸念

国民民主党  代表代行  大塚 耕平 氏

――新型コロナウイルスの対策が遅れ、感染が拡大したことについての見解は…。
 大塚 感染拡大の要因は3つある。まず1つ目が政府の危機管理意識の低さ。中国では、昨年12月30日に正体不明の感染症が発生しているというレポートがネット上に流れ、それがきっかけで事態が明るみに出た。そのときはまだ新型コロナウイルスだとは判明していなかったので、未知の原因による感染症だ。したがって、未知の感染症も対象にする新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)で十分対応できた。詳しくは後で説明するが、危機管理意識が高ければ、この時点で未知の感染症が日本に入ってくる危険に備え、ただちにそうした事態に対処する法律を探し、その内容に従って対策を取る必要があった。特措法第6条3項によると、新感染症が発生する前の段階、外国において発生した段階、日本で発生した段階と、3段階にわけて政府は対策を定めるよう書かれている。つまり、現行法に沿って、武漢で発生し、日本では未発生という状況で、段階分けした行動計画を立てる法的な義務と責任があった。

――その時点できちんと行動計画を立てていれば、水際対策ができた…。
 大塚 水際対策に加え、本来なら緊急事態宣言もできた。その点に関連し、感染拡大の2点目の要因として、総理及び官邸の遵法意識の低さが挙げられる。本来総理および官邸は、何か起きれば、関連する法律にはどういうものがあり、その法律に基づいてどう対応しなければならないか、ということを考えて行動することが適切な遵法意識であり、当然のことだ。先ほど述べた特措法の第2条1項に新型インフルエンザ等の定義がある。これによれば「感染症法第6条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第9項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)」であった場合には、政府は特措法に定めてある行動を取らなければならない。そして感染症法第6条9項では、「新感染症」の性質として、人から人に伝染するもの、これまでと病状や治療の結果が異なるもの、重篤になるもの、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのあるもの、と書いてある。つまり、法律を改正しなくても今回の新型コロナウイルス感染症はこれに十分当てはまる。そして、特措法第3条には「国全体として万全の態勢を整備する責務を有する」とあり、第6条には「新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(政府行動計画)を定めるものとする」とある。要するに、遵法意識が高ければ、政府行動計画を既に立てておかなければいけなかった。また、第4章の32条に緊急事態措置についても書いてあり、緊急事態宣言もできるようになっている。危機管理意識と遵法意識が低いために、1月の段階で法律に基づいた行動をとっておらず、言わば違法状態が発生していた。遵法意識が低く、法律を十分に理解していないからこそ、新しい法律を作るという話にもなる。それに加え、改正特措法を2月1日に遡及して適用する話も出ており、そのことは、官邸の中にも現行特措法に基づいて行動していないことが違法状態であると気づいている人がいる証左だと思う。一方、今更遡及はおかしいという指摘もあり、現在、遡及条項を外す話も出ている。しかし、遡及条項を外したところで、結果として違法状態が長くなるだけだ。2月1日に遡及すれば違法状態は1月中だけだが、外せば違法状態が2カ月以上になるだけだ。遵法精神に欠け、不作為による違法状態を放置してきた責任は変わらない(編集部注:結局、遡及は行われなかった)。

――要因は、1に危機管理意識の低さ、2に遵法意識の低さ、3つ目は…。
 大塚 3つ目は不合理な外交的配慮だ。いくら国内で学校を休校にしても、国外から新たな感染者が入ってくれば意味がない。遵法意識が高ければ、特措法の政府行動計画の一環として入国制限の話はとっくに出ていたはずだ。なぜそれをやらなかったのかと言えば、外交的な配慮があったのだろうと推測できる。我々は公の党として、感染拡大防止と経済的損失への対策を含め、あらゆることに協力はするが、一方で、現在のような危機的な事態に至ってしまったことについて、危機管理意識の低さ、遵法意識の低さ、不合理な外交的配慮の3点について、総理に十分反省してもらう必要がある。

――新型コロナウイルス感染症拡大の経済的影響は…。
 大塚 ポイントは3つだ。1点目は、感染症拡大に伴う経済的影響は、リーマン・ショックや3.11よりも今回のほうが甚大だということだ。理由はいくつもある。一番大きな理由は、全国津々浦々にイベントの自粛や学校の休校を要請してしまったことだ。3.11の時は甚大な被害は東北地方に限られていた。今回は、自粛要請・休校要請の結果、全国的にイベントキャンセルや休校に伴う親の勤務障害などが発生し、キャンセル料、支払い遅延、労働力不足などの問題などが発生している。経済的な観点でも、現在の特措法の58条には金融債務支払猶予という条項が入っており、それによって今支払いに困っている人たちはとりあえず支払い猶予ができる。しかし、支払う側は支払い猶予ができても、その支払いを受け取らないと経営が厳しくなる事業者もいる。そのため、支払い猶予を認めたうえで、受け取り側にその穴埋め資金を給付することも重要だ。そうした対応を行うと、不適切な申請をする人も発生するかもしれないが、それを是正するのは後からやれば良いことだ。今必要なのは、債務者側の支払い猶予によって損害を受ける債権者側に、政府や公的金融機関が目をつぶって資金を工面するということだ。今回の状況は融資では解決できない。

――優先すべきは影響が大きい人たちの具体的な収入の下支えをすること…。
 大塚 その通りだ。そして2点目はマクロ経済的な話として、3.11のような何万人もの死傷者やリーマン・ショックの時のような内外の企業倒産が発生しているわけではないが、今後のマクロ経済的なインパクト、それに伴う企業・事業者・家計への影響は、3.11やリーマン・ショックを大きく上回るということだ。3.11やリーマン・ショックの時と比べると、中国の世界経済およびサプライチェーンにおける位置付けが格段に大きくなっており、中国での生産や消費の低迷は日本経済にも強烈に影響している。世界的な影響がいつ収束するのかは不透明であり、現時点においても、日本のGDPは3兆円近く、つまり0.6%くらい減少すると予想する。影響が長引けば、約5兆円以上、GDP1%程度以上の成長率への影響は不可避だ。

――株価も世界的に暴落している…。
 大塚 3点目はマーケットへの影響であり、先行きは全く不透明だ。元々昨年から株価には割高感があり、いずれ調整局面が来ることはやむを得なかったが、今回の件はそのきっかけとなってしまった。不透明な環境のなか、アメリカが利下げをし、他国も協調緩和の姿勢を見せているが、現在のマーケットの混乱は金融政策だけで制御できる状況ではない。2点目で述べた実体経済のマイナスをどれだけ財政出動などでカバーできるか、ということが伴わないと、マーケットの本格的回復は難しい。昨年、カーライルグループのルーベルスタイン氏がマスコミインタビューでこれからのマーケットにおけるブラック・スワンについて問われ、「地政学リスク」「政府債務」「パンデミック(感染症大流行)」と回答していた。不幸にもパンデミックが当たってしまったが、実は残りの2つ、地政学リスクと政府債務の問題も日本は両方とも当てはまる。今は財政出動をしなければ実体経済もマーケットも回復しないという非常に厳しい状況に追い込まれているため、財政出動はせざるを得ない。その結果、パンデミックに加え、いよいよ日本の政府債務の問題が本格的にクローズアップされる可能性がある。そうなると、悪い金利上昇、そして日本売りの円安が発生する可能性もあり、先行きが非常に懸念される。今、マーケットにとって良い話は1つもない。

――先行きは、オリンピックへの影響も懸念される…。
 大塚 年末にアテネに行っていたが、そこで偶然アテネオリンピックの負の遺産をたくさん見てきた。オリンピックのために巨大スタジアムをいくつも作ったが、スタジアムはほとんど利用されておらず、負の遺産になっている。さらにそのときの政府債務を過少計上していたことが、09年の政権交代に伴って明らかとなった。それがギリシャショックのきっかけだ。東京オリンピックはどうなるかまだわからないが、仮に東京オリンピックにまで影響が及んだ場合は、その影響や財政に与えるさまざまな事実を包み隠さず整理して共有しないといけない。まずは東京オリンピックがきちんと開かれることを期待しており、それに向けた努力はするが、こればかりはどうなるかわからない。感染症が仮に3月~4月に日本・韓国・中国でピークアウトしたとしても、他の地域で感染症が広がっている状況では、その地域の選手団や観光客を入国させることができない。そういう状況でオリンピックを開くというのは非常に難しい。そうなると、かつてのアテネオリンピック問題、ギリシャ危機も他人事ではなくなる。その点も十分に考え、今後の対応を行わなければならない。

※本インタビューは20年3月5日に行われた。

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