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生産性向上で持続可能な発展

アジア生産性機構(APO)  事務局長   AKP・モクタン 氏

――アジア生産性機構(以下、APO)とは…。
 モクタン APOは1961年に政府間協定の締結によって設立された。目的は、生産性の向上を通じてアジア太平洋地域の持続可能な社会経済の発展に貢献することだ。シンクタンクとして工業、農業、サービス、公共部門など多岐に亘る事業分野で政策提言を行っている。現在のAPO加盟国は20か国・地域。そのうち香港は活動を中止しており実質的には19か国が事業に参加している。日本を先頭にアジアを担うシンガポールやタイ、インドネシアなどが中心となり、まるで雁の編隊飛行のような形で活動してきた。

――生産性を向上させるために必要なことは…。
 モクタン APO設立当初、生産性向上のためのキーは労働力であり、現場主義、品質改善といった取り組みを徹底した。それが徐々に知識、経験、経営手法へと変わり、今日では新しい推進力が必要となっている。第4次産業革命でAI、ビッグデータ、5Gといった新しい技術が次々と生まれる中、今後の生産性向上のための推進力は「イノベーション」だ。技術革新をもとにした新しい推進力で我々が現在取り組んでいる事業は、多国間でのプログラムと、国別のニーズに合わせたプログラムの2つに大別される。例えば、多国間プログラムでは知識や経験の共有を通じて国同士で学びあい、国別プログラムでは対象となる国のニーズに合わせて専門家を派遣し、その国の発展を支援するような事業に取り組んでいる。さらに、加盟国の生産性本部同士でお互いの国を視察して政策提言するといったアドバイザリー事業も行っている。

――APOの加盟国は…。
 モクタン 我々は開かれた組織として、国連のESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)に加盟しているという条件を満たしていれば、基本的にはどの国でも加盟することが出来る。実際、現在APOに加盟している国々は多様性に富んでおり、先進国のカテゴリーで言えば、日本、韓国、シンガポール、台湾等。また、発展途上段階にあるモンゴルやネパールも加盟している。太平洋ではフィジー、西側ではイランまで加盟しており、地域的にも広範囲に及ぶ。さらに今、トルコが参加を表明しており、間もなく加盟されることになるだろう。その他にも、ミャンマーが加盟交渉段階にある。

――APOの事業規模は…。
 モクタン 予算は年間約1200万米ドルで、それぞれの加盟国からの分担金で事業が賄われている。プロジェクトの総数は年間約180件で、そのうち多国間プロジェクトが約100件、国別プロジェクトが約80件となっている。日本にある事務局の職員は45名だが、年間約9400人の人たちがプロジェクトに参加してくれている。先述したように、この組織の特徴は多様性であり、その特徴を生かして先進国、発展途上国それぞれの段階に合わせた事業を行っている。例えば、日本やシンガポールでは高齢化社会に直面している一方で、ベトナムやインドネシアには若い労働力が溢れている。今後はこういった全く違うレベルの国々を上手くマッチングできるような事業にも取り組んでいきたい。そのための一番良い方法を考えているところだ。

――今後の課題は…。
 モクタン 今は世界規模での問題が山積している。気候変動、環境汚染といった問題にどのように関り、どのように対応していくかが目下の課題だ。その取り組みの一つとして、各プロジェクトには2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れて事業を展開するようにしている。また、現在、主に生産性向上の活動を支えてくれているのは政府や企業が中心なのだが、もっと若年層、女性起業家や、体の不自由な人など、幅広く参加してもらって包括的な事業を展開していく事で、さらなる生産性の向上を目指せると考えている。3つ目の課題は、どのようにしてAPOを一般の人たちに理解してもらうかということだ。繰り返しになるが、我々が掲げているのは「生産性中心主義」だ。競争力を強化するということではなく、その結果を生み出すための生産性向上に重きを置いていることを周囲に広め、理解してもらうことが、この組織の活動を続けていくうえで非常に重要だと考えている。

――生産性向上を求めることで、インカムギャップを拡大させる要因にもなると思うが…。
 モクタン 例えば、ベトナムやカンボジアの現在の経済成長率は6~7%と非常に高いのだが、生産性については2カ国ともアジア最低水準だ。一方で、日本やシンガポールの成長率は2%に留まっているものの、特にシンガポールにおける労働生産性指標は大変高く、アジアで断トツの水準を誇っている。経済で高成長を遂げているカンボジアの労働生産性が低い理由は、産業における成長がまだまだ追いついていないからであり、生産性をあげるには労働者のスキルの問題などをきちんと分けて考えなくてはならない。つまり、現在のカンボジアはインカムギャップではなくて生産性のギャップと向き合わなくてはならない段階にあるという事だ。そもそもの生産というパイを大きしなければ、労働者の収入も大きくならない。それが、我々が生産性向上に拘る理由だ。開発をただ応援するのではなく、生産性向上を支援するための取り組みに注力し、そのなかにジェンダーの問題などを包括していくことでギャップを埋めていく。それが「生産性中心主義」という事だ。

――最後に、事務局長としての抱負を…。
 モクタン 来年、APOは設立60周年を迎える。また、2025年に向けた新しいビジョンを策定中だ。次の時代の新たな発展に向けて、組織としてどのようなことが達成できるのか、私としては加盟国と一緒にそのビジョンを作っていきたいと考えている。(了)

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