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BBB格以下の社債市場活性を

格付投資情報センター  代表取締役社長  木村 芳文 氏

――足元の事業の概況はいかがか…。
 木村 当社には、格付事業、投資評価事業、情報サービス事業、編集事業といった4つの部門がある。このうち、収益の6割ほどを格付事業が占めている。日本経済新聞社内に発足したころから数えると42年、日本公社債研究所と日本インベスターサービスが合併してからは21年と、主力はやはり格付事業だ。最近は投資評価事業にも相当力をいれており、その中では年金のコンサルティング事業と、投信事業の2つが大きな割合を占める。今のところ4部門ともに昨年も今年も増収で、事業は順調に拡大している。

――昨今、証券会社は赤字が目立ち、投資銀行部門も過去の分野などと言われる…。
 木村 確かに、証券会社の投資銀行部門はビジネスモデルとしてはきつくなってきている。資本規制で資本を求められ、ROEがあがらない。分母を大きくしなければ資本規制に引っかかり、レバレッジも効かなくなっているため、1990年以降急速に拡大したような伝統的な投資銀行部門は事業が難しくなっている。

 当社の場合は、社債発行額が今年も12、3兆円以上と過去最高水準が続く見通しで、事業環境はよい。そのなかで公募債市場において発行金額の7~8割程度、証券化商品でも7割程度の格付実績を有しており、収入は増加している。加えてさまざまな形のハイブリッド債やESG債などが増えている。しかもM&Aの増加などで、財務体質がどうなるかなどを見込む想定格付けも増えるなど新たなニーズに対応にしていることもプラスに働いている。ESGやSDGsの関連では、昨年から環境省がグリーンボンド発行に関する補助金を出したことが追い風となっている。日本企業が日本市場で最初に環境債を発行したのは16年、野村総研のグリーンボンドで、そのグリーンボンド評価は当社が行った。今年アシックスが日本企業として日本で初のサステナビリティボンドを発行し、これも当社が評価を行った。このように格付会社のなかではこの分野で先陣を切っており、昨年初にはESG推進部を新設した。今後も環境問題や社会課題に対応する資金の流れを作る世界的な動向のなかで格付会社として貢献をしていく。

――SDGs評価の正しさといった観点については…。
 木村 グリーンボンドの評価については5段階評価としているが、最上位評価のものしか発行されていない。発行を検討する段階で当社の評価方法に照らして最上位評価が難しいと考える発行体は格付を求めてこない。化石燃料に強く依存する事業を資金使途とする案件では、たとえそれが環境改善効果を狙ったものだとしても最上位評価は難しい。本来は、最上位評価とはならずとも、環境改善効果を高めることにより上から4番目の評価から3番目に上がったといったような形も評価されるべきだと思っている。一方、社会課題に対応する事業に関するソーシャルボンドの評価やサステナビリティボンドの評価は、環境改善効果のように客観的に優劣を比べることができるのかといった問題がある。これらの債券については、現在当社はランクをつけておらず、国際資本市場協会(ICMA)の原則に合っているかどうかといった点だけのセカンドオピニオンを出しているが、改善工夫の余地はあると思っている。

――劣後債(ハイブリッド債)の資本性評価についてはどうか…。
 木村 ハイブリッド債は超長期、利払い停止条項、劣後性の3つの特徴がある。このほか超長期債でありながら途中でコールがかけられるという特徴も持っている。このような商品性があるから投資家は、30年ほどの年限の債券を5年から10年ほどで償還されると見込み購入することができる。資本性評価の観点からは、コールのタイミングで再びハイブリッド債で借り換えをするなどして資金の長期固定化が図られる仕組みになっていることを確認することが重要だ。発行体はそれで資本性を50%程度認められ、投資家も通常の中期債より高い利回りを取れる。ハイブリッドの世界というのは、その資本性の評価をしっかりやっておかないと、後々問題が出てくるだろう。また、ハイブリッドの調達に関しては、債券だけではなく劣後ローンを利用するケースもある。ローンに対する格付も行い発行体の資金調達ニーズに全面的に対応している。

――社債市場は活発だが、当局に対する要望などは…。
 木村 一番の問題はBB格以下、ハイイールド債に関してだろう。昨年私募でBB格のアイフルが発行し、さらに今年は公募もアイフルが発行しており、BB格台ではこれ1本だ。BBB格で言うと、当社ではBBBプラスとしている東京電力を除くと、金額ベースでは大きな発行はない。アメリカのように、中堅中小企業にも借入ではなく、直接市場で資金調達の道を開いていくためにも、まずはBBB格以下の市場を大きく整備する必要があるが、それにはセカンダリーマーケットがきちんと出来ていないと難しい。ただ、日本ではA格以上ではないと買わない機関投資家・銀行が多いため、BB格以下はほとんど発行ができない。まずは金融資本市場関係者がBBB格の市場を整備するために動く必要があると思う。

――年金情報やファンド情報、このあたりは拡大していきそうなのか…。
 木村 発行部数ではようやく昨年からわずかに増加に転じたくらいだ。年金情報の場合、厚年基金の解散で基金自体が減っている点などが響いている。ファンド情報については、相当投信に特化した形で多様な情報、データなどを提供しているが、最近好評なのは、「現場は何を語るのか」という、記者による覆面調査企画だ。実際に現場がどういう説明でどういう風に何を売っているかという、フィデューシャリー・デューティー(FD、顧客本位の業務運営)について覆面で記者が取材し、それを記事にしている。

 FDについては、ファンド情報とはまったく別に、投資評価事業本部で行っている投信販売会社のFD評価がある。これは、銀行や証券会社などの販売会社は顧客に対してどういう営業方針や販売態勢で販売しているか、きちんと顧客本位でやっているか、ということを25項目にわたってチェックし、SS、S、A、B、Cの5段階で評価している。昨年から今までに24社の評価依頼があり、来年にかけて30社程度が評価を取得すると見込んでいる。顧客本位が徹底され、投信販売改革につながればと思っている。

――これからどんな評価をしていくかについての抱負などは…。
 木村 現在、証券化やプロジェクトファイナンスなどのストラクチャードファイナンス格付も結構伸びている。最近はバーゼル規制に対応して銀行がリスクアセットを減らして、例えばREIT向け債権を証券化するといったような動きが増えている。ESGや投信販売会社FD評価、ファンド評価と、新たな評価事業をこの2~3年で始めたが、今後も企業、金融機関、投資家などのニーズに合わせて評価事業を拡大したい。当社はやはり、依頼者から手数料を得て評価をするビジネスモデルのため、ニーズに応える一方で、中立性や公正性は厳格に行う必要がある。加えて、日経グループを始めメガバンクや地銀などが株主で、資本市場に貢献するために設立した会社であるため、社債や投信、年金など含め、日本の金融資本市場の発展に、格付や評価を通じて貢献できるような形のビジネスをやっていきたいと考えている。

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