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ウイグル人には何の権利もない

日本ウイグル協会 会長  世界ウイグル会議 東アジア・太平洋地域全権代表  イリハム・マハムティ 氏

――日本ウイグル協会ではどのような活動をおこなっているのか…。
 マハムティ 二国間の懸け橋となるべく、ウイグルの文化や歴史を日本に広めている。特に今はウイグルの人権が酷く弾圧されているため、その現状を日本に伝えている。日本には北海道から沖縄まで推定で2000~3000人のウイグル人が住んでいる。日本の学校で勉強した人たちがそのままその地域に残り、職を見つけて生活している。私自身は18年前の2001年に来日した。その少し前頃から中国人は新彊ウイグル自治区のウイグル人らを商業活動から遠ざけ始め、このままではウイグル人が中国人の奴隷になってしまうと感じていた。そして子供たちの将来を考えた時に、私は日本で子供を育てたいと考えた。その頃、日本ではコンピュータの技術者が足りないと言われていたため、日本の語学学校を卒業後、専門学校で2年間コンピュータの勉強をして日本企業に入り、その後、家族を日本に呼び寄せた。私が36歳、子供が5歳の時だ。ただ、ウイグルの状況は悪くなる一方で、2008年に当協会を設立してからは、この仕事に専念している。

――中国とウイグルの関係性の実態は…。
 マハムティ 80年代後半に新彊ウイグル自治区で大量の油田、天然ガス、石炭鉱が発見された。もともと、中国で年間消費されている石油、天然ガス、石炭といった資源エネルギーの3~4割がウイグルで採掘されたもので、黄金も採れる。貴重な資源が大量に眠るウイグルが独立して力を持つことを、中国は何としてでも阻止したいと考えている。そのため、中国は2017年からウイグル人を強制収容所に入れて共産党を崇拝するような洗脳計画を始めた。また、単なる洗脳だけでなく、強制収容所ではすべてのDNAを収集して臓器提供に利用している。中国は今、世界で一番臓器売買を行っている国だ。特にイスラム教徒の臓器は一般の価格の2~3倍高く売れると言われており、実際にそういった若者の行方不明者が中国にはたくさんいる。とにかく、今、ウイグル人には何の権利もない。実際に先日、海外のドキュメンタリー番組で中国人の警察官がウイグルの人権についてコメントを求められ「ウイグル人には何の権利もないのにどこからが人権だ」と言い放っていた。まるで動物同然の扱いだ。また、中国本土が発表するウイグル人の数は、2014年は1170万人だったが、実際に新彊ウイグル自治区で人口調査に関わった方らからウイグル人は少なくても2000万人以上いると言われている。中国は今後の計画を踏まえたうえで、ウイグル人の数を少なめに発表しているということだ。しかも中国は、こういったウイグルの実態に関する海外の現地取材を、安全上の理由という事ですべて禁じている。

――ウイグルでは情報も遮断されている…。
 マハムティ いつでもどこでも世界の誰とでもコンタクトがとれる21世紀のこの時代において、2017年から2年以上、外国に住む人たちがウイグルに残っている家族や友達と連絡を取ることは非常に難しくなっている。例えば、私たちが日本からウイグルに電話をすると、電話を受けた人が大変な目に合う。そのため、海外にいる人たちはウイグルからの連絡を待つしかない。ただ、世界各地の外国人ジャーナリストや、間違って強制収容所に収監されたカザフスタン籍のウイグル人が周囲の力で奇跡的に解放され、内部で実際に行われていたことを公表した事などで、少しずつウイグル民族を取り囲む実態が明らかになってきている。

――「強制収容所」については、中国側は「職業訓練所」だと主張しているが…。
 マハムティ 中国政府は中国国内で生活に苦しんでいる中国人(漢民族)に対して好条件を与えて新彊ウイグル自治区へ送り込み、そこで働かせることによって、ウイグル民族の仕事を奪っている。一方で、新彊ウイグル自治区にいる若い世代のウイグル人に対しては、中国本土への出稼ぎを推奨している。考えが確立していない若者は、中国で出稼ぎをしている間に漢民族の考え方に染まったり、漢民族と結婚するという事も多い。また、一家庭に娘が2人いるウイグル人の家庭では、必ず1人は中国人と結婚しなくてはならない。文章化されている訳ではないが、それに従わなければ両親も本人も強制収容所に入れられてしまう。さらに、子供たちには子供専用の収容所があり、そこで両親の事を忘れさせ、両親が共産党員だと教え込ませる「再教育」を行っている。つまり、洗脳だ。そうやってウイグル民族の考え方を撲滅させていくというのが中国本土の戦略だ。現在強制収容所に入れられているウイグル人は、米国防省では約300万人と発表しているが、実際にはもっと多いと思う。また、年齢は20歳代後半から50歳前までが多数を占めていると考えられている。

――このようなことが実際に起きていることを世の中に広めていかなくてはならない…。
 マハムティ 知らなければ、問題意識も芽生えない。もちろん各国家機関はこういった問題が起こっていることは認識していると思うが、国民ベースではなかなか知られていない。さらに、人権の事よりも国家利益を優先する国もある。日本は国連人権理事会に22カ国で提出した「ウイグル族の大量拘束に懸念を示す共同書簡」に参加しているが、他の海外37カ国は中国政府を支持するような書簡を同理事会に提出している。この37カ国の半分以上はすべて独裁国家であり、「一帯一路」への参加などで中国にたくさんの借金をしている国々だ。それらの国々は中国に従うしかないだろう。一方で、米国では宗教の自由を推進するための会議を積極的に開催しており、そこで我々ウイグル民族のように実際に宗教的迫害を受けた人たちがスピーチをするというような活動も行っている。今年7月に米国務省で開催された「宗教の自由」に関する国際会合では、ウイグル問題についてペンス米副大統領が「これはウイグル文化を抹消し、イスラム文化を打ち砕き嘔吐する中国政府による試みだ」というような演説も行い、今後、中国など宗教的迫害を行う国と政府に圧力を強め、対応措置を取る方針を明らかにしている。

――日本に対して何かメッセージを…。
 マハムティ 新彊ウイグル自治区の内部は本当にひどい。例えば思想に問題があるとして強制収容所に連行されたウイグル人の親を持つ子供達は、面倒を見てくれる人がいなくなる。親せきが面倒を見ようとしても、思想に問題がある人の支援をしようとしたという罪で、今度はその親戚まで強制収容所に連行されることになってしまう。だから、子供専用の収容所に入ったり、養子縁組として中国本土の漢民族の子供になったりする。そこで「再教育」という名の洗脳が行われて、最終的にウイグル民族の思想と歴史が全て奪い去られようとしている。日本の隣国でこういった事が実際に行われていることを、日本人にももっと真剣に考えてもらいたいと願っている。(了)

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