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日本の新たな労働運動

日本の新たな労働運動
 バブルとバブルの崩壊で下火になった日本の労働運動の新たな火種は、国と企業に偏った所得の分配や外国人雇用の拡大とAI化・ロボット化であろう。また、従来の労働運動は社会主義や左翼と呼ばれる思想を背景にしていたが、新たな日本の労働運動は中、韓、ロシアによる日本への外交・軍事圧力を背景にした国粋主義的なものと予想する。この点、既に米国やドイツなどでは不法移民の排斥や極右政党といった形で先行している。日本は国民間の貧富の差は少なく、対外資産も世界一であるなど国としては豊かであるため、これまでのところ国民の不満は表面化していない。しかし、国の空前の借金経営や企業のROE経営などによる実質所得の減少に加え、期間雇用比率の拡大や外国人労働の増大、AI化・ロボット化が、ジワジワと労働者の不満を蓄積させている。この不満に上手く乗る新政党が現れれば、あっという間に現政権が脅かされることになろう。
 日本の労働運動が下火になった理由は、円が360円から80円に急騰し日本の労働賃金が世界有数の高水準になったことが大きい。このため、労働組合による賃上げ要求などが従来の意味をなさなくなったことや、にも関わらず労働組合が存続し労働者にとって組合費などがコスト高となってしまっている。また、会社が労働者を搾取する「悪の資本主義」に対峙する目的で誕生したソビエト連邦が崩壊し、共産主義を主張している中国が資本主義を取り入れたことも労働運動の思想的背景を崩した。
 これに対し今の日本は、むしろそうしたロシアや中国により国土を脅かされており、肝心の米国も弱体化と一国主義により昔のようにあてにはできなくなりつつある。また、国民の生活水準も中国の富裕層はおろか、タイのバンコクの一般労働者の生活水準をも下回り始めている。今はまだ団塊の世代等の200万人の退職者と100万人の新卒者のギャップが失業率を低水準に抑えているが、その差の縮小が労働運動の火を再燃させる風にもなろう。

(2019年12月11日)

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