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新たな経済対策で、今こそ投資を

駐日トルコ共和国大使  ハサン・ムラット・メルジャン 氏

――トルコの魅力は…。
 メルジャン大使 トルコは人口8200万人で、その半分が32歳以下という若い力に溢れた国だ。この17年間の成長率は平均5%超を続けている。日本からは200以上の企業がトルコに進出しており、トヨタなど大企業の工場もある。日本とトルコの間には130年以上にわたる長い友好関係があり、お互いに手を組むことで力を発揮できる最良のパートナーと言えよう。最先端の製造技術を持つ日本は世界中で有名な製品を持っているが、製品価格が高いためロシアや北アフリカでは競争力のある価格で売ることが出来ない。そういったところで、製造ノウハウを持ち、地理的に優位なトルコと相互補完的な関係を築くことが出来れば、中東、コーカサス地方、北アフリカでの日本の発展が見込める。ビジネスを行う時に重要となる財政面でもトルコは安定している国だ。人口面でも2026年には約9000万人という欧州最大の人口を抱える国になると予想されている。決して資本を失うことはないだろう。

――トルコリラは、高インフレで下落している…。
 メルジャン大使 私自身がエコノミストではないため端的に説明するのは難しいが、これまでの歴史の流れを見ても、トルコ債における短期的な浮き沈みは必ず解消されており、長期的な視点で見れば必ず利益を受けている。私は2001年に政界へ進出し、その後すぐに各国を回り、様々な国の金融関係の皆様や投資家の皆様に対してトルコへの投資をすすめてきた。当時は今よりももっとインフレ率が高く、2000年の約60%から一年間で20%になるという事があった。その時は土地価格もかなり低迷した。リーマンショック後の08~09年にかけてはマイナス4.8%と言う数字も出た。しかしその翌年は9.2%成長で、その後も8.8%成長だ。2008年後半だけを切り取ってみれば、トルコリラはかなり値を下げており、その時の投資家の皆さんは非常に不安だったと思う。そういった浮き沈みを経て、2017年頃にはインフレ率もかなり落ち着き、一人当たりGDPも2001年当時は2,906ドル規模だったものが2017年には11,000ドルと3倍になり、不動産価格も3~4倍になっている。投資をなさる方が短期的視点で数字を見ていれば不安に思われるのは仕方がないが、現在の不安定要素は国の内的要因よりも、グローバル的な要因の方が大きい。トルコ政府が正しい政策を遂行していけば、グローバル経済の影響を受けて波打っている今のトルコ経済はいち早く回復していくだろう。

――トルコと米国の関係は…。
 メルジャン大使 状況に応じて一時的に関係が変わることは、どの国でもあることだ。それは当然のこととして、どんな状況であれ米国はトルコにとって大事なパートナーであり、同時に欧米諸国にとってトルコがかけがえのない国であることは言うまでもない。世界のエネルギー資源の約70%が眠る周辺地域を隣国に持ちながら、トルコはこの500年余り安定を貫いている。それは、国が正しく規律的であり、勤勉な国民がしっかりとそれに従い、支えているからだ。米国との間で何か回避できないことがあったとして、国が自国民の安全と利益を第一に考えるのは当然のことだとご理解いただきたい。そして、そういった状況の中でもNATOの加盟国として、NATO加盟各国にはトルコのパートナーとして寄り添ってもらいたい。一方で、国としては望んでいない両国の関係悪化が、ある意味で投資家の皆様にとってはチャンスになることもある。混沌とした周辺国に囲まれながら、その地理的関係から重要な役割を果たすことを求められてきたトルコは、今後もその環境の中で安定成長を続け、周辺国に一定の影響力を持つ国であり続けるだろう。「歴史はただ繰り返されるのではなく、塗り替えられて、さらに良い結果になる」というのが私の考えだ。

――足元の経済政策は…。
 メルジャン大使 先日トルコ政府は2019年新経済プログラム貯蓄・収入増加奨励策を発表した。構造改革を優先する事、自由市場の原則に則る事、輸出と雇用の増加に注力すること、持続可能な成長と公正な分配を進めていくこと、そして金融引き締め政策や、より公正な税制度といった6つのテーマを掲げ、着実に進めていくことを目指している。特に金融セクターにおける資本強化戦略としては、国有企業に計280億トルコリラの調達許可を与え、必要に応じて民間銀行が計画の範囲内で資本を強化できるようにした。リバランスプロセス中の配当金や役員への現金賞与支払いへの制限も設けるようにした。また、エネルギー・ベンチャー・キャピタル・ファンドや不動産ファンドを作ったり、個人年金制度(BES)と退職金ファンドを統合させるなど、ファンドを活用した資産の質の向上を目指した取り組みも行う。その他にも、国民の一致団結を図る農業プロジェクト、雇用教育計画、社会保障改革、輸出マスタープランなどを実施し、その経済効果は年末までに総計440億トルコリラを見込んでいる。トルコに投資するなら、是非、今、してほしい。

――英国はEU離脱問題で国内が揉めているが、トルコがEU加盟にこだわる理由は…。
 メルジャン大使 15年前にトルコはEU加盟を決意し、その頃から加盟交渉は続いている。EU域内での国内問題で長い交渉になっているが、EUに加盟することでトルコに有利になることや、トルコがEUに対して貢献できることもある。もちろん加盟するためにトルコ国内のすべてを妥協するようなことはないし、どうしても加盟しなくてはならないという訳ではない。入る側と受け入れる側が双方努力して歩み寄って完成するものだと考えている。

――イスラエルとアラブの関係をトルコはどう見ているのか…。
 メルジャン大使 関係各国で行われていることが、何らかの形でトルコに影響を及ぼしているのは間違いない。特にイランとは長い国境で接しており、この国境線は1639年以来変わっていない。物や人が行き交うことは避けられない中で、特に貿易面では影響があるといえよう。イランが国際社会にいかになじんでいくことが出来るかが、トルコにとっても重要なことだと考えている。また、イスラエルとパレスチナ問題もある。この件に関する日本政府の見解や立場は非常に評価されるものだが、残念ながら現在、国連の決議に関わらずパレスチナの人々の人権や生きる権利は迫害されている。これは全世界にいるパレスチナ人に影響を及ぼしており、その国の政府が世界中にいるパレスチナの人権を守る行動を起こさない限り、問題は解決しないだろう。エルサレムに関しても、ここはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教にとって非常に大事な聖地であるため、どこか一つの政治的な首都とするようなことは人間的に考えて理解できるものではない。それぞれの宗教を持つ人々が、いつでも等しく祈りを捧げることが出来る場所にすることが、皆が幸せになる方法だと私は思っている。今の状況はかなり悲しいことだ。日本は「令和」という新しい時代に入った。元号の意味は、調和やバランスを重要視する言葉だという。私としても、イランのみならず、すべての国の内政がバランスの取れた形で未来を築いていけることを願っている。

――周辺国の政治的な問題が、トルコ経済に与える影響は…。
 メルジャン大使 一方で、こういった周辺国の政治的な問題がトルコの経済に大きな影響を及ぼしているかと言えば、そうではない。トルコはこの地域随一の製造大国であり、中近東のみならず、ロシアも含めたトルコ周辺国の多くがトルコを自国の工場だと考えて利用している。ただ、政治的な理由で押し寄せる難民の問題は避けられない。現在、トルコ国内にはそれぞれの理由で祖国を追われた難民が約300万人もいる。トルコ人口の約5%にものぼる難民を抱え、彼らの衣食住、インフラ、そして教育を保障するにはかなりの出費が必要だが、例えば隣国が大変な時に自国の経済だけが安定していればそれでよいかというと、やはり気持ちの面で良いとは思えない。難民へのケアを続けながらも、トルコ経済は政府の政策によって安定している。

――日本の産業や日本政府に臨むことは…。
 メルジャン大使 すでにトルコに進出している日本企業で働くトルコ人は、地元のトルコ企業と同じように認識して働いていると思う。それも日本とトルコの長い友好関係と信頼によるものだ。トルコは日本企業がトルコ周辺諸国に販路を拡大させる場合も非常に重要な入り口であり、特に今後重要になるアフリカへの進出拠点としても大きな意味を持つと確信している。また、我々は、より多くの日本企業がトルコに活路を見出すことを願う一方で、より多くのトルコ製品が日本の市場に出回ることも期待している。現在、日本とトルコ間ではEPA交渉も進んでおり、特にエネルギー分野では、すでに政府官僚レベルで両国間の関係構築の手続きが進められている。6月のG20で両首脳が一堂に会した場で署名されることを期待している。(了)

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