衆議院議員
日本保守党共同代表
減税日本代表
河村たかし 氏

――昨年10月の衆議院議員総選挙で圧勝し、15年ぶりに国政に返り咲いた。今の日本をどう見ているのか…。
河村 日本国憲法の前文に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とあるように、国会議員は全日本国民を代表する人物だ。そういった人たちが世間に疎かったり、対外的に隙だらけであれば、国は潰れてしまう。一部のお金の問題ばかりにこだわっていてはなおさらだ。今、話題とされている自民党の裏金疑惑問題について言えば、もともとは地方議員が国会議員にお金をせびるために裏金をプールしなくてはならなかったというところに原因がある。実際に私も何度もせびられたことがあり、もちろんその都度断っていたが、それは本当に大変な事だ。そして、私のような行動をとり、真っ向から正論を言うと、孤立の道が待っている。さらに言えば、国会法第35条に「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける」とあるが、その結果、議員が家業になってしまったことが根本の問題としてある。基本的に議員には競争が無く、選挙に出るのには莫大なお金がかかる。そういった背景から、議員に立候補するのは地盤とお金がある2世や3世ばかりだ。世間に疎くなるのも当然だろう。
――「議員の家業化をやめる」というのは、日本保守党の重点政策項目となっている…。
河村 議員報酬は市民給与と同等にし、さらに任期を設けるべきだろう。国会議員を変えていくのには時間がかかるため、先ずは地方議員から変えていくなど、兎に角、議員の家業体制という体質を替えなくては、議員のマインドが金儲け最優先になってしまう。振り返ると、かつて私が所属していた日本新党のスローガンは「政治家総取り換え」だった。それは正しい主張だったと思うが、そこでエリート的な政治家ばかりを求めてしまったのは間違いだった。民主主義を徹底するのであれば、議員はボランティアとして様々な人たちに活躍してもらう事だ。また、子ども達が受験勉強に必死になるあまり、社会に目が向かないというのも日本の大きな問題だと考えている。例えば、ウクライナとロシアのどちらが正しいかと言った事を中学校で発言すれば、間違いなく内申点が下げられる。そういった国になってしまった日本に、私はかなりの危機感を持っている。
――日本保守党では、移民の受け入れについても政策の見直しを主張している…。
河村 名古屋港の貿易黒字額は約8兆3000億円超。それは欧州や東南アジアに沢山の車を購入してもらっているからであり、そこに「お得意様意識」を持つのは当然だろう。また、そもそも移民受け入れの根底にあるものはキリスト教の「神のもとの平等」という思想であり、日本の大多数はキリスト教徒ではない。先ずは自分の国がしっかりしていることが重要なことだ。色々な事が言われているが、結局は人件費を下げたいという考えから移民受け入れが拡大している。そうであれば、移民を受け入れる代わりに日本の高齢者の雇用をもっと増やして、そこに給料を出すなど、国益を念頭に置いた政策にシフトしていくべきというのが我々日本保守党の主張だ。
――今の日本に必要な事は…。
河村 現在の日本の閉塞状態を表す時に、世の中の人たちは財政の事ばかりに注目して話題にするが、一般企業で言えば財務省は「総務部」だ。そして、お金を稼ぐ部署は「営業本部」であり「総務部」ではない。政府はもっと全体のお金のことをきちんと捉えて、それを有効に活用しなければならない。私が市長を務めていた名古屋市では、地方税の減税策が可能になった平成11年頃から市民税減税を実施し、総務大臣の許可をもらって毎年100億円を民間に戻していた。そうした事で名古屋市の税収はむしろ増え、経済も強くなっていった。私が4期15年間務めた名古屋市政について80%以上の方々から高い評価をいただいたのも、市民の皆様がこの正しい経済学を支持してくださっているからだと思う。このような思想のもと、減税路線になり、役人の支出を減らして民間部門にスライドさせるという流れになると、財政法第4条にある国の歳出の財源制限や地方財政法第5条にある地方債発行の許可制度は、廃止すべきという考えになる。実際に米国では政府が銀行のお金を自由に使えるような形になっており、ドイツでもそうなりつつある。日本がそうならない一番の問題は、役人の無駄なエリート意識だ。一円も稼いだことが無い役人が権力とお金を牛耳っているというのがそもそもの間違いであり、皆がその事に気がついていない。
――いわゆる「103万円の壁」が少し前進し、減税となる…。
河村 もっと拡大すれば良いのではないか。米国では物価スライドで基礎控除額も上がっているようだが、それとは別に、もともと日本にはお金が余っている。財政危機など嘘であり、財政当局が必死にお金を隠しているだけだ。地方の自治体にも資金は潤沢にある。今、日銀に眠っている550兆円を、起債して利用してどんどん使えば良いのではないか。大体、記者クラブに所属するマスコミは財務省から「起債は借金だ」と刷り込まれているため、誰もこういった事を言わないが、先述したように、営業本部で稼いだお金を使うのは当然の事だ。また、お金を借りれば利子を払うのは当然のことであり、民間企業も借りたお金を少しでも返そうと努力しながら商いを続けている。一方で、役人は膨大な資金を常に借り換えてばかりで、お金を返した事など無い。議員も家業になると、国民にお金を分配しようという気がなくなり、表面で「財源がない」と言いながら個別に陳情しに来た人たちに対してだけ「俺が融通してやった」と言いながらキックバックを求めている。現在、国家公務員約100万人、地方公務員300万人、外郭団体を含めて計約700万人の役人が権限を握りしめ、幅を利かせているが、私が総理大臣になったら財政法第4条も地方財政法第5条も廃止して、歳出の財源制限をなくして、自由に起債できるようにする。
――市政や国政を行う上で一番お金が必要な部分は…。
河村 先ず公務員の人件費が一番大きい。大体一人当たり給与が600万円以上で、名古屋市も私が市長になった当初は東京に次ぐ高い給与だったが、自らの給与を下げたうえで関係各所に色々な交渉をして、職員一人当たりの給与を総人件費で1割程度下げてもらった。今、名古屋市の給与ランキングは10位くらいだろうか。ちなみに私が名古屋市長になりたての15年前の名古屋市長の給料は約2300万円で、私はそれを15年間800万円で通し、4年毎に貰える退職金4200万円も返上した。15年間で名古屋市に返上した総額4億6000万円だ。そういった事を自ら実践しているからこそ、市の職員たちもついてきてくれたのだと思う。もちろん、そういう思想は疲れるし、もともとお金を持っている訳でもなく、今も貯えはない。しかし、報道機関の調査で80%以上の市民の皆様が「名古屋が良くなった」と感じてくださっているのであれば、それだけで私は有り難く、涙が出てきて、「やせ我慢して良かったなぁ」と思える。
――今後の抱負は…。
河村 江戸時代、日本を統治するために作られた身分制度に「士農工商」というものがある。当時「商」は一番下の位とされていた。権力を保つためにはその順番が一番バランスが良いという事だったのだろう。しかし、お金を稼ぐ力を持つ処には、どうしても力が生まれる。イギリスでも産業革命以降、商人は経済人として権力や発言権を持ち、存在感を強めていった。日本では産業革命は起きなかったが、身分制度の最下位に商人を置くことは良い事ではない。故渋沢栄一氏の存在が示すように、商人が帳簿とそろばんを持ってきちんとした倫理観で日々を営むことが、社会を作るために一番重要なことだ。「商」を身分制度の一番上の位に持ってきて「商農工士」にし、努力をした人がきちんと報われるような日本にしたい。その世界の実現のために、私は働いている。[B]