金融ファクシミリ新聞社金融ファクシミリ新聞

金融ファクシミリ新聞は、金融・資本市場に携わるプロ向けの専門紙。 財務省・日銀情報から定評のあるファイナンス情報、IPO・PO・M&A情報、債券流通市場、投信、エクイティ、デリバティブ等の金融・資本市場に欠かせない情報を独自取材によりお届けします。

「尖閣は日本領との強い意志を」

沖縄県石垣市長
中山 義隆 氏

――尖閣諸島が緊迫した状況となっている…。
 中山 尖閣諸島水域への中国公船の侵入が常態化している。今年に入ってからはさらに頻繁に領海侵入を行い、日本に対する圧力を一段と高めているように感じる。少し前までは、侵入しても尖閣諸島沖の接続水域周辺で留まっていたのだが、今では接続水域を超えて、さらに日本の領海内に入ってきている。しかも、その滞在時間は以前よりも長く、日本の警告には全く耳を貸さない。あたかも尖閣諸島を自国の領土と主張し、居座っているような状況だ。コロナウィルス騒動による中国国内の不安定さを、香港、台湾や日本といった国外へ向けさせる意図もあるのだろう。

――沖縄県や日本政府の対応は…。
 中山 5月上旬にも尖閣諸島領海内で中国公船が日本の与那国島の漁船を追尾したという事件があった。与那国町議会と石垣市議会が2度にわたって中国側に抗議したのだが、抗議決議後も再び中国による領海侵犯が行われているため、石垣・与那国を含む八重山選出の県議会議員が沖縄県知事に中国側への対応状況を問い合わせたところ、「沖縄県としては、2019年に日本政府に対して、尖閣諸島が日本の領土だということを中国側に主張するよう要請した」と言う主旨の発言で濁した。本来ならば、沖縄県として中国側に抗議したうえで、且つ日本政府に対しても中国に同様の抗議を行う様に求めるべきだと思うのだが、県からは中国に対して何の抗議もせず、しかも日本政府に対して一年前に要請をしたというだけなのは何とも残念な対応と言わざるを得ない。

――石垣島と与那国島以外の沖縄県民の尖閣諸島に対するコンセンサスは…。
 中山 こういった沖縄県の対応に対して、左派系の新聞は何も批判しない。そして、沖縄本島に流通する県紙2紙は知事と同じ主張をしているため、県民達はメディアを通してこのような尖閣の現状を知ることすら出来ない。もちろん自ら関心をもってインターネット等で情報を収集しているような人には正確な情報が伝わっているだろうが、それが県民全体の動きとはなっていない。ただ、今回の与那国漁船の追尾の件では、政府が中国側にしっかりと抗議し、当然の事ではあるが従来よりもさらに踏み込んだ対応がなされているようだ。

――日本の海上保安庁の警備状況については…。
 中山 今、尖閣諸島には海上保安庁が管理する1000トンクラスの大型船が13隻置いてある。以前は2~3隻しか置いてなかったが、中国公船と対峙する巡視船の能力の問題については強化が進み、来年までには6000トンクラスの大型船も石垣島に置かれることになっている。また、石垣島には自衛隊駐屯地の設置が要請されており、これについては、すでに市有地の売却手続きや、その他の土地の貸し付け手続き等も完了している。建設も順調に進んでおり、2年後の稼働を予定している。もちろん、駐屯地が置かれただけで尖閣問題が落ち着くということではないが、完成すれば、すでに与那国島に配備されている陸上自衛隊沿岸監視部隊と共に、南西諸島の防衛体制がさらに充実したものになり、中国船への抑止力にもなっていくだろう。

――政府に対して望むことは…。
 中山 日本としての意思を、もっと明確に国際社会にアピールしてもらいたい。尖閣諸島は現在日本が実行支配しているが、新しい施設を作るといったような、何らかの措置が必要だと思う。現状では簡易型の灯台が一つあるのだが、それも、さらにしっかりと整備すべきだと考えている。灯台を適切に設置し管理することは航海の安全管理にも繋がり、それは世界中から見ても何ら批判されるような対象にはならない筈だ。また、東京には、竹島及び尖閣諸島、北方領土等の領有権に関する博物館「領土・主権展示館」があり、そこで海外の人たちに正しい認識を持ってもらうための活動を行っているが、石垣市にもそういった尖閣資料館があれば良いと考えている。石垣市が保有する沢山の歴史的資料をしっかりとアピールすることで、国民の関心も高まり、外国から石垣島を訪れる皆様にも、尖閣が石垣市の行政区域にあるという事を理解してもらえるのではないか。外国諸国に対するこういったアピールは、尖閣諸島を日本の領土だと諸外国に知らしめるためには非常に重要なことであり、国にはその辺りの支援をお願いしたい。

――コロナウィルス騒動で習近平国家主席の訪日は延期になっているが、国賓訪日ということであれば、尖閣領土問題もしっかりと解決すべきだ…。
 中山 習近平氏の国賓来日が予定される前の日中関係は、一時期落ち着いており、4月の訪日前には尖閣問題も沈静化するだろうと考えられていた。しかし、このコロナウィルス騒動で再び両国の関係は厳しくなってきており、そういった状況の中で国賓として迎える事は相応しくないと思う。国際社会に対して、日本は尖閣問題を棚上げしたまま中国と友好関係を結ぶような国だという印象を与えても良いのだろうか。どうしても国賓として迎えたいのであれば、日本政府が「尖閣諸島は日本の領土だ」という事を明確に打ち出し、その姿勢を国際社会に示したうえで、中国側に訪日の選択を委ねるべきだ。

――尖閣周辺で漁業を営む人たちの生活の保障は…。
 中山 尖閣の南側では日本と台湾間における漁業協定のもと、マグロ漁業を行っている。丁度、今も美味しい本マグロが獲れる時期なのだが、コロナウィルスの影響から魚自体が売れなくなっており、そこで、漁師の方々は、少しでも値段の高い魚を求めて、尖閣周辺に生息するアカマチという高級魚を獲りに行っている。普段から中国船の圧力によって漁場を奪われているという漁師の皆さんの不安はもちろんあるが、今は新型コロナウィルスの影響の方が強く、漁業関係者は大打撃を受けている。そういった方々に対しても、出来る限りの国からの支援をお願いしたい。

――最後に、国民の皆さんに対して一言…。
 中山 コロナウィルス騒動で国民の関心はそちらに向かってしまい、尖閣諸島はニュースになりにくいが、日々、中国公船からの領海侵入を受けている。そういった事実を理解していただき、国民世論として、自国の領土は自分たちで守るということを発信してもらいたいと願っている。最近の香港状勢を見てもわかる通り、中国は国民の関心を国外に向けるため、強引な賭けに出てきており、いつ尖閣諸島で同じ様な強引さを出してくるかわからない。そうなる前に、国民が強い意志を示すことが中国に有事を起こさせない牽制になるのではないか。

▲TOP